第4話 エルフの少女はトマト姫?
はぁ・・・ はぁ・・・(息してないけど) な、なんとか外に出すことに成功したぞ.
砂漠の真ん中で見つめあうエルフの少女と一匹のスライム。
片方は精神的に満身創痍になり、片方は警戒しつつも不思議なものを見る目をしながら内股に座っている。
改めて彼女を見てみて思った、うんこれは完璧な美少女だわ。年齢は16、7才くらいか? くすんでいた金色の髪は長くて邪魔だと思われたのか、肩のあたりが散切りのショートカットになっているが、日光に当たって輝いて見える、胸は控えめだがスタイルはいい、ぼろきれから伸びる透明感のある白い肌が艶めかしい。
顔はおどけなさが残るが、緑色の瞳を持つ目はちょっと沈んで見える。そして両耳はいわゆるエルフ耳って感じで細長い形をしていた。
体調は大丈夫なのだろうか? 顔色がよくなったとはいえ、飲ませたのは得体のしれないスライム(芳雄)の体液である。確認するためにも声をかけてみよう、先ほどはなぜか言葉が通じていたし。
『えっ・・と、さっきはその、大変失礼しました。俺の名前は坂本芳雄と言います、日本って国からきました。元人間なんですが、今はわけあってスライムやってます。』
芳雄の話を聞いた少女は目を見開いた、しかし返事はない。
『(あれ? おかしい、さっきは通じてたのに・・?)あの・・僕の言葉わかりますか?』
なるべく丁寧に言葉をかけてみる、考えてみれば今自分はスライムだ、警戒されるのも当たり前だと思う。しかしまたも少女は無言で芳雄を見つめてくる。
(ええ~どうしよう ・・・これじゃ埒が明かないぞ)
どうやら自分の想像以上に怖がっているようだ。
(そりゃそうか・・ 今さっきまで俺に食われそうになってたものなぁ・・)
先程の用に自分の体で包めばまた会話できるようになるのだろうか、しかし勝手にそんなことをして怖がらせてもいけない。
どうしようかと思案していると、少女がおもむろに右手をつきだしてきた。怖くないのだろうか?
『握手してってこと?』
聞いてみるがやはり無言で見つめてくるだけである。どうしようかと差し出された手をみると小刻みに震えているのがわかった。
やはり怖いのであろう、きっとこの子は相当な勇気振り絞り手を差し出したのだ。そう思い、気がついたときには俺はすでに彼女の手を握っていた。
(こ、こんにちは?)
「うおっ!?」
やはり頭の中に彼女の声が響いてきた。2回目とはいえ、全くなれていない感覚なので思わず驚いた声をあげてしまう。
(す、すいません。あ、あの大丈夫ですか? 私の言葉、わかりますか?)
(ああ、いやこっちこそごめんなさい、頭に直接言葉が届く感覚なんて初めてだから、ちょっとびっくりしてしまって。はい、ちゃんと聞こえてますよ。)
(え、この能力ってあなたのモノじゃないんですか?私も初めての経験なのですが・・)
(え?)
(え?)
どういう事だ? 俺だってこんなテレパシーみたいな会話は初めてだ・・しかし考えてみると一番おかしいのは俺自身の状態だ、ひょっとしたらこの体には俺も知らない力が眠っているのかも知れない。仮説ではあるが、ほかに要因も思いつかない上、あまり熟慮するタイプでもない芳雄はとりあえず納得しておくことに決めた。
(う~ん、まぁ俺、自分でもこの体の事はよくわからないしひょっとしたら俺の能力なのかもな。しかしまぁ、俺みたいなもんに手をさしのべてくれてありがとう。・・・怖かった?)
(正直に言いますと・・・ はい・・ まだちょっと不安があります・・ 知性のあるスライムの方を見るのは初めてなもので・・)
なんとかコミュニケーションが取れたことにほっと胸をなでおろす。やはりまだ緊張しているのだろう、時折、彼女の手がまだふるえているのを感じる。
それから彼女に信用してもらうため、男を捕食した事を隠しつつ、偶然女の子を見つけたため、水分を与え介抱した事を話した。
(・・つまり、私はスライムである貴方に助けて頂いた・・ というわけですか?)
(まぁ、そういうことになるのかな? それで、どう? 体の調子は?)
(そういえばすごく体が軽いです。気を失う前はあんなに辛かったのに・・・?)
(なんともない?)
(はい! ウソみたいに調子がいいです! なんだか生まれ変わったような心地です。)
大げさだなぁ、しかし回復したようで良かった。
(それにしても・・・。)
ん?
(さっきはびっくりしたなぁ・・ まさかスライムに包まれてるなんて・・ でもなんかこの間父上と一緒にお風呂に入ったときみたいな安心感があったなぁ)
(え? お風呂? 父上?)
俺の言葉にハッっとした表情を見せた彼女は見る間に顔を引きつらせ、その頬を真っ赤に色づかせ始めた。
(え・・・・ まさか・・・ 今の聞こえてたんですか・・・・・?)
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