第3話 村へ

謎牛の背中で揺られること数時間


「なぁ、まだ着かないのか?」


もう結構長い間あいだこの牛の背中で揺ゆられてるなぁ、しかも10回は地面に叩きつけられたし・・・なんか俺に恨みでもあるのかこの牛は、思い出したらムカついてきたわ


「ぶももっぶふっぶふふっ」


まるで俺をあざ笑うかのように鳴きやがって、てか絶対こいつ態わざとだよな「ぶふっ」とか言ってるし・・・


「キョーヤ・・・1人でぶつぶつ言って、どうしたの?キモいよ」


「き、キモいって・・・酷っ

俺だって普通に傷つくんだぞ」


何処がキモいってんだ、こんなイケメンを捕まえて・・・


「そうだねー、あともうちょっとかなー」


「無視かよ泣くぞ?つーか、何回も聞いたぞ・・・それ」


走っても走っても、景色は相も変わらず草しか見えない

いい加減この景色にも飽きてきた

この牛みたいに不思議生物でもいれば少しはサファリパーク気分で楽しめるのだが


襲ってこない前提だけど


数時間前にこの牛のタックルで空高くぶっ飛ばされた事を考えると、相手に襲う意志が無くても巻き込まれる事は十分に考えられる


「そういえば、ミールは地面に潜って何してたんだ?」


凶夜は自分が生死の境をさ迷う事になった出来事を思い出し、何気なく訪ねた


あの時は、なんてことしやがるんだ!死んだらどうする!?と思ったものの、ミールと出会わなければこの長い道のりを1人で歩く事になったと思うと、あれはあれで良かったんじゃないかとも思える、まぁ出来れば普通に歩いて登場して欲しかったところではあるけども


「あーあれはね」


うーん、と言ってもいいのかなーどうしよっかなー

とミールはしきりに首を傾げたあと、考えるのが面倒になったのか、まっいいかーとうんうんと頷うなずき


「ここらへんにね、ドラゴンが出たんだってーそれで僕が調査に来たの。僕はこう見えても村の親衛隊員なんだよ!」


えっへんと無い胸を張る


「へ?」


凶夜の耳に聞き慣れた単語が入ってくる、出来れば聞きたくなかったが

親衛隊ってのにも驚きではあるがそれよりも


ドラゴン・・・ドラゴンってあの?某ゲームのタイトルになったりファンタジーで最強だったりする、あのドラゴンか?

いや・・・その割にはミールは何ともないような感じで言っているし・・・意外にトカゲのちょっと大きいのだったりするのだろうか、たしかに小説とかゲームでも作品によって描かれ方とか違うもんな


まぁ、大体はボスクラスの強さなのだが


「ドラゴンって、どんな感じなんだ?大きさ・・・とか」


恐る恐る、ミールへ訪ねる。


凶夜は何となく思った、この草原に何にも生き物がいない理由がドラゴンなんじゃないかなぁーとか、その強大な力からここらへん一体の不思議生物達は逃げたした・・・とかそういう感じなんじゃないかな、そうであって欲しくは無いけど


「うーんっとね、詳しくは僕も知らないんだけど。」


そう言うとミールは親衛隊の隊長から聞いた情報を話し始めた


この草原に狩りに出ていたハンターからの目撃情報だという


曰く、空を覆う程の大きさだったと


曰く、口から灼熱のブレスを吐いたと


曰く、鳴き声は地を裂く様で他の魔物達は一斉に逃げ出したと


でも、ハンターも錯乱してたから見間違いかもしれないよっと付け足す。


ドラゴンは普段は南の大陸に生息していて、ここ20年はこの大陸で目撃された情報は無いらしい。


最悪だ・・・、特に最後なんて確実に俺の予想通りじゃねーか。

少なくとも、ドラゴンクラスの化け物がいるのは間違い無いと思っていいだろう

てか、魔物いるのか、じゃあこの牛もか・・・ずっと不思議生物だと思ってたのに


「つーか、そんな化け物の偵察にお前みたいな子供が来てるんだ」


「見たと思うけど、ルークは地面を進めるんだ。だからもしドラゴンに見つかってもすぐに逃げられる僕に偵察任務が来たわけ。僕は魔物使いだから。他の人たちはみんな剣士なんだ、だから偵察には向いてないし・・・それに、みんなは村を護らなきゃ行けないしね」


なるほど、たしかに合理的だな

でも、心情的にこんな子供を1人で偵察に行かせるのは辛かっただろう


「魔物使いとか剣士とか、職業があるんだな」


「キョーヤは知らないの?てっきり魔術師かと思ってたよ。魔法が使えるのって魔術師か奇術師くらいしか知らないし」


あ、でもあんまり見ないヘンテコな格好してるし、もしかして奇術師なのかなーとミール


魔術師ねぇ・・・俺って魔術師なのか?

たしかに、魔法を使えはしたけど、あれはスロットを使った結果だし

あ・・・でもスロット自体が魔法なのか?あれか、何が起こるか分からない系の魔法って事なのか・・・?


考える事が多すぎるな、これは一回しっかりと整理しないとな。

とりあえず村にいったら考えるか・・・


「キョーヤ!!」


ミールが唐突に叫ぶ、その声はせっぱ詰まっていて半ば悲鳴に近かった

凶夜は一瞬なにがおきたか分からなかったが、驚愕するミールの視線を見てすぐに理解する


「まいったね、こりゃ・・・」


我に返った凶夜が見たのは、自分らを覆う巨大な影だった

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