第九夜 青虫と猫の生態系
ちりちりちり……。
青空の下、涼やかな風が路地の間を通り抜け、過ごし易い季節が来たことを主張する。
薄紫の竜胆が、中の鈴を鳴らして歌い、それに共鳴するように一間先の竜胆も歌で返事を返す。
ちりん、と鳴れば、ちりん、と返す、その歌声を聴いているのは一人の少女だ。
少女は何かを熱心に凝視めている——家と家の間には塀が一枚ある——。どうやら見ているのは、塀に蔓を巻きつけた朝顔のような植物である。否、正確には、その葉を食む青虫である。
何時の間にか少女の隣には女性が立っていて、少女と話をしている。葉を食べている青虫に近づいている猫が居て、それについての話である。
「猫は青虫を食べるの?」
女性が問うと、少女は答えて、
「青虫は葉に含まれる葉緑素を分解して無害にするから。体が緑なのは無害になった葉緑素が体内に蓄積されるから。」
「そう。じゃあ、あの猫は葉が食べられないんで、代わりに青虫を狙っているんだ。」
「うん。」
そういう話をしていた。
猫は青虫を食べたのだろうか…。
(起床)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます