第27話 はじめて?
「初めまして。我妻聡夫です。妹から聞いていると思う坂之上剣君とは別の人格です。いきなり呼び出してしまいすみません」
「はぁ……初めまして……?神橋沙奈江です」
僕は沙奈江さんに会うために秋刀魚公園に呼び出していた。
「それでは、話を始めましょうか」
沙奈江さんと会うと、近くのコーヒー豆が店の名前に入っているチェーン店に移動した。
「最初に、妹のした事についてですが、アレは完全にこちらに非があります。申し訳ありませんでした。それと、妹が言っていた隷属関係の話も全て水に流してください。もし、妹が駄々をこねましたら、普通に兄がもういいと言っていたと言っていただければ納得しますから」
「は、はぁ……」
「ここまでで何かありますか?」
ここで躓いたまま進めると余計に話がややこしくなる。それだけは避けたい。
「えっと……貴方はどういう関係の人ですか?」
「ややこしいので、簡単に言いますが、剣君は二重人格者です。そして、そのもう1人の人格が僕です。それで理解できますか?」
「なるほど。そういう事ですか」
納得したようだ。それじゃあ、本題に入ろう。
「それでは、本題に入らせていただきます」
沙奈江さんが緊張している。
「貴女の記憶を取り戻せるとすれば、取り戻したいですか?」
「へ?」
そんな驚かれてるような事を言っただろうか。ただ、希望を聞きたかったんだが。
「もう1度聞きます。貴女は記憶を取り戻したいですか?」
今度は真剣な表情で考えている。多分、これが本当ならチャンスだと思っているのだろう。
「戻るなら、戻してほしいですよ……でも、無理なんです……妹さんの前で少し戻ってから、何度も戻そうと努力しました。SNSなどの履歴を見て戻れとも思ってました。ですが、戻りませんでした……だから、無理なんです……」
「そうですか」
戻そうと努力した事、戻ってほしいと願っていたことはよく分かります。でも、足りない。
「本当に戻したいですか?」
「だから、戻せるなら戻ってほしいと言ってるじゃないですか……」
諦められると戻せるものも戻せない。
「なら、戻しましょうか?」
「へ?」
今度は希望が戻ってきた目になった。このままいけば、
「戻せます。もちろん、すぐにとは行きませんけど」
「本当ですか!?」
戻せる。
「なら、また明日、午後5時にここに来てください。1晩じっくり考えて、それでも戻したいなら再びここで会いましょう。来なくても別に構いませんから」
それだけ言って、僕はその場を立ち去った。
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