第4話 妖怪の強さと復活の秘密
「史上最強の妖怪?」
「最強クラス、らしい」
美猫の疑問に、スマホを見ながら葉樺が答える。放課後、部活も終わったので校門で合流して、最寄り駅に向かう途中に、妖怪ハンター
「それが復活したっていうの?」
「妖怪レーダーに、関東地方でかなり強い妖気が感知されたらしい。妖気の反応が大きすぎて、細かい場所を絞り切れていない上、移動しているようだから、全妖怪ハンターに警報が出たんだ」
「ありゃりゃ」
「それだけ妖気がデカけりゃ、近づいてくれば気配だけで分かるだろうが…美猫も注意してろよ」
「ん~、了解。だけど、キー君なら髪の毛1本おっ立てたら探せるんじゃニャい?」
「…週末の予定、映画のあとのウィンドウショッピング中止してウチに来てマタタビでもいいんだが?」
「ニャニャ!? 冗談よ、じょーだん!!」
例によって葉樺の嫌うネタでからかおうとした美猫だったが、すぐに反撃されて即座に誤魔化す。
「それで、妖気値はどのくらいなのかニャ?」
「概算1000万クラス、らしい」
「ニャ!?」
誤魔化すために妖怪の強さの目安となる妖気値を聞いた美猫だったが、葉樺の答えを聞いて絶句する。
「この前の酒呑童子でも800万。今までの相手で一番強かったのは西洋妖怪のドラキュラ伯爵で960万だったか」
「あの時はボロボロにされたニャ~」
葉樺の言葉を聞いて、その時のことを思い出した美猫が顔をしかめる。カップル成立直前に戦った相手で、さすがに超メジャー妖怪だけあって危うく殺される所だったのである。先輩ハンターの助けもあって、何とか倒すことはできたが、もう二度と戦いたくない相手なのだ…まあ、そのおかげですれ違いを解消してカップル成立できたのではあるが。
だが、その後も戦闘経験を積んだ二人の戦闘能力は、わずか半年とはいえ相当に上がっている。今なら1000万クラスの相手でも戦えないことはないだろう。
「それにしても1000万クラスの妖怪っていうと、相当メジャーなヤツか、そうでなきゃ、それこそ1000万人殺してるような現象のはずだが、一体何だろうな…」
「はニャ? ドラキュラ伯爵とか、酒呑童子とか、確かに有名だけど、何でメジャーだと妖気が強くニャるの?」
葉樺がつぶやいた言葉に疑問を抱いたらしい美猫が尋ねる。
「妖怪ってのは、人の念が集まって生まれる超常の存在だってのは分かってるよな。だから、それが『恐ろしいモノ』『怪物』と思っている人間が多いほど、妖気は強くなるんだ」
「ああ、ニャるほど。それで有名な方が強いんだ」
「そうさ。例えば、今まで一番の強敵だったドラキュラ伯爵なんてのは、ブラム・ストーカーの小説と、そのモデルになったヴラド大公が組み合わさって生まれた妖怪だが、モデルのヴラド大公は15世紀の人物だけど、小説の方は19世紀末だから、実はまだ生まれて100年ちょいしかたってない若い妖怪なんだな。でも、超メジャーだから若くても960万も妖気があるし、倒されてもすぐに復活するんだ」
「ああ、それでよくドラキュラ伯爵って復活するのね。そっか、酒呑童子も節分でみんなが『鬼』を意識したから、あの時期に復活したんだ」
納得した美猫だったが、ふと思いついたことがあったので、その疑問を口にする。
「あれ、でも若いって言ったら『口さけ女』とか『トイレの花子さん』とか、もっと若いのもいるじゃニャい」
「そう、古くからいる妖怪だけじゃなくて、口さけ女とか花子さんみたいに新しく生まれた噂話みたいなものも、圧倒的な量が集積すれば妖怪になる。あと、ドラキュラ伯爵が小説や劇による人気で妖怪としての存在を確立したみたいに、メディアの影響も大きい。花子さんなんか実体化はけっこう前からしてたが、パワーアップしたのは90年代に映画ができてからだな。だから、きっと近い将来に『テレビから出てくる髪の長い女』は妖怪として実体化するぞ」
「ありそうだニャー」
「それどころか、お前が猫又憑きになったのだって、きっとテレビやゲームのせいだぞ」
「ニャんですと!?」
「ほら、ちょっと前に大ヒットして今でも人気の『妖怪が見えるようになる時計』のゲームやアニメのメインマスコットの『オレンジ色の猫』いるだろ。アレのせいで『猫の妖怪』に対する子供たちのイメージが強まって、連鎖的に猫系妖怪全般が復活してるんだ。お前にはもともと遺伝的に猫又憑きの血が流れてたんだろうけど、今それが復活したのは、間違いなくあのゲームやアニメのせいだぜ」
「うニャー! そうだったんだ…」
「そうさ。だから、古い妖怪がメディアに取り上げられたせいで復活することだって、よくある。
「んじゃ、信長ニャんかも…」
「最近の『魔王』扱いからすると、突然妖怪として実体化する可能性があるな」
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