第2話 楽しい食事と出発の決意

 階段をあがりきったもうそこは庭園になっていて教会の前庭だった。

 "持たざる者"であるソフィアには通常教会の門は開かれない。

 が、ここに居るアレクサンドロス司祭は所謂異端審問官に通ずるものであり、

 なおかつ、古アルメキア魔術史を考古学する学者でもあった。

 本来異端者など容易に教会の本部は潰せるのだが。"彼女"は政治的に潰せなくする手法さえも心得ていた。

 更にアレクサンドロス司祭はこのフォートハイゲン一の美女であり男衆が多い教会本部にあってはそれに手を出しづらいということもあった。

 前庭を過ぎり豪奢な石門をくぐりぬけようとしたとき彼女が横の畑から声をかけてきた、

「あら、ソフィアとエルネかい? 朝早いねー。いらっしゃい。仲良く手繋いじゃって。今日もいい天気ねー」

 はっとして手を引っ込めようとしたのだがエルネは離そうとしなかった。

「おねえ、朝飯なんかくんねー?! おれ腹ペコなんだよ。この階段きっついしさ。こいつも腹減らしてるしさ」

 アレクサンドロスは先生というのは許してくれるが、御姉様以外の呼び名で呼ぶとキレる。

 つまりおば様などといった日にはものすごいものを見ることになる。

 エルネもソフィアもずいぶんと昔からの付き合いなので姉弟姉妹のような感覚で気軽に姉として付き合いをしていた。

「いいよー、じゃーエルネ、コレ、今収穫した野菜、キッチンまではこんでぇー」

 齢三十にして高位司祭である彼女は白い修道着の前を泥だらけにして、銀髪のロングヘアを結い上げ、

 蒼い瞳にすらりとした肢体にふくよかな胸、遠目に見ても十分美しい。額の汗を手の甲で拭く姿だけでそれは一枚の絵になるような美女であった。

 "どちらでもない"ソフィアからしても彼女の女性らしい美しさはわかる。

 エルネはソフィアと繋いだ手を見つめつぶやいた。

「手伝ってくる、ふらつくようなら食堂まで送るけど大丈夫か?」

 手はそれでも優しく繋がれていた。

「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう。」

 ホントに壊れ物を扱うように手のひらを開くものだからこちらの方がドギマギしてしまう。

 お腹の痛みは少し楽になっていた。

「いまいくー!」

 畑に手を振り彼は駆け出した。離された手をもう片方の手で包んで彼の熱がまだそこにあるのを感じる。

「……エルネには私なんかじゃなくって、御姉様の方がよほどお似合いなのに……な」

 不意にそんな言葉が出てしまう。

 遠眼に、畑でエルネに収穫した野菜を満載した籠を手渡すアレクサンドロスを見て、ほんとにお似合いだとおもってしまう。歳は離れているが相思相愛なように見えるし。

 ふと、ちょっとだけ、やな感じ? とおもいつつ慣れた足取りで教会の食堂にソフィアが入る。

「あ、ソフィアさんおはようございます」

 見習いシスターのシルバは私より若い女の子だが、両親を事故で亡くして以来ここで働いている。

「おはようシルバ! ちょうど朝ごはんの準備中だった? 私も手伝っていい?」

「はい、ありがとうございます!」

 茶髪のお下げでそばかすが可愛くて私より一回り小さいこの子は、自身の境遇も重なってか私を差別しなかった。

 教会勤めでも露骨に"持たざる者"を睥睨するものは多いのに、ここだけはちょっと特別な場所だった。

「ソフィアさん、今日はエルネさんといらしたんですね、また絵の買い付けでトラブルでもあったんでしょうか?」

 私が彼と来るときは大抵絵を買い付けてくれる客とのトラブルがあるときだった。

 画廊でソフィアの描きあげた絵をみて購入を決め、つなぎを取ってみてあとから、

 描いたのが"持たざる者"だと知ったとたん、当初提示してある価格の十分の一以下で買い叩く客はいままで山ほど居た。

 その度にエルネは仲裁に入り少しでも有利な取引が出来るよう、教会の威厳を借りに、

 外出を嫌がる私をここまで引きずって来てはアレクサンドロス御姉様に相談してくれるのだった。

