その8 みずたまり(ぶちまけるぜぇ
翌日。
僕と紅葉が昨日よりも早く学校につくと、辺りは少し騒がしかった。
「なんだろう?」
「…」
紅葉は特に何も言わず、それでもって僕が軽く辺り見渡すと、校庭とは反対側にあるゴミ捨て場のある方に、僅かながらではない人だかりが出来ている。
「うむ」
どうでもいいけど、僅かに好奇心が。
行ってみるとするかな。
「紅葉はどうする?」
「…」
紅葉は、その人だかりの方をじっと見ている。
「紅葉?」
「行く」
「そっか」
僕は頷く。
そして僕らは、坂道を登ってゴミ捨て場の方に向かっていく。
……うん。
それにしてもうちの学校って、変な地形の場所に建ってるよね。
高低差がすっごくあるって言うか、まともに平行な場所、あんまりない気がする。
まだ1年間も通っていなような気もするけど、そんなに気にしたこともなかたなぁ。
「…うん?」
僕は首を傾げる。
「何だこれ?。」
坂を登った僕らの目の前に広がっていた光景は、思わずそう呟いてしまうほどのものだった。
奇妙と言うか、何と言うか。
「運動部大集合、かな?」
何故かはわからないけど、サッカー部からテニス部からはたまた野球部までこんな所に集まっている。
しかもその中に混じるように制服の学生もちらほら見える。
でも。
「みんなで楽しく朝練、って雰囲気でもなさそうだなぁ」
全然活気もないし、乱闘ってわけでもないんだろうけど。
それになんだか、空気も変だ。
濁ってるっていうか、淀んでるっていうか。
この、独特の感じ。
これを、嫌ってほど僕は知っている。
「紅葉」
「………」
「ちょっと、此処で待っててくれる?。」
「…」
紅葉は無言。
僕はそれを肯定と受け取り、1人でその人だかりに近づいていく。
近づいて分かったんだけど、どうやら生徒達はとある一箇所を囲むように集まっているようだ。
それにどうしてだか、ほとんどの人が故意に顔を逸らしているようにも見える。
女子生徒に至っては、座り込んで縋り合っている生徒もいる。
ついでにすすり泣きも。
悲しんでいると言うよりは、怯えからくる方で。
「…はぁ」
なんだか、髪の毛レーダーがビンビン来てるぜ。
まあ、何となくの予感なんだけど。
外れないだろうなぁ、いい加減。
こればっかりは、両手どころか両足の指を足しても数えられないほどだし。
慣れたくないけど、慣れだよなぁ。
此処で起きたのは初めてだけど、1つだけ言えることがある。
それは、珍しく今回は、僕達との関係は、無さそうだと言うこと。
良かった良かった。
「ちょっとごめんね」
僕はそう言って、前にいた野球部の生徒を退ける。
その生徒は僕に何も言うこともなく、簡単に退いてくれた。
放心していただけだろうけど、どうでもいいしね。
そうして僕は、野次馬の一員を担ってそれを見る。
生徒達に囲まれた、その、中心にあるもの。
それは、真っ赤な、真っ赤な。
水たまり。
もちろん、絵の具でもなければ、ペンキでもない。
そして、空気に漂う、独特の、鉄によく似た香り。
腐臭とまでいかないけど。
口を押さえている生徒もいる。
それから、その水たまりの、発生源。
もちろん、水道でもなけでば、突然変異の雨でもない。
それは、すでに終わってしまった、元、人間。
いわゆる。
死体。
という、物、だった。
「…………………………………………」
そして、それを見て、僕は、頷く。
「うん」
久しぶり。
そして…。
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