第16話 怪獣大決戦!
小太りの門番視点
ケインズのやつ遅いなぁ、あの奴隷をつまみ食いでもしてるのか? くそ! 俺が行けばよかったか。いや、今からでも様子を見て俺も加えてもらうか。
小太りの男は、早速と研究所内へと踏み込んだ。
しかしあの小娘と一緒にいたマインティスに変装していた男は阿呆だったなー。あんな簡単な嘘にひっかかるとは。外見の変装技術はすさまじかったがあれではな。
小太りの男は思い出し笑いしつつ、廊下を歩く。
その時不意に地面がグラリと揺れた。
「なんだ?地震か?」
そして轟音が鳴り響き、彼を包み込んだ。
芳雄視点
ガゴオオオオオオオオン!!!!!
「ぎゃあああああああああ!!」
「きゃああああああああああ!!」
「・・・・・・!!」
「ひえええ!ちょ、ま、待って動くな!い、今包み込むから!」
俺は急いでエルとルリをスライムの体で包み込んだ。上から落ちてくるがれきをポヨンポヨンとはじき返し続ける。視界の端であの男ががれきの中に消えていくのが見えたが無視する。ちょっ、ルリちゃん驚く気持ちはわかるけど暴れないで。
二人を包み込んだまま倒壊した建物をかき分け、青空の元へ出ると。
「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「は、はは、なんだよこの特撮ヒーローモノみたいな展開・・。」
「ふえ~スライムの外に出てもまだなんかべとべとするよ~。」
(あ~びっくりしたど、やっぱり芳雄様に包まれるの気持ちいいや。)
注射を打ち込まれたマンティコアは今や体調10mもの怪物、いや怪獣になってしまった。吠え声がでかすぎて俺の体がプルプルプルプル震えまくっている。今からあれと闘わないといけないのか? ってゆーか別に闘わなくてもよくない? 逃げればよくない?
あ~だめだな、正直この二人を抱えて逃げ切れる自信がない。あいつ元の大きさでもすげー速かったし、でかくなって更に元気になってるっぽいし。
一度深呼吸しよ「ギャオオオオオオオオオ!!!」 っう、ぐ。
あああ! もう決意さえ決めさせてくれないのか! 仕方ない、もうさっさと変身するしかないようだ!
・・・・だからエルさん早くどいてください。
ぐずぐずしていたら案の定向こうが突っ込んできた。それをスライム形態のまま体積を大幅に増やすことによってボヨーンとはじき返す。
マンティコアが距離をとったのを見計らってエルを体から降ろす、降りる際に(がんばって)と言ってあのカバのいるところにルリと一緒に駆けていった。
んふっ、女の子に励ましてもらうのって本当に力がみなぎるもんなんだな。
マンティコアは戦い方を切り替えさっきと同じように尾を振り上げて迫ってくる、まだ頭を働かせるくらいの知恵は残っているのか。
ザブッ!
ぐあっやっぱ痛い、毒の量も大きさ相応に増えてるみたいだな。しかしさっきまでの俺と思うなよ!
刺してきたタイミングに合わせ尾に俺の体を這わせていった。先ほど失敗したのは先に溶かそうとしてしまったからだ、それにルリの拘束具を溶かすのにも集中しなければならなかったからな。
今回はまずこの体で包み込むことに集中する。
「グギャアアアアオオオオ!!!!」
ドォン! ドォン! と地面に打ち付けられる。スライム体にはなんのダメージもないが、衝撃で振り落とされそうになる。
「くそっ! 暴れるな! ・・・・・このっ!」
苦戦しながらも徐々に尾を包み込み一気に決着をつけようとしたが、ブチッっと尾を切り離されてしまった。
「ちっ、しかし、これでもう毒は・・・」
「ガアアアアアアアア!」
俺はズリュッ と再び生やされた尾を見て。
「まじかよ・・・。」
とつぶやいた。
ルリ視点
「きゃあああああ!!」
かなり離れたと思っていたのに吹き上げられた砂や石つぶてが身体に当たる。
あのスライムだけど、今度は巨大なサンドワームに変身して戦い始めたみたい。マンティコアの攻撃が当たる重い衝撃音が響いてくる。サンドワームの方は長い体を使って体当たりを仕掛けているようだけど、マンティコアは羽を使って飛び始めたのでなかなか攻撃が当たらない上に当たっても衝撃がうまくつたわらないみたい。時折かなりのダメージを与えても空に逃げられたら手も足も出ない。勝負は持久戦の様相を呈してきているようだった。・・・サンドワームが不利な戦況に推移しながら。
さっきから驚くことばかりだ。エルがやってきたことを皮切りに、わけがわからないうちに助けられ、やっと逃げられると思ったら今度は体中をべとべとにされて巨大なモンスターたちの戦いを見せられている。脳の処理が追い付かずショートしそうだ。
不意に手を引っ張られた。見るとエルがとても心配そうなまなざしで私を見据えていた。
こういう時は。
大丈夫、きっとなんとかなる。
とでも言えばいいのだろうか。しかし私は励ますだけの勇気さえなくしてしまい、ただエルの顔から目を背けることしかできなかった。
そうしたらエルにさっきより強めに引っ張られてしまい、思わず体のバランスを崩してしまった。
おずおずと再び目線をエルに向けると自分の首輪を指さしていた。
「あ、そうか、封印の首輪!」
そうだ、エルは魔力の量さえ少ない、この歳にしてはとても器用に魔法を使える。あのマンティコアにグラビティの魔法を使い空から叩き落とせば、きっとあのサンドワームが倒してくれるだろう。
ただ問題は・・・。
「エル、あのね、その首輪は着けた本人じゃないと外せないようになっているの、その金具のところに布があるでしょう? そこに着けた人の血をしみこませればいいんだけど、もし他の人の血をつけると・・・」
「!」
言い終わる前にエルはがれきの中に向かって走り出した。急なことに少し呆然としてしまったが気を取り直しエルを追いかけようとする。
しかし、その時なぜか私の体に激痛が走り追いかけることができなくなってしまった。
腑の中の物がすべて口からでてしまうんじゃないかと思えるほどの吐き気に催されながら、私は。
「・・もし他の人の血をつけると首輪が爆発して死んでしまうの・・だから・・やめて・・・エル・・・」
と、つぶやきながら意識を手放すことしかできなかった。
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