人類への必殺宣言

・原発事故によって人間としての核を徹底的に崩壊させ人類への帰属の証となるものすべてを切り刻み放射能によって誕生も忘却も封じられた声に身体を与えることで追悼とか慰霊で距離を取るのではなく核兵器の電波変換で壊変したウイルスのカードを召喚して人間を萌えのデータベースから隔離させること。

・人類を食糧として効率化する文字通りの意味での兵站戦略が開始されたのは神々が二進法を採用してからのことなのだが、人間を単に食べるというのではあまりにも不味いので色々と注文がだされるようになった。例えば軍用兵器の娘に結婚したいと言わせるとか自発的に食糧になる人間を募集するとかである。

・メディア上の怪物を食糧とする冒険者達は裕福な人々の預金通帳という黄金を狙うロマンチストか世論という迷宮に潜って小説投稿サイト(少なくとも「小説家になろう」においては)を拠点とした市民社会に対する植民地戦争を開始した。憐れな民衆はゲームで電子化されたアイテムを手に入れるが、肝心の財産は冒険者たちの餌食となるのだ。

・市民社会が存在しないという形式で存在するのは植民地になった民族に共通だが、それをメディア上の領土によって奪還するための再植民地化戦争においては芸術上の質(あるいは評価や人気の不正)が問題なのではなく、どうしたら文字によって敵の財産を略奪することができるかどうかにかかっている。

・つまり私は二重の意味で間違っていた。芸術的に反動だと評価するのはどうでもいいという点で間違っており、それが商品として売れるのだからしょうがないと内心考えていた点でも間違っている。これは作品のすべてが質的に悪いというわけではないと主張しても結局間違っていることになる。

・まず問題の出発点に戻ろう。後期資本主義の命題はいかに若者に創造力を最大限発揮させたまま安い労働力を維持するかということにある。反抗のシステム化は企業によってスターリン主義になるまで推し進められているが、その結果従順だが自分で考えず言われたことしかやらない連中が主人公になった。

・仲間と一緒にいれてそこそこ快適な生活を規格化された夢に向かいながら維持することは企業の要請と完全に一致する。若手イデオローグはこのことをそろって称賛してきた。しかしオタクの問題はそう単純ではなかった。趣味の過剰は危険要素になり得る。それが純粋な消費活動であったとしてもである。

・オタクが囲いこまれたのはリアルの楽しさを教えられることによってだった。本来オタクの政治的賭金はその気持ち悪さにあった。これがよく理解されるのはエロゲーが美少女ゲームになっていったことである。魔法少女における人間のエネルギー論的考えはメンヘラの夢を決して覚まさせないことに傾倒した。

・同人はいつの時代でもそうであったように世間や金銭に煩わされることなく自由な表現を求めるための共同体を創設するための手段であった。仮に動画サイトが多くの流通を促進したとしても本質的には芸術表現の方法がすべてであって、その結果が企業のメディアミックスに飲み込まれた多くの作品である。

・ラカンは分析において欲望の起源である幼児期の多形倒錯が何らかの目標に収斂するように罪悪感を縮減しようとすると倒錯を飼い慣らす寛容な道徳に行き着いてしまうと警告している。問題なのは人間の創造力を貨幣を基準にした商品生産に向かわせるべきなのかそれとも別の基準があるのかということである

・実際のところ上遠野浩平や西尾維新のレベルではこのことに失敗したように思われる。つまり物語が問題である限り商品生産は正しいのである。これこそライトノベルが主張してきたことにほかならない。私はこのレベルでは企業に反対する理由はまったくない。問題はこのことを普遍化しようとする試みにある

・そもそも創造力は重要なのか。普通の生活だけで十分ではないのか。もちろん私が言いたいのは常に多様で洗練されたライフスタイルをという口実で生物学的知見を産業社会のアナロジーに見立てて地球どころか他の惑星すらも人類という統一された文化理念でエコロジー的開発を行う衝動のことである。

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