第2話経過
ツヨシはだらしがなく太っている。髪の毛やヒゲももだらしがなく長い。しかもヨレヨレの半袖Tシャツと古臭いスウェットパンツをだらしがなく身につけている。しょう油のすえたような体臭もだらしがない。ぱっと見、ツヨシには褒めるところが何もない、というのがヒカルの率直な感想だ。そのツヨシが自ら神さま宣言をした。
「で、今、オマエは何をして生きているのかね?」
ツヨシに質問されヒカルは少し途方に暮れた。ツヨシに関する予想が裏切られたからだ。ヒカルはてっきりツヨシが路頭に迷っているものだとばかり思っていた。ところが実際会ってコミュニケーションを取るとイニシアティヴをツヨシに握られているような気がする。ヒカルはどうも納得がいかなかった。ニートのくせに、というわけだ。
「僕は商社勤務だよ。来月ブラジルへ行かなければならない。我が社はブラジルのエネルギー業界から撤退するんだ。あそこは今、政治経済がマズイいことになっているからね……だからと言ってブラジルを捨てるわけじゃない。大西洋側の田舎町のインフラ整備を請け負うことになるかもしれない。その商談をまとめに飛行機で飛ぶんだ」
「ふふん」
ツヨシはヒカルの話を鼻で笑った。ヒカルは思わずムッとする。
ツヨシは、長い道のりを経てさなぎの抜け殻を捨てた、ハイスペックなヒカルを全て無視した。
「オマエ、俺の秘密を知りたいか?」
神さまの超ニートが上半身を乗り出してヒカルに言った。
ツヨシはなぜか挑発的だ。ヒカルはここに来たことを後悔し始めていた。
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