第28話 記憶1
家に帰る途中、取り敢えず、奏さんの記憶爆弾の解除するための準備物を大型電気店で購入して帰った。何を買ったのかはもう少し待つと分かるだろう。
「ただいま帰りました」
「おかえり。晩御飯は出来ているわ。好きな時に食べといて。自分で食べた分だけで良いから後片付けしておいてくれると助かるわ」
「分かりました。ありがとうございます」
先に晩御飯を済まそう。
「奏さん。今大丈夫ですか?」
晩御飯を済ませ、風呂にも入り、後は寝るだけとなってから、奏さんに話しかけた。
「良いわよ。どうしたの?」
「記憶についての話を可能な限り詰めようかと思いまして」
「分かったわ。ちょっとだけ待ってて」
奏さんの声は、期待半分、恐怖半分と言った感じだった。
「えっと、まずは実行日についてなんですけど、お盆前でいいですか?」
「えぇ。別にいつでも構わないわ。でも、なんでその日なの?それだけ聞かせて」
今ここで話しても奏さんなら止めないだろう。
「ほぼほぼの確率で、失敗しても成功してもこれが終わると僕はまたあの中に戻る事になると思います。そして、次いつ出てこれるか分からない。なら、それまでは僕に時間をください。僕が僕でいられる短い間の数少ない我儘を許してください。消されたりしない限りでは、実行しますから」
「つまり、私の事をすると、ほぼほぼ剣に変わるってことね。なるほど。分かった」
消されるという言葉に反応したが敢えて触れなかったのは、奏さんのいい所だろう。本当、この人はいい人だ。
「口外しないでくださいね?」
「もちろんよ」
そこはきちんと分かってくれていたらしい。
「それでは、続けましょう。奏さん。貴女に用意しておいてほしいものがあります」
「何を用意しておけばいいの?」
「容量は問いません。USBメモリを用意しておいてください。僕の方でも用意してありますが、僕のと対象者のがないと成功しないので」
「分かったわ。それで、一つ聞かせて」
「どうぞ?」
特に聞くことはないはずだ。
「本当に
あぁ。そういう事か。つまり、
「旦那さん、もしくは親しい人の分があれば余計に成功率が上がるのかという事ですか?」
「そうね」
その質問は考えていなかった。
「上がるかも知れません。が、オススメはしません」
「なんで?」
「人の評価と、自分の自己評価は必ず同じではありませんし、更に言うと、その人のイメージの方が強い場合があります。もし、それで失敗すると、最低限のバックの人格の形成が失敗するかもしれません。なので、オススメはしません」
「なるほど。そういう事をするのね」
流石奏さん。僕のやる事に気付かれた。
「えぇ。そうです。なので、オススメしません」
「分かった」
「今日はこれだけですね。他は明日以降でいいですか?」
「えぇ。もちろん」
明日にならないと、沙奈江さんがどうするか分からない。これ以上の話を進めるのは危険だ。
「それでは、おやすみなさい」
「おやすみ」
僕は
そして、ある意味重大な日を迎えた。
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