第7話 到着
ドラゴン騒動から1時間ほど経って、俺達はボルット村へと到着した
ドラゴン以降はなーんも魔物に遭遇せず平和なもんだった、恐らくみんなドラゴンから逃げ出しちゃったんだろうな
長い道のりを2人も乗せて運んでくれたルークには御の字である、但し俺を何回も落とした事は忘れないけどな、でもドラゴンを倒したあとは一回も落とされなかったがどうしてだろうか・・・まぁいい、彼?には安らかに眠って欲しい
死んでないけど
ちなみに、ドラゴンの死骸はミールの提案により牙や鱗を持てる分だけはぎ取り、残りは燃やして、埋めておいた。
もちろん燃やすのはスロットを使って炎を出してやった、火炎放射器的なので。
肉を焼くときにも便利だなぁって思って、ふとルークを見たらぷるぷる震えていた。
スロットを使った後は、割と後悔した
だって、コインが有限だからあんまり使わないようにしようと思った矢先からだよ
もうね、完全にフリだったね、あれは。
でもしゃーない、放って置くと腐って強い魔物を呼び寄せちゃうってミールが言うんだもん、最悪ドラゴンゾンビになる事もあるって。文献で見たことがあるとかで、ったく、どんな子供だよ・・・俺がミールくらいの頃は本、ましてや、そういった勉強的なモノは読んだことはなかったぞ!
牙や鱗は武器や防具、生活必需品になるようでミールはかなり興奮していたな、肉片がついてて結構グロかったわ、いやぁ・・・やっぱファンタジーって小説とかゲームとか実際かなり省略されてるよね、分かってたけど。直に見るとやっぱ辛いモノがあるね。
と、まぁそんなわけで村の門前まで来たわけだが
「これ、本当に村かよ・・・」
目の前にそびえる壁は優(ゆう)に20メートルはある
ここからじゃよくわからないが、壁が村を囲んでいるのであれば外周も東京ドーム数個分になりそうだ。
「えーーー!!どうして!?隊長・・・私達はドラゴンを倒してきたんだよ!なんで入れてくれないの!?」
凶夜が村に驚いていると門番と交渉にいったミールの声が聞こえてきた
たしか、私がまず話を付けてくるからキョーヤはここで待っててね、えっへん
と言っていた
偉そうな事言って早速揉めてんのか・・・はぁ
「いや入れないってわけじゃないんだ、今さっき都のお偉いさんがシャトー教団のリーダーって奴と一緒に訪問に来てな。村に入る奴の検査を徹底しろって言われてるんだよ、邪教がリーダーの命を狙うかもしれないってうるさくてな」
ミールから隊長と呼ばれた男は申し訳なさそうに、しかし不機嫌そうに答えた
恐らく、その命令が気にくわないのだろう、もしかしたら教団とやらの方かもしれないが
それにしても厳つい奴だな、プレートアーマーってやつだろうか、RPGとかで割と初期に入手出来るのに似ている、ただこっちは顔は何もつけていないから髭面が無防備に晒されている、髭はもじゃもじゃだが髪は無いな。
腕の部分もアーマーがキツいからなのか外されていて筋肉が自己主張をしている、むっきむきだ。
なので下半身はフルアーマーで上半身は胸当てだけどいう感じになっている
凄い不格好のはずなんだが妙にそれが板に付いているから不思議だ
「むー」
「そう怒るなって、そもそもお前がドラゴンを倒せる訳ないだろ?目撃した奴の話もかなり胡散臭いもんなんだし、いない可能性だって・・・」
「倒したんだよ!キョーヤ!」
「へいへい」
ドラゴンの爪や鱗を持ってミールの所へ行く
「ん?お前は?」
隊長が俺を見て怪訝な表情をする、怪しむのも無理はない、俺の格好は到底この世界に馴染む格好じゃないからな
「俺は響凶夜、旅人だ。東の方から来たんだが道に迷ってしまってな、ドラゴンに襲われそうになっていたところをこのミールに助けて貰ったって訳だ」
適当に話をでっち上げておく、ミールが「倒したのは凶夜じゃない」と言いたげにこちらを見るが無視する、なるべく素性は隠しておきたいんだよ
「そうか、大変だったな、私はこの村の警備隊長をしているフォルクス・マークだ。隊長もしくはマークと呼んでくれ」
ミールと親しげにしていたのを見たマークは凶夜への警戒を少し解いたのか労いの言葉を口にし、握手を求めてくる
「ああ、よろしく頼むぜ」
がっちりと堅い握手を交わす、どうでもいいけどこっちにも握手の文化ってあるだな
「あと、これな」
凶夜はマークへドラゴンの素材の一部を渡した
