第8話
ふむう、私はこれが苦手なのだ。 オレンジ色の物体を前に私は人知れず苦悶していた。 いや、しっかりせねばな、私はこの艦の艦長これしきのことでへこたれていてはいかん。
「艦長、どうかしましたか?」料理長が心配そうにたずねてくる。
「いや別に」できるだけ素っ気なく、心配されないように返す。 しかし、私はこれが苦手なのだ、ジャリジャリとした食感、口に広がる甘酸っぱい香り、普通のみかんなら食べられるのに、なぜこんなに苦手なのか、小さい頃にこれを食べて吐いたとか、悪い思い出でもあるのか、と考えてみたがそんなこともない。 しかも、しかもだ、心の中で引き続きつぶやいてみる。 戦艦での食生活は計算され尽くしている。 栄養、必要量、そしてなるべく廃棄しないことだ。 つまり出されたものは基本的には食べ切らなければならない。 曜日も忘れないように、ローテーションでこれは出てくるのだ。 どうしてこんなものを食べなければならないんだ。 心の中で毒づきながら、一週間に一回は出てくるそれ、つまり半分凍ったオレンジゼリーを再び見つめた。
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