「ううん、今日は違うんだ。御姉様に相談があるのは確かだけど」

 てきぱきと4人分の皿や食器を並べるシルバを横目に、懐に入れた先ほどの指輪のことをちょっと気にしつつ既に出来上がっていた大鍋を卓の真ん中に持っていく。

「あ、重いのにありがとうございます!」

 いいのいいの、と返すが、彼女は本当に街の者が私に送る視線ではない、感謝の意をこめた視線で私を見ている。少し照れる。

 ガチャリと食堂に近いドアが開けられ、泥だらけの前掛けをしたアレクサンドロスが入ってくる。

「いやー、いっぱい採れた! お天道様に感謝!」

 胸の前で正教会のクルスを切る。正円に十字の紋だ。

 言動や、見た目は聖職者とはまったく言いがたいのだが祈る姿は天使のようである。

「お師匠様、そんな格好ではご飯は食べられませんよ! 着替えてくるか、湯も沸かしてあるので身体を清めて来てください」

 シルバのいつのも文句。である。聖職者という割りに身を清めるということにはまったく無頓着なアレクサンドロスはそのままご飯にありつこうと思ったらしく、食卓の真ん中に置かれた大鍋をちょっとうらめしそうに覗いたのだが、シルバの忠告とあってはしかたなく風呂に向かった。

「はいはい、シルバちゃん、お姉ちゃんはお風呂に行ってきますぅー。エルネ、ソフィアともう二品くらい適当に作っておいて?」

 シルバはよろしいと頷く。

「え、解ったけどもうパンとか、スープとかあるじゃんか、畑でとったのハーブと、ジャガイモと、お菜っ葉と、こんなもんしかないけど。どうすんだよ……」

 愚痴は聞かないとさっさと風呂に行ってしまった彼女を後にエルネは困り顔でシルバとソフィアを見る。

「んー、エルネも手は洗ってきてね。じゃあ私はサラダ作るわ、シルバ悪いけど魔法で調理して?」

 魔法で調理して、と、言う言葉を使う人は少ないというか、このフォートハイゲンではソフィアだけだった。

 人は料理洗濯掃除、一般的な家事全般ですら魔法を使って片付ける。

 彼女を除いてはである。あえて言うということは彼女は"持たざる者"であることを自覚して自傷しているに等しいのだが、エルネとシルバはその言い方には慣れっこだった。

「ん、じゃあおれ手洗ってくるわ。シルバ、ソフィアお願いな」

 エルネは外の井戸まで手を洗いに行ったようである、かつてアレクサンドロスが風呂に入ろうとして脱衣所に居るところに、

 彼は不用意に入ってしまったことがありどうなったかといえば魔法で二日ほど動けないように金縛りにされたのである。

 にも関わらず鼻血を垂らしてたのだから情けなかったし、ソフィアもシルバも大笑いだったのだが、

 以来アレクサンドロスが風呂場に居るときは近づかないようにしているのだった。

 サラダならば手でハーブと野菜をちぎって作ればいい。

 いつもは少ない食材でしか出来ないけれど、食材さえ充実していればソフィアは少しだけ料理には自信があった。

 魔法が使える人たちは細かな作業にすら魔法を当たり前に使う。

 だが手作りで作る料理にはいろんな意味で違う味がでるとソフィアは思っている。

 そんな彼女が淡々と料理する様子をみつつもシルバは炎魔法・圧力魔法等を使い、畑で取ってきたイモをあっという間にベークドポテトにしている。

 けれどもじっとソフィアの手元を見つめ声をかけてきた。

「ソフィアさんの料理している姿ってとっても綺麗ですよね……」

「えっ?! どうしたのいきなり……」

「だって食材をほんとうに大事にしている気がするんですよね。アイネール様の時代の前の人々は毎日当たり前のようにそうやって食材を手で調理していたはずですものね」

 なにか大事なものを見つけたかのような眼で見られて緊張しつつも、ソフィアは作業を続ける。

 月の大地を創造した大魔導師アイネールの時代の前の時代、人類は魔法を使えない時代もあったそうだ、当たり前のように充満している魔力がなくすべての人が"持たざる者"だった時代があった。

