第12話 ドッキドキの対面タイム

研究所・所長視点


 待ちわびた知らせだ、アレが手に入ればここ50年詰まっていた研究が進展するだろう。

 ワタシは作業を中断し、検体を招きいれるため扉に手をかけた。


 ヒヒヒヒ...

 おっといかん、つい笑いが出てしまう、そろそろ脳も寿命が迫っているのかもしれんな、最近は記憶が無くなる事も多い。


 しかしあの奴隷狩りは優秀だ、ワタシは人間族でありながら身体を何度もすげ替えつつ300年もの月日を生きてきたが、ワタシの要求する検体をここまで迅速に用意してくれるのは彼だけだった、この研究が終わればなにか礼をすべきだろうな、まぁ”生きられれば”の話だが、ヒヒヒ・・


 さて、研究体No1985も待たせていることだし、早速新たな検体を見せてもらおうか。


 扉を開けると、マンティスと今回の検体が並んで立っていた。


「待たせたな、ここまで苦労したんだぞ。」


 検体が全く拘束されていていない様子に少しいぶかしんだが、これの目を見た瞬間そんな気持ちは吹き飛んだ。


 全く期待通り、いや、これは期待以上だ。ワタシは長年の経験から相手の目を見れば大体の魔力量を推し量ることができるのだが、こんな目は初めて見る。師匠の下にいたころに知り合った大魔術師でさえここまで豊かな魔力は持ち合わせていなかった。今回は長く持ってくれそうだ。


ワタシは喜々として彼らを出迎えた。


「おお、まちかねたぞ! おや、門番のやつらはどうした? なぜお前が連れてきたのだ?」

「あ~、二人とも体調が悪いとかで動けないらしくてな。」

「なんだと! あれほど部外者をここに通すなと言っているのに! ・・・まぁ、いいか、それで? きちんと無力化させているんだろうな?」

「あ、ああ、もちろん、魔導具をつけ魔法を使えないようにしている。」


「エル・・・ ああ・・・ そんな・・・・・。」

 研究体No1985が何か言っている。

「・・・・じゃあこいつはどこに案内すればいいんだ?」

「ヒヒヒヒ、あの拘束具に固定させておけぇ。」


 そう言って機嫌の良くなったワタシは部屋の反対側にある大型魔物用の檻の中にいくつかある拘束具を指さした、あれは医療用の固定器を改造したもので、特殊な素材を使っているため一般の魔物レベルの力でもびくともしないようになっている。

 金属製のものと違いジャラジャラと音が鳴ることもなく、立たせながら固定でき、使い勝手もいいのでワタシはとても気に入っている。


「了解、それじゃ・・・。」

「ああ、ちょっとまて、檻の鍵を開けよう。」


 そう言ってワタシはマンティスたちに背を向け事務用の机に向かった。しかし、そのときワタシの”後ろの目”がナイフに手をかけるマンティスの様子を捉えた。

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