君に会いたくて
みやま たつむ
第1話
「雨は好き?」
そう聞く女の子に僕は、恋をした。
だから僕はすぐに答える。
「だいすき!」
そう言うと、彼女はにっこりと微笑んで言った。
「良かった」
彼女のその言葉の意味を、その時は理解していなかった。僕はただ、彼女のその笑顔に見惚れていた。
「またね」
そう言って、真っ赤な傘が遠ざかっていっても、僕はしばらく、彼女の笑顔を忘れられず見送っていた。
君に会いたくて、空を見上げた。
君に会いたくて、蟻をつぶした。
君に会いたくて、下駄飛ばしでわざと裏にしてみた。
君に会いたくて、てるてる坊主を逆さ釣りにしてみたりした。
けれど君に毎日会えるわけではなくて、だから僕はこれからも毎日蟻を潰すし、下駄も裏返すし、てるてる坊主を拷問をする執行人のごとく逆さ釣りにするだろう。
今日もあいにくの空模様のようだ。天気予報を聞きながら学校に行く準備をする。
「行ってらっしゃい」
「いってきます」
親に挨拶を返して傘を持って外に出る。
梅雨は開け、眩しい日差しが今日も僕たちを照らしている。
近所のおばちゃんが言った。
「今日も傘持っていくの?」
けれど、僕は「いってきます」とだけ言って、走り始めた。
明日は遠足である。
だが、今日もてるてる坊主を逆さ吊りにするし、蟻も潰す。下駄も飛ばしてわざと裏にする。けれどきっと、明日も晴れだろう。
夕日を眺めながら、ため息をついた。
「いつになったらまたあえるのかな」
いつ会えるのかわからない。
だから今日も蟻を潰すし、てるてる坊主を逆さ吊りにするし、下駄もとばして裏にする。
ただただ、君に会いたくて。今日も明日の雨を願って叫ぶ。
「あーした、あーめに、なーれっ」
君に会いたくて みやま たつむ @miyama_tatumu
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