「むぅ・・・こ、これは・・・」
マークは素材を手に取りまじまじと見つめ呟いた
青ざめてる青ざめてる、そりゃそうだろ
なんたってあのドラゴンのものだからな、俺も対峙した時は「終わったグッバイ人生」って思ったし。
「ほーら、言ったとおりでしょ!えっへん!」
ミールはいつものように無い胸を張って精一杯威張るポーズをとる
「ぶふぉふぉふぉ」
それに合わせて、ルークも自慢げに鳴いた
いいコンビだよまったく
「ああ・・・ドラゴンが本当に出没した事にも驚いたが、それを倒すとは・・・だが不味い事になったぞ・・・」
「「え?」」
俺もミールと同時に素っ頓狂な声を上げる
ドラゴンを倒すと何が不味いって言うんだ、むしろ倒さないで攻められる方が数倍不味いだろう、相手は空を飛んでるんだし、この村だって襲われたらひとたまりも無いはずだ、だからこそ状況をいち早く掴ためにミールを偵察に寄越したんだろうし・・・
「い、いや、まさか本当にドラゴンだとは思わなくてな、すまない・・・希にワイバーンをドラゴンと見間違える輩が居てな、今回もてっきりそんなところだろうと」
それよりも、とマークは切り出した
先ほどの驚愕の表情とは打って変わり、真剣な表情になっている
「お前達、ドラゴン倒す所を他の奴に見られてないだろうな?」
「え?う、うん・・・たぶん」
「ならいい、この素材は俺が隠しておく、あとで取りに来い、それとドラゴンを倒した事は絶対に言っちゃならんぞ」
「え?どうして?」
ミールが少し怒っているのが分かる、そりゃそうだ
あんだけ苦労して倒したドラゴンの報告をしちゃいけないなんて、実質村を救った英雄と言ってもいい・・・そもそも偵察させといて、ドラゴンはいないと思ってたーってのも気にくわない。念には念をってこと何だろうけど
「いや、シャトー教団が来ていると言っただろう、ミールは知らないかもしれんが、シャトー教団ってのは’熱狂的なドラゴン信者’だ・・・奴らがこの村へ来たのもドラゴンの噂をどこからか聞きつけてのことらしい」
「ドラゴン信者・・・」
隊長の言葉にミールが不安そうに復唱する、ドラゴンを倒した事によって何が起こるかうすうす気付いたのだろう、まったく賢い娘だ
「そうだ、もし殺した事がバレたりでもしたら・・・奴らの評判は頗(すこぶる)る悪いからな、何をするかわかったもんじゃない」
俺の世界にもいたな、そんな集団
野生動物の保護とか希少なほ乳類の保護を過剰に訴え時には過激な行動をとる迷惑な連中が。
「わかったよ、マーク、申し訳ないけどそれ頼むわ」
「ああ、責任を持って俺が預かろう、それとドラゴンも発見出来なかった事にしておくぞ」
「むー」
「ミール、いつまで膨れてんだ?しょーがねーだろ、ややこしいことになりそうだし」
「凶夜の言う通りだぞ、大人になれ」
「むー、わかったよー」
ミールはそういうと、地面を蹴ってくるりとその場で回った
拗ねているのだろう、そこらへんは子供だな
「なぁ、マークとりあえず村に入れてくれないか?」
「あぁ、そうだったな、凶夜はギルドカードか市民カードはあるか?」
ギルドカード・・・ファンタジーな響きだな、あれかなんちゃらギルドに所属したりすると貰える身分証みたいなもんか
市民カードは、住民票みたいなもんかな
とりあえず常識ぽいし、ここは無くした事にしとくか、再発行くらい出来るだろ
「持ってないな、ドラゴンに襲われたときに無くした・・・ぽい」
「おいおい、どっちもか・・・市民カードまで無くすとかあんまり聞いたこと無いぞ」
「しょうがないだろ、ドラゴンに追いかけ回されたら」
「うーむ」
マークは納得したのか、渋々といった感じで数枚の書類を持ってきた
「これにサインしてくれ、そうしたらこっちで再発行してやるから、本当は銀貨1枚かかるんだが、ミールと一緒にいてくれたんだ、サービスしてやるよ。これが仮パスだ、村にはこれで入れる、出るときに来れば市民カードを渡してやるよ。」
「おぉ、すまん恩に着るぜ!」
やっと村に入れるな
そういや、さっき銀貨とか言ってたけど、もしかしなくても俺・・・文無しじゃねぇか・・・どうしたらいいんだ、村に入ったらミールに聞いてみるか・・・
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