第7話 ハロウイン
あまたのUFOを擁し、大宇宙に覇権をとなえようと宇宙侵略を続ける宇宙人、パンプキン星人。彼らの次の目標は、なんと!地球だった。
パンプキン星の指導者、パンプキン王子は自らUFO部隊を率いて地球にやってきた。ところが地球侵略前の調査中、事故で地球に不時着してしまったのだ! しかもハロウィンで人がごったがえす、夕方の東京は秋葉原、歩行者天国のど真ん中……。
「お、王子っ! 修理は絶望的です!!」
「うわわわ、まわりは地球人だらけですっ!! ど、どうしましょう~」
パニックになる乗員。
「うおおっ……こ、こうなれば全滅する前に地球人を一人でも多く倒すまでだっ! わ、私に続け~!! パンプキン星万歳っ~!!」
悲壮な決意を固める王子。
ところで、パンプキン星人の平均身長は130cmほどである。頭の形は正にカボチャで作った『ジャック・オー・ランタン』そのもの。
そんな連中が妙な形の銃を構えながら、誰彼かまわず人々を引き止めてはこう叫ぶのだ。
「た、ただちに降伏しろっ!! こ、この銃が目にはいらないかっ!!」
(なぜか涙声)
もちろん、人々は全宇宙にその名をとどろかす『パンプキン星人』の事など知らない為、その反応はさまざまだったが概ね以下のようであった。
「あら、ボク達かわいいわね。キャンディあげるね」
「ほう、本格的だね。クッキーしかないけどいいかな」
「へえ? よくできたコスプレだね。かわいい!」
「いらっしゃい! かわいいお客さんだね。何? お金もってないのか。店のハロウィンキャンペーン用の景品だけどもって行くかい?」
「ごめんな、坊主。ウチの組は今年ハロウィン中止なんで、菓子は用意してないんだ」
……こんなわけで王子達一行は、辺りを一回りしただけで抱えきれないほどの食料とおもちゃをもらい、歩くのもやっとのような状態となった。そこへ王子救助の為にかけつけた大型UFOがやっと王子達を発見し、あわてて着陸する。
それを見た歩行者天国の人々が驚いて集まってきた。
「なんだ、なんだ?」
「ずいぶん大掛かりなイベントだな」
人々の注目する中、王子は前が見えないほどに菓子やおもちゃを抱えつつ、泣きながらも声をふりしぼって人々に語りかけるのだった。
「ぐ、ぐすん。ち、地球の皆さん!
侵略に来た私達を捕らえようともせず、しかもこんなに贈り物をくれるとは……正直、こんなに暖かい人達は始めてですっ!
こ、こんなすばらしい星を侵略しようなんて大それた事を考えて、
本当にっ! 本当にすみませんでしたっ~!!」
なんだか最後の方は涙声のせいで『すみません』が『ずびばせん』になっていたがそれはともかく、パンプキン王子が深々と頭をさげると同時に、王子は大型UFOに吸い込まれた。
UFOは名残惜しそうに秋葉の上空を2、3回旋回すると、夜空に消えていった。同時に地球各地に潜伏していたパンプキン星のUFOも一斉に飛び立ち、ハロウィンの夜空はさながら美しい流星群におおわれたかのようであった。
こうして、『たまたまその日がハロウィン』だったおかげで地球は救われたのだった。
◆◆◆
日本人にハロウィンなんて……と言っているみなさん。
何が功を奏すかわかりませんよ。実は皆さんも知らず知らずのうちにハロウィンに生命を救われているかもしれませんっ!!(ないない)
まあ、やってみれば意外と楽しいかもしれませんね。
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