第4話 ドラゴン
「どぅわぁぁぁぁあああ」
響凶夜は追われていた
「ギャアアアオオオオオ」
「ぎゃああああああああ」
奴が叫ぶ度、大地は悲鳴を上げ、凶夜の足を鈍らせる
これならまだ、ヤクザなお兄さん達に追いかけられていた頃の方が幾分かマシであったと震える足にムチを打ちながら凶夜は思う
なんせあっちは鋭い爪で切りかかって来ることもないし、ましてや炎も吐かない
もちろん空を飛んで追いかけてきたりもしないからだ
「どうしてこうなった・・・」
数分前ーーー
「きょきょ、キョーヤ!」
「と、とりあえず、お、お、落ち着け」
上空に突如として現れた影に俺達は慌てふためいた、それがいけなかった
影の主は、俺達の声に”気が付いて”しまったのだ
このまま通り過ぎてくれる事を願った俺達の願いは空しく、奴は急旋回して目の前に降りたった
「最悪だ・・・」
凶夜は”それ”を見て呟く
ドラゴンのイメージといえば巨大なトカゲに羽を生やしただけ
アニメやゲームなら、戦ってみたら意外に大したこと無いなぁとか思うものだが
実物を前にするとその威圧感は凄まじいモノがある、長い年月を感じさせる苔のついた鱗、肉食獣を思わせる様な鋭い牙、獲物を狙うハイエナのような鋭い目
それらを全て兼ね備えた生き物が目の前にいるのだからたまったものではない
これならまだ、ライオンの群の中に放り込まれる方が幾分かマシなんじゃないだろうかと本気で考えてしまう
「きょ、キョーヤ・・・」
ミールがふるふると震えながら凶夜の服の袖を掴んでくる
「だ、大丈夫だ」
酷く自信のない声で凶夜が答える
どうしたらいい
凶夜は自問する
俺だけならまだしも、ミールは助けたい
もちろん俺も助かりたいけど・・・
「ぶもおぉ」
ルークが情けない鳴き声を上げる
そうだ、と凶夜は思い出す
たしかミールは地面に潜れると言っていた、ならばこの状況からも脱出出来るだろう
そもそもこの様な状況が想定されたからこそ偵察役にミールが選ばれたはずだ
「ミール、地面に潜って逃げる事は出来るか?」
「出来るけど、ルークは1人しか潜らせられないんだ・・・2人乗るともう1人は土の中で窒息しちゃうから・・・」
申し訳なさそうに答える
それどんなスネ夫。
脳裏に、このルークは1人乗りなんだと言う声が再生される
だが今はそんな場合では無いとかぶりを振る
くそ・・・それだと俺は逃げられないな
物事はそう都合良くはいかないなと凶夜は思う
しかし、この際しかたがない。
少女もとい子供は国の宝だ、ここで死なせる分けにはいかない
決してロリコンでは無いイエスロリータノータッチだ
「ミール、とりあえずお前だけでも逃げ、あれ」
凶夜がここは俺にまかせて逃げろとミールへ言おうとして後ろを振り返ると、さっきまでそこにいたはずのミールは忽然と姿を消していた。
思わず、きょろきょろと辺りを探してしまう
少しして遠くからがんばってーと声が聞こえ、凶夜が声のした方を目を凝らして見ると、そこには豆粒くらいの大きさのルークとそれに跨まがったミールが居る、いつの間にそんなところに・・・
と視界に違和感を感じ、足下を見ると地面には・・・ちょうど人大の穴が開いていた
あのやろうっ、自分だけ早々と逃げやがったな・・・
いや・・・逃がすつもりではあったから、あれで良いと言えばいいんだが、なんかこう釈然しゃくぜんとしない
改めて、凶夜とドラゴンは対峙する
仲間に見捨てられた俺をみて心無しかドラゴンがニヤリと笑った気がしたのは俺の気のせいだと思いたい。
ーーーそうしてこうして、今に至る訳である
「ガァァァァァ」
ドラゴンは大きく息を吸い込み凶夜を見る
その動作は誰がどう見ても
「火を吐くつもりじゃねーか!やべぇぇぇぇ!」
必死に走るが、こうしてる間もドラゴンは息を吸い込み続けている
凶夜もただ逃げてる訳じゃない、唯一の攻撃手段であるスロットマシーンをどうにかして出そうと必死に考えている
が
どうやっても出てこないのだ、さっきはあんなに簡単に出てきたのに今はウンともスンとも言わない
どうしたらいいんだぁぁぁーーーてか何が条件なんだ!命の危険か?なんか覚醒とかそう言う感じなのか?だったら今まさに俺の命の危機なんですけどぉっ!?
ドラゴンの呼吸が止まる、もう一刻の猶予も無い、ブレスがくる
恐らくそんなもん生身の凶夜が受けたらこんがり肉の出来上がりだろう、下手した骨も残らないかもしれない
「くそぉぉぉ!、あの変なスロットがあればなんとかなるかもしれないのにっ!!」
ピコンッ
「へっ」
軽快な音と共に凶夜の前にスロットマシーンが現れる
「まさか、スロットって言葉がキーなのか!?」
ピコンッ
凶夜がスロットと口にするともう一台が現れる
言えば言うだけ出てくる・・・のか?
この事実に気が付くとほぼ同時に
ドラゴンの口から炎が漏れ、凶夜へ目掛けてブレスを吐く体制に入る
万事休すーーー
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