第五夜 ものの話
月も見えない暗い夜、石塀と垣根とに二重に囲まれた家が、ぽつんと建っている。木造の小屋のような古びた家である。山の中だろうか、非常に寂しい
ある時「もの」が家に出た。
黒く
不定形で、触覚もなく、頭も尾もなく、大きさも大小様々で、「それ」とか「もの」とかとしか言い様のない、生き物であることすら不明な妖物であり、私はそれに「もの」と名付けていた。
最初に「もの」は
しかし彼等の様子を伺うに、
案の定、水を掛けると「もの」は
だが、そうこうしているうちに「もの」どもは加速度的に殖えていき、
私は窓枠に
「もの」は一つの生き物となったように——実際、一匹一匹が融合する様を見た——波打ち、うねり、影のような体で私を捕らえようとする。
私は「しめた」と思い、外に出て床下を探る。何もいない。
——結局、家ごと燃やすことにした。火をつけて回っていると、何事かと人々が大勢来る気配がした。石の塀が囲んでいるので山火事にはならないだろうが、面倒事を敬遠して私は去った。
結局、「もの」が何で、何処から来て、何処へ行ったのか、不明なままである。
(起床)
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