第13話 国会議事堂〜我妻家本家
新幹線から降り、東京駅の近くに停まっていたタクシーに乗り、俺達は国会議事堂に到着した。
「国会議事堂なんて初めて来た……大きすぎよね……」
「取り敢えず、我妻氏に連絡してくるよ。」
そう言って、俺は皆から少し離れた場所で、手紙に書いてあったアドレスに着いたことを連絡した。
すると、即返信が返ってきた。
「はやっ。」
内容はめちゃくちゃ長い上に、必要な事は全然書かれてなかったが、簡潔にまとめると、中で待ってろとの事だった。
「中で待ってろってさ。」
「それが我妻様からの返信内容?」
「こっち着いたら分かるんだよね?なんで我妻様って呼んでるの?」
「そうだ。」
「なんで?なんでなのよ!」
俺と仏は、怒りだした沙っちゃんの言葉を聞いてないように振るいつつ、国会議事堂に入ってすぐの中央広間に向かった。
「ねぇねぇ。あの人って|外堀外務大臣(そとぼりがいむだいじん)じゃないの!?」
「声のトーンをもう少し落とそうね〜。沙っちゃん。」
俺達が中央広間で待つこと20分。怪しい目で見られ、それに耐えながらえながら、我妻氏を待ち続けていると、何人もの政治屋を見た。外務大臣、副大臣など様々な政治屋を。
「それにしても、遅いな〜。」
「そうだね〜。」
「総理大臣だから忙しいんでしょ。それより、私外堀外務大臣と話してくるね!」
「玉砕覚悟で逝ってらっしゃい。」
完全に忘れていたのが、沙っちゃんが政治に興味を持ち、将来、総理大臣になる!って言っていたことだ。もちろん、俺はそんなの無理だと思っていたし、興味があるってのも長く続かないだろうと思っていたので、これは完全な計算外だ。
「それでですね!どうして……」
あんなに興奮している沙っちゃんはもう誰にも止められない。
てか普通に話してるくね?
「剣。昨日何を聞いたのか教えてくれる?」
「……分かった。」
俺は答え合わせも兼ねて、昨日聞いたことの一部を話した。
「って事なんだけど、これって本当なのか?」
すると、仏は悲しそうな顔をし、次の瞬間にはいつもの表情で合ってることを答えてくれた。
「やっぱり、何も覚えてないんだね……いなくなった時の事も……」
「ん?今なんか言ったか?」
「ううん。何も言ってないよ。」
仏の声は弱々しくて、震え声で答えた。
仏の気持ちも分からなくはないが、呟いたことも気にならないと言えば嘘になる。
こっちはめちゃくちゃ辛い雰囲気だが、沙っちゃんは相変わらず、外堀外務大臣と談話している。多分、こっちの雰囲気には気付かないだろう。
「剣、仏、それであそこにいるのが……」
「神橋沙奈江です。」
「そう。ちゃんと3人で来てくれたのね。」
沙っちゃんはまだ気付いてないようなので呼んであげよう。さんはい、
「沙っちゃ〜ん!!」
呼んであげると、沙っちゃんは外堀外務大臣にお礼を言ってこっちに向かってきた。どうやら、相当向こうも楽しかったのか、互いにいい表情をしている気がする。
「お待たせしちゃってスミマセン。神橋沙奈江です。」
「はじめまして。現内閣総理大臣兼、坂之上剣と名乗ってるこの子、我妻聡夫の母親でもある我妻千代子です。いつも聡夫がお世話になってます。」
「いえいえ。こちらこそ、いつも聡夫君にお世話になっております……ってえぇぇぇぇぇ!!」
「沙っちゃん気付くの遅いよ?」
「えっと、どういう事?剣君の本当の母親が我妻総理大臣!?」
「そうらしい。」
「そうらしいって。剣君がなんで知らないような口ぶりなの!?訳分かんないよ!!」
「我妻様。やはり今のタイミングで言うべきことではないのでは?」
「そうね。私も今そう思ったわ。」
「もう誰を信じたらいいか分からなくなった!!訳分かんなすぎよ!!」
「もう誰でもいいから止めて〜!!」
閑話休題
「それで。剣君はホントに何も覚えてないの?」
「だから、何回もそう言ってるじゃん。」
叫んだ後、巡回で近くにいた警備員さんが、取り敢えず沙っちゃんをなだめ、俺は正座させられ、そして、一つ一つの事柄を整理することにした。
「でも、なんで教えてくれなかったのよ?」
「そりゃ、覚えてもないし、確証がある訳でもないのに話して信じれると思う?」
「うっ……」
そりゃ、誰でもそうだろう。
「まさかとは思うけど、他にも何か隠してたりしないよね?」
沙っちゃんは怖い顔で俺に威嚇してきた。
「あるっちゃあるけど、移動してからでいい?」
その提案に、仏と我妻氏が賛成の意を唱えてくれた。
「それじゃあ、このリムジンで行きましょうか。目的地は、我妻家本家だしね。」
昨日所は別荘らしい。俺が坂之上家に引き取られてすぐに建てられたものらしいが、俺はそんな事知らなかった。まぁ、家から結構な距離があるから、知らないっちゃ知らないけど。
俺達はリムジンに乗り込み、俺と仏は情報の共有を、我妻氏と沙っちゃんは俺の話で意気投合していた。
そんな平穏な空気が流れていて、そのまま続けばと思い出した頃、ある人物の発言により、その空気は跡形もなく吹き飛んだ。
その発言とは……
「そう言えばさぁ、沙奈江ちゃんって聡夫とホト君と、どっちが好きなの?もちろん、恋愛的な意味で。」
「「ぶっ!!」」
俺と仏は口の中に含んでいた飲み物を吐き、沙っちゃんは完全フリーズしていた。……今キィッタッネとか言ったヤツ出てこい。
そして、言った本人なのだが、俺の方に向いてやってやったぜ!!とドヤ顔を決めていた。顔近づけんな。おい。
「仏は。流石にあの顔にキレていいか?」
「落ち着けって。あの顔は本気でも、質問自体はからかい半分だろうからさ。多分。」
多分?んなもん信じられるか!!
「本気で聞いて、思いっきりからかうつもりでドヤ顔したのに。残念。」
その言葉に怒りが爆発してしまった。
「仏。分かっちゃいると思うが、止めるなよ?」
「お好きにどうぞ。」
仏が止めないと誓ってくれたから、俺は本気で我妻をこのリムジンで半殺しにする事ができる。学校で常備しているカッターナイフなども護身用のクナイもあるから、いけるだろう。
装備を確認し、俺は最初は絶対殴ると決めていたので、渾身の右ストレートを放つ。
その右ストレートは我妻の顔にぐんぐんと吸い込まれていき、回避不可、もう当たると思ったその時だ。僅かに我妻が目を見開いたように見え、次の瞬間……
「なんでだ。あれは完全に当たったはずなのに……」
なんと、飲み物吐き出した時に戻っていたのだ。
(一体何が起こったんだ?夢なのか?いや、もっとこの現象を言い表す言葉があるはずだ。)
俺は我妻を睨みながら、考えていたが、運転手のもうすぐで着くという声で、首を横に振り、考えるのを止めた。
だが、俺は何も見えてなかった。この時、我妻の口角が上がっていた事、そして、ここで考えるのを止めた事への後悔をするのを。
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