 そんなこと今では想像することすらできず、ソフィアは自身の調理法を原始人がやっていたような感じ。

 と談じるのだが、シルバからはそうは見えないらしい。とっても綺麗だなんて、ちょっと褒めすぎだけど。

「できたかー?」

 外から顔も洗って帰ってきたらしいエルネはからんと金属製の牛乳瓶を机上に置いて聞いてくる。

 牛舎は畑とは反対側の山側にあるのだが走って行ってそこで牛乳も取ってきたらしい。

 机の中央に置かれた鍋からはくつくつといいにおいが漂っている、魔法により鍋は保温されており冷めることはない。

 それからしばらく机に作った料理を並べるのをエルネも手伝ってくれて準備万端整った頃、ちょうど着替えて修道女厳と成した服装になったアレクサンドロスが帰ってきた。

「まぁ!すごーい。ありがとうね三人とも。さぁいただきましょう。」

 銀色の髪は後ろに綺麗に束ねられ、湯上りの彼女からは鍋から漂う食欲を誘ういい匂いとはまた別の花のようないい香りがしている。

 エルネはちょっと、かなり見とれていた。

 机の下でアレクサンドロスに見えないようエルネの向う脛を蹴っ飛ばしてやった。

「いでっ!!」

「鼻の下伸びてるしっ!!」

「ごめんごめん、おねえがあまりにも綺麗でちょっと見惚れちゃっただけさ! しょうがないだろ……。ごめん」

 アレクサンドロスは席に着くとそのやり取りを聖母のようなにこやかさで見つめている。

「エルネ、貴方という人は、うーん、本当に私でもいいのかしらね? それとも、違うのかしらね?」

 妙に謎賭けみたいな事をエルネにすまし顔で問うのだが、エルネは急に縮こまって考え出している。

「ふふふっ。さぁ、ごはん。ごはん」

 席についてうきうきしてる様子は先ほど一瞬見た聖母ではなく、いつもの御姉様だった。

「姉さま、今のどういう意味です?」

 すでにウキウキモードのアレクサンドロスはえへへーと得意そうな顔をするだけでまともにはソフィアに答えなかった。

「先生ってたまーに、宣教師らしくなったりしますし、謎なんですよね……」

 シルバは皆の食器に魔法で食事を給え、配りながらそう言った。


 わいわいとした朝ごはん。ソフィアには全く珍しいこと、

 エルネには空の競争相手とする落ち着きのない食事ではないこと、

 シルバにはいつもよりにぎやかな食卓。

 そしてアレクサンドロスには興味深いものだった。

 食事もあらかた済んだころ、エルネが目線でソフィアに促した。

「ね、先生、あの、これを見てもらってもよろしいでしょうか?」

 いきなり改まった物言いをされたので彼女も先生モードで、はい。と鷹揚にうなずき、彼女が手にしたものを見つめた。

「これ、今朝、湖の畔で拾った指輪なんですけど、何か、強い魔法が掛かっていたみたいで、私が拾ったとき、エルネと一緒に声を聴いたんです。女の子の声でした」

 手を伸ばして掴もうとして女の子という言葉を聞いて止め、ソフィアの持つ指輪をのぞき込む。

「これはまさか。……そんなことが?……」

 はっとした顔でアレクサンドロスは立ち上がり、魔法で書架に掛かっていた梯子を近くまで引き寄せると。

「確かここの棚だったようなー」

 たんたん、と梯子を上り上の棚から分厚い本を引き出す。表紙がとても豪華で色鮮やかな本だった。

「なんですその本?」

 エルネが問う。

「百科事典よ。この世界のことがぜーんぶ書いてある。それの一冊」

 よいしょとおろして机の上の食器を脇によけてから本を下す。ドシンとまではいかないがかなり重そうな本だ。魔法で持っていたとしてもかなり重いにちがいない。

「たしかここらへんにー」

 パラパラとページを捲っていきここだと開いたところにソフィアがもっている指輪と同じものの絵が記載されていた。

「あった、やっぱり! これね!」

「へぇー」

「百科事典に乗っているなんて……、この指輪なんなんです? 先生」

 不安げにソフィアが尋ねる。

 アレクサンドロスはこほんと改まって咳をして見せてから二人に言い聞かす。

「魔導歴328年、にはあったとされる魔導庁の中央支部。現在のアイネリア王城。その中でも最も格式の高い一族とされたドゥ・ツェム家。

 その家の紋が刻まれた指輪は代々一族の長となる女性……つまりは王女様が代々保有している国宝ともいえるものである。

 しかし現物が確認されたことは今まで一度もなく伝説上の聖遺物であるとの噂もある。これはあくまで情報をもとに描写したイラストである。

 ……ってあるわね。つまりこれはとんでもない物、なのかもしれないわ」

 エルネとソフィアが顔を見合わせて驚く。

「驚いたのはこっちよ。どうしてこんなものが落ちてたりするわけ? それに強い魔法っていったわね。ソフィアも声が聞こえる位の」

 三人の輪に食器を片付けてきたシルバも加わり話を聞く。

「ソフィアさんって魔法が効かないんじゃ……」

「つまりそれをも越える魔法が掛かっていたって事になるわね。つまり、たぶん、王族魔法よ」

 ええー!!!と思わず三人が声を上げる。

「ちょっと待てよお姉、なんで王家のもんが湖の畔なんかに落ちてたり、俺たちが拾ったりするんだ?」

「さっぱり解らないわね。女の子の声を聞いたって? なんて言ってたのかしら?」

 人差し指を唇に当てて考えごとをするポーズを取るアレクサンドロスはそんな様すら綺麗に見えて、一瞬ソフィアも見惚れてしまっていた。

「あ、えーと、私を待ってたって、助けてくださいって、パレスで待ってるって言ってました。小さなかわいい感じの目が力強い印象の女の子で、なにかすごい必死だったような気がします」

 ふむ。とアレクサンドロスは頷き。

「エルネとソフィアで揃って聞いちゃったってことは、エルネはもう、もしかして、あそこに行くつもりなのかしら?」

 質問の脈絡がなくいろいろぶっとんで先に進んだ会話のように思うのだが、アレクサンドロスのいつもの癖なのでそこには誰も突っ込まない。

「もちのろん。ソフィアも一緒にな。」

 ソフィアも話の展開について行けないが、あそこに行かなければならないというあの子の意思は伝わってたし、エルネに頷き返す。

「うううううーん、こりゃー、問題になるかも知れないわね~」

 今度は頭を左右に振りだして真剣に悩んでいるようだ。

「王族魔法、に、月の大地に行く、とかってなったら、まあ大問題というか法律問題になるんだろうけどさ、お姉は違うところで悩んでね?」

 なにやら察したエルネが呟く。

「そーうーなーのーよー、その指輪。私に預からせてくれないかしら? そうね、三日くらいでいいわ。いろいろ調べたいの」

 ソフィアは手に持った指輪に目を落として考える。

「私のものじゃないから、いいですけど。でも危険なこととかしないでくださいよ! 御姉様」

「そこんとこは大丈夫よ。シルバ、私ちょっと魔導庁にも行かなきゃならないから、留守にするかも知れないけどそのときはよろしくね」

「はい、私は構いませんが、でもその指輪が王族関係のものだとして魔導庁になんて持って行ったら取り上げられちゃうんじゃないですか?」

「持って行ったりはしないわ。調べ物よ。王立図書館じゃないとないの。禁書目録だからね」

 なにやら猛烈なスピードで脳が動き出したらしいアレクサンドロスはころころ表情が変わっている。

「ふーん、お姉、無理してお上に狙われないようにしろよな」

「うん、ありがとう、心配しないでね」

「先生、よろしくお願いします」

「こっちは任せといて、で、ほんとにあなた達月の大地へ行くつもりなのね?」

 ソフィアの瞳を見て問うた。

「ええ、可能ならば、ですけど……。でもすぐには無理なんじゃ」

「船をカスタムして準備しようと思う、三日、お姉が調べ物するのにかかるってんならその後に出航出来るようにしようかな」

 エルネはやる気満々の眼をしてそう二人に宣った。

「ふう、止めても行くよね、あなた達なら、ま、私も止めないけどね。けど気をつけて行くのよ?」

 にこりと頷くと、アレクサンドロスはなぜかエルネとソフィアを手招きして近くに呼び寄せ、ぎゅーーっと抱きしめた。

「ちょっと、お姉?」

「御姉様?」

 エルネには二人の胸が当たって刺激が強すぎたようにも思えるが、ソフィアは普段こんなことしないアレクサンドロスの様子が気がかりだった。

「縁起でもないこと考えたりはしないで、ソフィア。私は大丈夫。ちょっと二人のパワーを補給しときたかったのよ。ふふふ。あ!」

 というとシルバの横にも掛けよってぎゅーーっと抱きしめた。

「不公平なのはよくないわね」

 シルバは普段はこんなに開けっぴろげには甘やかしてくれない師匠に抱きしめられてしまい、照れ隠しでもぞもぞしていた。

「お師匠様ってば……」

 4人で笑い合って、楽しい朝食の時間は解散となった。


 教会からの帰り道、エルネはやはり石階段で強引にソフィアを負ぶさり慎重に下りながら考えたことを口にする。

「あの様子は尋常じゃないっぽいな~、お姉のやつ」

 ソフィアも首肯する。

「だよね、王族が絡んでるからなのかな」

 行きはだいぶ抵抗感があったが、帰りは身体がきついなら無理すんな、と一喝されたのでおとなしくエルネの背中に収まったのだが、それでも彼を抱く手に入れる力加減が悩ましい。

「三日経って戻らなかったら……なーんてことは無いだろうが。

 あの指輪がヤバいもんじゃないといいな。ってか"あの子"はそういう風には全く見えなかったしなー」

 確かにそうだった。指輪に掛けられた魔法で幻視した少女は危険なもの、という雰囲気とはかけ離れていた。だが切羽詰まった感じはしたが。

「あの子、今も私たちを待ってるのかな」

 何かに気がついたようにエルネは言う。

「たぶん、ソフィアを待ってるんだろうな。俺を待っては居ないと思うよ、あの時俺が見たのは君ら二人だけが話してる様子だったんだ」

「そうだったんだ。どうして私なんだろう」

「何か意味があるんだろうな、そうか、お姉が調べてみるっていってたのもソフィアがらみなのか?」

「え、それどういう意味よ」

「いや、俺にもよくわかんないけどさ、それよかソフィアほんとに行く気なのか、あそこへ」

 石階段から降りていく丘陵の湖側の遙か上にはムーンパレスが燦々と輝いて浮いている。

「私、あの子に呼ばれたからと言って、あんなところまで行くのは怖いの。だけど」

 だけど、エルネが一緒なら行けるかも知れない。と心の中で続きの言葉を紡いで噛み締める。

 一人では到底無理だし、そもそも外へ出るのすら怖いのだ。

「だけど、あの子の言葉を無視できないか。俺もそうだな」

 エルネはムーンパレスを睨んでからソフィアを抱える手の力を少し強めて階段を下りていった。

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