ゾン二君の苦悩 2

ドアを開けると、ガラスの向こう側には、様々なカメラがぎゅうぎゅう詰め。


「えっ...」

ぼくが、キョロキョロしていると、

『左の、、ラインが、たくさん、入っている、壁に、、背中を、ぴっ、たり、つけて、立って、くれ。』

こっち側の両隅にある、スピーカーから、不自然な間を取る声がした。

ぼくは、言われた通りにした。

『番、号を、教えて、くれ。』

「31です。」

静かな時間が、数分続いた。


『外の、プレートに、結果を、乗せて、おいた。それを、取って、、さっきの、面接官の、ところに、向かって、くれ。』


外に出ると、ぼくが入ったドアよりも奥の方に、プレートに乗った検査結果の入っていそううな封筒があった。

手に取って見てみると、【面接官以外閲覧禁止】とあったから、中を開けずにそのままさっきの部屋のドアの前に戻った。

戻る時にたくさん人がいたのに、部屋の前に戻ると、誰もいなかった。


どう渡せばいいんだ?コレ。


さっきも言ったように、人間とぼくらは、嗅覚の差があり過ぎて、一緒に生活できない。だから、ぼくらの臭いが、彼らにとっては物凄い悪臭になるんだ。

そんなぼくの臭う手が触れたこの封筒には、きっと、想像もつかない地獄絵図を描ける可能性があるんだろう。


どうしようと迷っていると、人間の女の人が、黒い変な鉄の塊を顔に付けて、出てきた。

「あのっ、すみません。」

と、ぼくが話しかけると、その人は急にその場で倒れてしまった。


えっ、ちょっと、どうしたんだ、おかしい。病気だろうか、なにかの発作だろうか、いやいやさっき変なものを食べてしまったのかも。

ぼくらも、ネズミでお腹を壊すことがしょっちゅうあるんだ。

何かあってはいけない、と思って、慌ててその人を担いで、その人が出てきたドアまで来た。

その時ぼくは、ドアまで担いできたのは、大きな間違いだと気付いた。

ぼくの臭いが、その人に移ってしまったかもしれない。

ぼくらの臭いは、人間に付いてしまうと絶対に消すことはできないんだ。

ぼくは、この人の将来を考えて、窓から放り投げた。その後すぐに大きな音がしたけど、きっと幸せになる。

ぼくは、もう一度部屋に入ることにした。


すると、アラームが鳴り響いた。

さっきの面接官が、慌てた様子で、

「ちょっと待っててくれ。」

と、向こう側のドアに行ってしまった。

何かあったのかな。職探しでヤケになるのもいるっていうけど...

でも、今日は、今までにもめている声は、全然聞こえなかったけどな。

思ったより早く面接官は、戻ってきた。

「すまない。始めよう。結果持ってるかな。」

「コレ、ですか?」

ぼくは封筒を見せた。

「そうそう。あそこの穴に入れてくれるかな。」

面接官が言ったところにある穴に、封筒を入れる。ガラス張りで、中の様子がよく見える。

穴の中に入っていった、封筒は、ものすごい勢いで、消毒・殺菌・消臭のようなことを施された。その後、中に入ったまんまで、封を切られて中の紙だけが、面接官に届いた。面接官は、紙をじっくりと読んで、

「君の要望に応えられるかどうかは、今は置いといて。」

「はい、それで?」

僕は、面接官の言葉を待った。

「取り敢えず、捕まろうか?」

「へっ?」

面接官の言ったことが、全くわからなかった。

頭が、追いつく前に、

バタン

コツコツ

チャキ

部屋の中に、頭からつま先まで真っ黒で変な格好の、背の高い銃を構えた集団が、僕の周りを取り囲んだ。

「えっ...?」

「君がここに来るまでに、3人も亡くなっている。そんな君を就職させる事など、できるわけがないだろう?」

「...............?」

僕はポカンとした。

「さぁ、君の罪を償ってもらおう。」

集団の一人が、僕に腕に触れた。

混乱でパンクした僕の頭の中に残ったものは唯一つ。

絶対に生きて家に帰る。

無意識に僕の腕を引っ張り始めた一人を、反対の腕で掴み、それを棍棒の様に振り回す。集団全員が、仲間棍棒によって壁に叩きつけられる。真っ黒い集団全員が意識を失った。

「応援要請!至急、応援要請!!」

面接官が、向こう側のドアに叫んだ。

真っ黒い集団を薙ぎ倒した後、開けっ放しのドアから飛び出すと、元来た道の方に、待ち構えていた新たな真っ黒い集団が目に入る。

無意識のまま、僕は、天井に張り付く。

不意を突かれた集団は、動きが止まる。

その間に、天井の照明を割り、その破片を朽ちた皮膚から見える骨で、狙いを定めて打つ。

破片が、三人に当たり、崩れ落ちる。

仲間を失った集団は、ハッとして、銃を僕に向けて撃った。

しかし、薄暗いこの館の照明を、次々と割りながら進む僕を捉える事は出来なかった。

照明の破片攻撃で、残るは部隊長の様な一人だけ。

無意識の僕は、回転をかけながら、

「フッフッフッ。楽しませてくれるっ...」

台詞を言い終わる前に、踵落としを食らわせた。

グシャ

部隊長の様な一人は、空きカンを綺麗に真上から潰した様な形になった。

下へ降りるための階段から、沢山の規則的な足音が聞こえてくる。

道を戻り、ドアを通り過ぎて、人間の女の人を落とした窓を開けて、下へ飛び出す。

2階と言っても、人間様のサイズに造られてないこの館は、地上まで7mはある。近くに生えていたハヌンズッシュの木を掴みながら、下へ落とした人間の女の人の上に着人。

一目散に就職センターの敷地から出た。




就職センターから、1080ゾンニール離れた時、プッツンと僕の意識は途切れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る