第26話 悪魔、聡夫、我妻
『さて。今日はどんな要件で?必要じゃないと判断すれば即出て行くから。俺もそんなに暇じゃないし』
「はぁ〜。要件ぐらい分かってるくせに。言わせるの?」
『訪ねてきた方はそっちだろ?なら、そっちが言うのが普通じゃないか?それとも、出て行こうか?』
「はいはい。分かりましたよ。言えばいいんでしょ言えば」
思っていたよりも急かしてくる。相当焦っているようだ。忙しくないのは確認済みなのに。
「あの手紙を寄越したのお前だろ?」
『そうとも言えるし、違うとも言える』
やっぱり。字はコイツのなのに、内容は剣君が書いたとしか思えない物だった。まぁ、今のでやり方が分かったけれど。
「あと、なんでずらした?」
『何を?』
「分かってるくせに」
『……』
言い返してこない。言いたくないのか?
「時間だよ。時間。確か、剣君が指定したのは午前0時ぴったりにやれと言っていた。なのに、お前達は5分ずらした。剣君が0時ぴったりを指示した意図を理解せずに。何故だ?」
『さぁな。俺が知る事じゃない』
逃がさない。
「理由ぐらいいくらでも思いつくぞ?例えば……我妻千代子に逃げるよう連絡する為に5分使ったとかな」
『我妻千代子ってお前の母親だろ?そんなの名前ぐらいしか知らねーよ』
「いやいや。他にも思いつくぞ?別に我妻千代子じゃなくていい。我妻家関係者ですぐに我妻千代子に連絡が行く奴でもいい。我妻千代子の夫の
『根本的な事を話し合おう。まず、人間がその情報を教えられて、5分以内に逃げれると思うか?』
「普通の人間なら無理だな。だが、我妻千代子は可能だ」
『……』
悪魔の顔が余計厳しい物になった。そこを知れば全てを知られると思っているのだろう。だけど、僕の心には余裕が出来ている。ここまでの話した内容はほぼ全て本当だろう。なら、もう種も仕掛けも知っている。さぁ、暴き始めようか。警察が動けない状態で、犯人を割り出し、僕の誘拐事件を解決し、我妻家の最大の、唯一知れなかった秘密を。
「つー事で、忘れるなよ?剣君は何も知らないけど、僕は全てを知っている。場合によっては剣君に教えるのも躊躇わない」
謎を全て解き明かし、悪魔は燃え尽きかけている。
「邪魔だけはするなよ?じゃあな。今度来る時は剣君だといいな」
一方的に言葉を投げつけ、僕は次に会わなければならない人に会いに行った。
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