第12話 電車の中で
国会に行く日、残念な事に雨が降っていた。
「こんな日に行きたくねーな。」
普通、大雨洪水警報が発令された日に外で遊びたいなんて奴はいないだろ。
だけど、俺は行かなくてはならない。親を問い詰めても明かされないなら、全てを知る。ただそれだけの為に行く。理由は十分すぎる。
駅に着くと、仏が俺を探していた。
「おっす。」
「剣!!遅い!!もう電車来るよ!?」
「うっそ~ん。」
近くにある公衆時計を見てみると、予約している特急電車が間もなく到着、出発する時間になっていた。
「剣君。早く。」
「お、おぅ?」
「流石にまずいよ!!剣!!」
「え?なんで沙っちゃんが?なんでいるの!?」
「電車の中で話すからさっさと来い!!」
めちゃくちゃ急かされ、俺たちは電車に乗り込んだ。
「それじゃあ、説明してもらおうか。」
電車が発車し、しばらくしてから、俺は二人に問い詰め始めた。
「その話は私から。」
仏が話すものだと思っていたから、このことに少し驚きを覚えてしまう。
「昨日の夜、8時ごろかな。私のSNSにね、DM(ダイレクトメッセージ)がきたの。差出人は、『我妻千代子』。現総理大臣よ。公式マークが付いてたから、多分本物ね。その内容が、」
「今日から俺たちに同行するって事か。」
「えぇ、その通りよ。学校への手回しも完璧だったし、ホント怖いわ、なんで呼び出したかも教えてくれないわで本当に行っていいのか躊躇った。でも、折角だから来たってわけ。もちろん、剣君に電話したんだけど、留守電につながれて、話せなかったって訳よ。」
「ゴメンナサイ。その時気絶してました。」
多分、姉らしき人のせいだろう。そのせいだな。確実に!!
「気絶って。一体何があったんだよ。」
「嫌な事を思い出させようとするな、仏。」
「私も気になるんだけどな~。」
「話を戻そう、戻せ、戻させていただきます。」
閑話休題
「その後、仏君に事情を話して、集合場所とかを聞いて、ここに至るってわけ。何か質問ある?」
「なるほど。てか、俺にもDMかなんか欲しかったな~。」
「ごめんごめん。その後準備したら寝落ちしちゃって。」
「まぁ、いいけど。」
「それでだ、仏。お前、昨日の俺の事我妻氏から何か聞いてるのか?」
「え~っとね、」
『次は~新大阪~新大阪~……』
「乗り換えてから話すよ。」
「チッ。いいタイミングで(ご都合主義が)」
「その文句は俺じゃなくて、天に向けて言ってくれ。」
「ちなみに、後どれぐらいで着くの?」
「次新幹線に乗って東京まで3時間ぐらいかな。」
「結構長いね~。」
「しゃーない。特急で1時間以上、新幹線で3時間近くかかれば流石に長いよ。」
そんなこんなで新大阪に着き、俺たちは降りて、駅弁を買い、11時40分発のひかりに乗り込んだ。
「それで?何か聞いてるのか?」
「我妻様からは何も聞いてないよ?」
「我妻様?なんでそんな呼び方?それに剣君も、仏君も何か隠してるよね?お姉さんに教えなさい?」
「沙っちゃん、少し黙ってて。あっち着けば嫌でも分かるから。」
「剣君のケチ。」
沙っちゃんが拗ねた。でも、それがまた一段と可愛い。
「剣~。顔、顔。」
おっと、つい顔に出ていたか。いかんいかん。
「まぁ、何を聞いたかは後で父上にでも聞いとくよ。」
と、沙っちゃん見ると、駅弁の食べた後の箱を膝の上に乗せて寝ている。
「何もかも早いな~。」
「いやいや、早過ぎんだろ。」
「俺達も飯食って、寝るか。」
「そうだな。」
そして、俺たちは飯を食って、眠りについた。
起きたのは、東京に着く3分までだったのは、また別の話?
「富士山見れなかったじゃない!!起こしてよ!!」
「ごめんごめん。帰り見れたら良しで。」
「見れなかったら、その首もらうから。」
初めて見る沙っちゃんの怖さに、俺と仏は帰りこそ見れるようにと願いつつ、国会議事堂に向かうのだった。
俺と仏の死亡フラグじゃないからな!!
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