第20話 荒野をこえて見えたものは?
「芳雄様! 見えました!」
「おおおおおおお! やったああああ! やっとまともな場所で寝れる!!」
「二人とも、気が早いわよ」
そんなこと言って、ルリも顔が緩んでるじゃないか。
俺たちはあのバトルから数えて二日、いや、俺にとっては前の世界から数えて数年ぶりに、ようやく人の住む街にたどりつくことができた。長かった本当に長かった・・・・。
カバの背に揺られながら感傷に浸っていると頭をポンポンとやられた、身体が衝撃で波打つ。
「芳雄様、そういえばどうやってあの街に入るつもりなんですか?」
「へ?」
よく見るとその町は城壁に囲まれ、一か所だけ見える門からしか入れないようで、入国を希望する人々が並んでいるのが見える。憲兵がいるらしく、怪しいものは猫一匹入らせん! と、見張っている。
「私達の恰好をよく見てください、こんな薄汚い恰好をしていたらただの物乞いと思われてしまうかもしれませんよ?」
そういわれたのでエルたちの恰好をよく見てみる。
まずルリであるが、彼女が着ているのは薄い水色の手術着一枚だったがこの二日間でずいぶん薄汚れてしまった。一応下の下着は履かせたもらっていたようだが、上の方は二つの大きな胸についているポッチがまるわかりな状態である。
エルはもっとやばい、彼女は最初から薄着だったが、この間の戦いで着ていた薄茶色のワンピースがさらにボロボロになってしまい所々から肌が露出している非常にけしからん状態になっている。特に動きやすいように腰あたりから破ってスリットを入れたらしく、秘部は見えないまでもちらちらと履いてないのがわかってしまう状態だ。
う~ん確かにこれは物乞いと思われてもしょうがないかもしれない。
「それに・・言いにくいんですけど芳雄様が中に入るのは難しいと思います。」
え?俺?
「人型でもない魔物が簡単に中に入れてもらえるわけないですから・・・。」
「あ。」
そりゃそうだ、元の世界で海外に旅行に行った時だってそこにはちゃんと出入国管理局があったものだ。さて、どうしたものか・・・。
「ちょっといい?」
どうやって中に入ろうか思案していたが、エルの後ろでカバに揺られていたルリになにか考えがあるようだ。
「芳雄、貴方ってエルがさらわれた人さらいに化けれるのよね?」
「うん、まぁできるけど?」
「なら簡単じゃない、その人さらいに化けて入ればいいわ。」
いやまぁ、そうなんだけどね。
エルの方を見てみる、するとものすごく悲しそうな顔を俺に向けてきた。しかしだね、あの時は俺の喋り口調がどうとかで失敗したのもあったんじゃないかな、俺だって緊張しなければちゃんと演技できるはずだ、現にあの男は途中までは騙せたじゃないか。
俺は意を決しルリを見上げた。
「よし、ルリの案でいこう。俺だってやればできるところを見せてやる。」
「・・・本当に大丈夫なのでしょうか・・。」
エルさん、今回はうまくやるから!
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「次の者。」
前の人間が中に入り、俺の番になったので前に進み出る。ちなみにエルはせっかく一騒動終わったのにまたこの男の顔を見るのが嫌だったらしく、この顔になったときは渋面に作っていたが、今はちゃんと演技してくれている。
「なんだマンティスじゃないか、後ろの者たちは?」
「ああ、新しく手に入れた俺の奴隷どもだ。」
これは事前にルリと話し合って決めたことだ、吸収したものの服装まで姿形を再現できた俺はともかくエルとルリの二人はどう見ても物乞いにしか見えない。
あまりにも格差を感じる格好の人間が連れ立ってあるいている場合、奴隷と主人と見られるのが普通だとルリに教えられていた。
てか人さらいと門番知り合いかよ。
「そうか、羨ましいなそんな美人を二人も好きにできるなんて。」
「まぁな。」
「ちっ、で? 身分証は?」
きた、しかし焦る必要はないと教えられている。
「あ~、実はここに来るまでに無くしてしまってなぁ。」
さて、ルリによると通常の入国時ならこの後身体チェックさえ通れば大丈夫と言うことだが・・・。
「なんだ、迂闊な奴だな、じゃあ身体チェックするから手を上げろ。」
良し聞いた通りだ、門番がポンポンナデナデと俺の胸と腰と尻ポケットの部分を探られた。・・・ナデナデ?
「良し、オーケー。」
ほっ。
「じゃあ後ろの二人はお前がやれ。」
それは聞いてない。
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