資本主義への必殺宣言

・資本主義において賃金が上がるということは商品の価格が上がるということである。つまり投資が拡大して商品が高くても売れるのでなければ物価が上がるだけである。だからたとえもうどこにも投資する機会がなくても利潤を賃金を上げることに使うことはできない。これは近代経済学の基本である。

・もちろんこれは純粋に学術的な説明である。問題の本質は貨幣によって効率的に計算できる職種ほどこれが適用され、特定の地位などには高い給与を正当化するプレミアムが付くということである。最低賃金を保証することが失業につながるのはあらゆる労働者が効率的に限界まで働くと仮定した場合だけである

・最新技術が投資の対象になるのは従順でない労働者を機械に置き換えるためなのだが、そうすると正規の現場の人は更に忙しくなり、技術のない非正規雇用者は更に待遇が悪くなる。努力が足りないという意見が出るのはこの文脈においてである。

・貨幣を売ったり捨てたりすることがどうやったらできるのか。自分の苦労の成果を誰かにわかってもらいたいということが貨幣によって普遍的になったこと。もうひとつは貨幣は貨幣を利潤で増やせること。たとえ人類を購入できる資金があっても貨幣のやりくりが大変になるだけではないのか。

・サービスが専門化されると資産を持つ人は外部依託した方が効率的になるのだから、自身の能力や生活すら最終的には依託するようになる。貨幣を持つ限り不動産を持つより旅客であった方が選択肢が増えるからだ。ここまできたら、わざわざ自分にとって嫌なことをしたり見たいと思うだろうか?

・人間が身体で数えられそれらが個々の独立した人格を持つということが貨幣を所有することの本質ではないのか。もちろん階級闘争によって意識は「疎外」されるわけだが、個人の不満はすべて自由への侵害として主張される。つまり労働で貨幣を入手することが目的になるわけだ。

・経済学では人が自発的に奴隷になったり、利益なしで人が動くことはあり得ない。それは好き嫌いであるか選考の問題である。これは人が自分の好きなことやどうすれば自身の利益になるかを知っていて、それに応じた行動ができる場合にのみあてはまる。だから人気投票だけが可能なのである。

・人気投票は何のためにあるのか。自身の好き嫌いを個人として確認するためである。これはすべての統計の基本である。ルソー的一般化と「お前はわかってない」がどのように世論になるかはコンピュータの集計で得られるわけだ。口コミによる大衆的前衛の反復もシステムを変えれば同じやり方で得られる。

・資本主義では人間が無限に階級闘争という財産の奪い合いゲームを行うか永遠に新しい投資対象が発見されると仮定されなければ貨幣を所有する意味が失われる。貴族のような特権階級と単なる金持ちの違いはここにある。見せびらかしに飽きられると無駄でない商品を買う魅力も出世の意欲もなくなってしまう

・投資に利益が出る見込みがあるのでなければ労働力を割り振れずそれは公共政策にしなければならないというのは現在では要求に合わないか、人類と地球環境の保護という名目でしかできない。コストとリスクという概念は致命的であるように思われる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る