ゾン二君の苦悩 3

ガヤガヤと聞こえる声。

僕の意識が完全に回復する前に、ここは僕の家なんだと判った。

僕が目を開け体を起こすと、まず母さんが気づいた。

「ゾン二ったら、母さんが偶然みつけなかったら、死んでたわよ?」

「ああ、ありがとうございます。母さん。」

体が重い。

何をしたんだろう?

就職センターに行って、それから、えーっと、それから...?

「さぁさぁ!移動よ!移動!」

パンパンと、母さんが手を叩く。

「ぅえー?!」

「またぁ〜!?」

「そうだっ。ゾン二がこの地域でも、暮らせなくなったからな!」

父さんは、笑顔で弟達をなだめる。

そうか。またやってしまったんだ。



僕ら家族が、貧乏な理由。

それは、僕に大きな原因があった。

無意識の内の殺戮行為。

そのせいで、5890ある地域の内、2649の地域から指名手配とされている。

指名手配となる度に、僕ら家族は他の地域に引っ越して、その度に大量のお金を使っている。

兄さんにも、弟達にも妹達にも無い、殺戮の才能。

誰にも治す事など出来なかったんだ。

まず、両親は治す気なんて全くないみたいだけど。


他の地域で、就職できるかな。

僕は、家族と一緒に2650回目の引っ越しを始めるため、二ヶ月間お世話になった家を出た。

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