第35話 うさん臭い白猫 其の二

「天使様だったのですか!?」

「神の使イ!?」

「嘘!?」


 自分に様付けするようなやつリアルで初めて見たわ。

 てか天使ってなんだよ。マヨネーズの広告のキャラだったり、寝ている子供と犬を連れ去ったりするあれか?

 エルたちは驚いているようだがなんだかよけいに胡散臭く感じてきたぞ。本当に天使なのだろうか。


「・・・天使だから魔王が復活することも知ってるし、異世界召喚の能力も持っているってことか?」

「そうにゃ。」

「そうにゃて・・・その理屈も全然わからんし、まだ疑問が残るんだが。例えばなんで勇者でもなんでもない俺が今でもここにいるんだ?」

「それが分からないんだにゃ! あの時僕がこっちに呼んだ魂はみんな元の世界に返したはずにゃ!」


 結局わからんのかい!

 猫の姿の天使(?)が地団太を踏むように猫パンチの嵐を勇者の肩にたたきつけている。


「うっかりミスでもしたのか。」

「そんなはずないにゃ! ちゃんと確認したにゃ!」

「確認しても間違うのをミスって言うんだろ。」

「僕はそんなおっちょこちょいじゃないにゃ!」

「ミスじゃないっていうならなんなんだよ。やっぱり今までの話はみんなインチキなのか?」

「それは・・・。」

「ちょっと待て芳雄、こいつにはどうしてもしゃべれない理由があるんだ。それに今までの話は辻褄自体は合っていると思うよ?」


 狼狽える猫を茂がかばう。

 確かに言われてみると天使やら魔王やらうさん臭い言葉が並んでいるだけで矛盾は無い気もする。気になることも多いが秘密と言われてしまっては仕方がないし、ひとまず俺と茂からの質問は終わりにするか。次は|俺からの⦅・・・・⦆質問だ。


「なんかうさん臭いけど、俺がここにいる理由は一旦それで納得するとして。次はなぜエルの事を知っていたのかを知りたいんだが。」

「なんでそんなことまで教えなきゃならないんだにゃ!」

「テンテン!」


 茂が白猫を諫める。いかにも面白くなさそうな顔をした白猫一つ息を吐いた。

 しかしこいつ獣のくせに表情豊かだな。


「・・・そこのエルフは研究所に捕らわれたところを勇者が救ってパーティに加える予定だったのにゃ、優秀な魔術師としてにゃ。」

「ふーん、でもなんでエルが研究所に捕らわれることが分かったんだ?」

「さっきも言ったじゃにゃいか。僕は他人の運命率を操作できるのにゃ。」

「つまり、お前がエルを捕らわせるように仕組んだのか?」

「そういわれれば・・・そうと言うしかないにゃ・・・。」


 その言葉に今度は俺が激高し、猫に詰め寄った。

 胸倉をつかもうとしたが茂に制される。


「お前も落ち着け。」

「芳雄様! 落ち着いてください、相手は天使様ですよ!」

「何者だってかまうもんか、こいつのせいでエルやルリが危険な目にあったんだぞ!!」

「だからってこいつを責めてもしょうがないだろ。」

「そうにゃ、それにちゃんと救い出す予定だったんだにゃ。危険な目に合わせるつもりなんかなかったにゃ。」

「でも実際エルはその研究所に着く前に死にかけたんだぞ!」


 その言葉に猫は驚いた顔をしてエルの方を見た。


「それは本当なのかにゃ?」

「あ・・・。はい、本当・・・です。あの人さらいは水を与えてくれなくて私は重度の脱水症状に陥りました。芳雄様に命を救われていなかったら死んでいたでしょう。」

「にゃに? そこのスライムに救われたってどういうことにゃ?」

「それはカクカクシカジカで・・・。」


 俺たちはエルと出会った時の事を話した。


「そんなことがあったのかにゃ・・・。しかしそんな水に変身できるなんてすごい能力だにゃ。まるで僕たちの作る回復の泉のようだにゃ。」


 やっと理解したがこいつ、反省してるんだろうか? まぁ反省したところで許すつもりはな・・・。

 ん? 何? 回復の泉・・・? あれ? 前にもどっかで聞いたような?


「その回復の泉ってのはなんなんだ?」

「天使が作れる勇者の回復用に作った泉の事にゃ。セーブポイントという石の近くで飲むと体力と身体の異常が全回復するっていうすぐれものにゃ! セーブポイントは勇者が触れると起動し、勇者が死んでもその場所に復活する仕組みになってるにゃ同じ場所に回復の泉を置くことで効率よくレベリングができるようになるにゃ。あ、レベリングっていうのは・・・・・・。」


 なるほど、要するにあれだ、RPGのゲームのシステムだ。勇者は何度死んでも復活でき、なおかつその回復の泉で傷ついても簡単に癒すことができるのだと。そして勇者にだけ敵を倒したら経験値が入りその力を蓄える能力があるのだと言う。

 なんというチート能力・・・。まぁその代わりに魔王に挑んでもらえるようにあの従魔が見張ってるんだろうが。


「そのセーブポイントってのがさっき勇者がしがみついてたでっかい宝石みたいな青い石か。」

「そうにゃ、この近くだとこの上の砂漠の中にも作ったはずにゃ。」


 へえ、砂漠の中ねぇ・・・その回復の泉があればエルもあんな目に合わずに済んだのに・・・。

 ん? |砂漠の中⦅・・・・⦆?


「えーと・・・、この上の砂漠っていうと・・・デザートの街から研究所に行く途中にある・・・?」

「その通りにゃ、この上の砂漠は魔獣のひしめく危険地帯のはずだからにゃ。そこの姫が砂漠の真ん中で危険な目にあっても大丈夫なように、一応作っておいたにゃ。」


 ふぇ!?

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