目が回る。先程見た鏡の様子が頭から離れない。


なんなのだあれは。本当に私だったのだろうか。


結局あれから数分ほど鏡の前で動けなくなった後、急になにかに突き飛ばされたかのように私の体は鏡の前から追いやられた。

正直、助かったと思った。あれがなければ、私は気を違えていたかもしれない。

あれがなんなのか、いまの私には検討もつかないが、ともかく倒れたままでは仕方がないので、起き上がりこうやって家の探索をしつつ、私について思考している。


私が誰なのか。私は私であるはずなのだ。現に今こうやってスムーズに家の探索ができているのも、私がここの家主であって見慣れているからなのだ。そのはずなのだ。

しかし、唯一見慣れないものが私自身というのは…なんというか、狐に化かされているようでとても、奇妙で奇っ怪で、不快だ。


不快といえば、先程からしているこの臭い。まるで人肉を炙っているかのような、そんな臭いが先程から鼻にまとわりついてくる。もしかして、ここに死体があるのだろうか…などど要らぬ妄想をして、思わず身震いする。

もしそれが本当なのだとしたら、早いところ原因を見つけなければならない。そう思い、今はその臭いの根元を探すことに意識を集中させるのであった。

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