第13話 最初の嘘を撃破
あの後ソファーの上でしばらく休み体調も戻ってきたので立ち上がって見ると、二人は相変わらず先ほどのように書類作りをしていた。
「あの」
「ああ、もう気分はよくなった?」
清水はメールを作成しながら僕の様子を伺ってきた。
「ええ、ありがとうございます」
「そうか、それは良かった安心した」
「あのさ.....清水君」
「松君の聞きたいことは分ってる、にじかつの事だろう?」
「にじかつって一体何なんですか? それとあの3年生は誰なんですか?」
清水はメールを作成する手を止め、
「そうだね、説明も無しに『にじかつ』…、いや正確な呼び名は2次活動なんだけど、いきなり連れていったのはちょと刺激が強すぎたかな、すまなかったね」
そう言うと清水は少し考える仕草を見せながらゆっくりと僕に話し始めた。
「まず全部説明するのは長いから、分かりやすいところからにしようか。あの3年生の氏名は
またその目で嘘を付くのかよ。僕はいつも抱く、ある種ウンザリした感覚を味わっていた。
人は自分にとって都合の悪い事実を隠そうとする時まぶたの力を弱めて目が泳いだり、逆に積極的に嘘を相手に信じさせようとする時にはまぶたに力を入れて話そうとする。でもどちらの場合でも表情に無理が出る。そんな時は目の中にある瞳孔を見るに限る。緊張している場合は必ず瞳孔が開いている。
ほんっとにどうでも良いよ、こんな役に立たずのスキル! 一体誰得だよ?
そう思いながら清水君の瞳の奥を覗き込むと、不思議な事に清水君の瞳の瞳孔は微動だにしていなかった。
そうか、清水君は相当精神が強いんだろうな。恐らく相当過酷な環境で暮らして来たのか......。でも僕はそんな見せ掛けの真剣な表情や目の瞳孔の開き方では騙されないぞ!僕は気勢を制して先に言ってしまった。
「ええ、単なる薬の飲み間違えなんかじゃない。酒でもない何か、別の何かですね。なんで救護係の人に嘘を付いたんですか?」
当惑の表情を一瞬見せたが直ぐにもとの温和な表情に戻り、やさしく清水は、
「えっどうして分るの? シックスセンス?」
と冗談めかして言った。
「分かるんですよ。僕のはなんとなく…、ですが、目とか仕草とかでその人が本当の事言ってるかそうじゃないとか、いろいろ」
「ふーん、そうか、分かっちゃうのかぁ…。さっすが佐藤センセ、眼力はさすがだね。そう、あそこでショッピングセンターの救護係の人に言ったことは全て思いつきの嘘、彼はオーバードーズ(薬の過剰摂取)をやってラリってあそこで倒れたんだ」
「ええっ?!」
僕は一瞬言葉に詰まってしまった。
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