スイッチ1
@pochay78
第1話
おじいちゃん。沙里は今日も頑張っているよ。おじいちゃんに言われた、毎日を一生懸命生きなさいっていう教え忘れていないよ。。。。
「おはようございます」沙里は言った。帰ってこない挨拶。沙里は毎日会社で仕事の事以外では誰とも話さない。というか話してもらえないのである。沙里は村八分状態にされている。どうしてそうなってしまったかわからないが、沙里の悪口をきいても同意しない、おべんちゃらを言わない態度が敵をつくってしまったのかもしれない。もう慣れっこだ。沙里は家から持ってきたお手製のカフェオレをぐびぐびと飲む。
「内田さん。」後ろから声が聞こえてきた。野村だった。沙里は驚いた。野村の事は沙里も知っている。女子社員に人気のある専務である。歳は33歳沙里より10年上だが見た目は間違いなく20代に見える。独身でいつもおしゃれで清潔なシャツを着ているイメージ。「はい。」返事をした、「ごめんね、急に、この前課長から頼まれてた書類の件でちょっと詳しく聞きたいことがあって、今日の昼一緒にどう?」「え?」聞き返した。「今日のお昼一緒に食べませんか。」なぜかはにかんだ表情をしている野村が沙里の前に立っていた。「よろこんで」沙里はスキップしたくなった。
その昼沙里は野村につきあってくださいと言われた。次の日曜日沙里は野村とサイクリングに行った。その間「もう疲れたんじゃない?」と野村は何度も沙里を気遣ってくれた。沙里は野村に村八分にされていることを相談した。すると野村は「内田さんが明るく頑張っていいる姿は見ていて僕元気をもらっているよ。なんでも僕に相談して。」としっかりした目をして沙里を見つめ言った。それから沙里と野村はフレンチキスをした。
その次の次の日だった、沙里が給湯室に入ろうとするとこんな会話を聞いてしまった。社長が言う「ピュアそうな顔してお前ってやるな。次は内田さんが餌食か。」「ああいう友達がいない女が色々あとくされなくていいんだよ。捨てたって他の女子社員に噂が広まったりしないからな。」と野村。そしてフッと鼻で笑った。あまりにもひどい言葉に沙里は唇を強く噛んだ。その日沙里が寝ようとベッドに入った後どこからか「パチン」とスイッチの音が聞こえた。次の日の朝がやってきた。リビングに行くとお母さんの卵焼きの匂いがした。それからお父さんの長いトイレ。そしておじいちゃんがラジオ体操をしている。そう毎日の我が家の風景、そう前の日何があっても何があっても朝はやってくる。おじいちゃん‽おじいちゃんは沙里が中学3年の時に亡くなったはずだ。「沙里おはよーさん。」眉間の広いおじいちゃんの優しい声が聞こえる。その声はこれからまた身近に聞けるのだ。
スイッチ1 @pochay78
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます