第5話 ノーカン!ノーカン!ノーカン!ノーカン!

(スライムだからノーカン・・・・スライムだからノーカン・・・・)


 先ほどからまるで念仏のように聞こえてくる。彼女は自らの性癖がばれたことによるダメージを、俺が人外だったからまだましだとごまかしているようだ。


 どうも彼女はこの方法で会話すると頭の中で考えていること全部俺に伝わってしまうらしい。俺が彼女のようにすべてを悟られていないのはやはりこれが俺の能力だからなのだろうか。ただ、それでもまだ俺の手を握っているということは、それほど必死だからなのだろう。


 そんなことを考えていると彼女がキッっと俺の方に顔を向けてきた。

(スライムさん!)


 急に大きな声で呼ばれた感じがしたので、反射的に狼狽えてしまう。

(え、あ、はい!)


(私は本当は今の歳まで父と一緒にお風呂に入っているようなお子様ではないのです!---嘘だけど--- ですから今のは聞かなかったことにしてください!)


 余計なことが聞こえた気がするが、聞かなかったことにして了解ですと答えておいた。


 やっとひと段落したので、気になっていたことを聞いてみる。


(そういえば普通に声は出せないの?)

(はい・・ 実は封印の首輪という魔法具を漬けられ声を封じられてしまったのです。声が出せれば詠唱をして魔法を使うことが出来るのですが・・)

(魔法具!? 魔法!? えっ魔法が使えるの!?)

(あっはい。・・あ、いえ今は使えませんが・・)

(いや、ごめん、そういうことじゃなくて、つまりここは魔法が存在する世界ってことで・・・・・ あ~・・ってことはやっぱり”そう”なのか・・?)


 薄々思っていたことではある、スライムの体、変身能力、見たこともない生き物、耳のとがった少女、そして魔法・・・


(スライムさん? ”そう”とは?)

(・・・・・ごめん、その前に聞きたいんだが・・ここの場所の国の名前と、もしここが大陸の中だったら大陸の名前を教えてくれ)

(はい、ここはテンドウ大陸西部にあるサラティーナという国です)


やっぱ異世界かここ・・・

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