第29話 予定外
この日は何故か忙しかった。朝から奏さんが稽古を付けると言い出し、我妻家で一番強い人と武術の稽古をし、朝食後には奏さんの夫の
そして、そのフラグは予期せぬ事態で見事他のフラグと共に回収された。
あの後も、色々と手伝わされたが、5分遅れで着いた。あんなに用事を押し付けられたのに、5分遅れで着いた事は賞賛に値してほしい。
だが、その後閉店時間まで待っていても、沙奈江さんは現れなかった。
翌朝、沙奈江さんからメールが届いているのに気付いた。受信時間は午前3時38分。常識を疑うレベルの時間だ。そんな人じゃないはずなのに。
内容を確認すると、何かを打ち損ねた文字が並んでいてまるで誘拐されて、犯人の目を盗んで送られてきたみたいに。本当、フラグ乱立とはこの事ではないかと疑ってしまう。
と、その時。誘拐されているかもしれない沙奈江さんから電話がかかってきた。
「もしもし?何の用ですか?」
『お前が坂之上剣だな?』
本当、こういうフラグの回収だけは何で早いんだろうか。
「だったら、なんです?」
『お前の彼女は誘拐させてもらった。返してほしくば金を用意しろ』
ドラマとかでよく聞くセリフだ。僕に電話してきた事以外は全てテンプレだ。
「いくつか聞きつつ、訂正を。まず最初に、僕と沙奈江さんは付き合ってないですよ?」
『へ?』
「それと、沙奈江さんの家に電話しても親が出ないのは当然ですよ?」
『マジで?』
「それに、学生に金をたかるなんてダサいですね」
『うるせぇ!金持ってんのは分かってんだよ!!』
「それと、沙奈江さんは無事ですよね?」
『そりゃな』
「最後に、警察に連絡してもいいですよね?別に止められませんでしたし」
『そこは普通、電話しないだろ。というか、電話するなと言っても、するでしょ』
「さて、今までの話で、いくつ嘘があったでしょう?」
『知るか!!恋人以上の事を知ってるくせに!!何が恋人じゃないだ!!頭おかしいのか!?』
「というか、誰が根も葉もない事を吹き込んだんですか?」
『お前の妹とかいう奴だよ!』
美桜ですか。敵に回るとは。それなら、こっちも本気出しますよ?
「その人に代わってくれません?本人かどうか分かりませんし。どうせ、居るんでしょ?」
『良いだろう』
さぁ、かかってきなさい。
『もしもし?お兄ちゃん?』
美桜じゃない……!!
『まさか、私の事忘れた訳じゃないよね?』
これは嘘だと誰か言ってくれ……
『あんなに楽しい時間を過ごせたんだから』
よりにもよって僕を奴隷にしようとしていた
「要求は?」
『アンタの金全部渡しなさい。この子を助けたいならね』
「分かりました。最低限はこっちで残して、それ以外は全て渡します」
ここは要求を聞いておこう。
『もちろん、きちんと証拠に銀行手帳を写真に撮っておくこと』
「時間と場所と入れ物は?」
『紙袋に入れて17時秋刀魚公園の噴水場のベンチの一つの下に』
「分かりました。それでは」
いつまでも貴女に逆らわないと思ってたら大間違いですよ?釆香お姉さん。僕は貴女達の居る場所も、今後向かう場所も分かってるんですから。
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