第4話 夜宵12歳。初めての体験

 俺は妹の夜宵やよいのパンツの匂いを嗅いだまま動けなかった。後ろには確実に夜宵が居るのがわかる。どうする!どうする!俺は誤魔化そうとこころみた。

 まずはベッドの下に衣装ケースをしまい、そして嗅いでいたパンツを片手に持ち顔だけ夜宵の方へ振り向き答えた。

「いや~今日は暑いな。夜宵の部屋の空気入れ替えようと窓開けに来てたんだ」

 これで誤魔化せるかわからない。イブキは夜宵の反応を見る。


「ふ~ん。そんなに暑いかな?」

 そう言うと夜宵は机の方へ歩き出した。俺は体勢を夜宵に合わせて入れ替えた。

「あった。あった」

 夜宵はそう言うと机の上の『私のお兄ちゃんは変態ですが私も変態です』と書かれた作文を二つ折りにしてカバンにしまう。

 夜宵。お前は明日ヒーローだ!まあ別な意味で注目度NO1だけどな。と心の中で思い、イブキはニタついた。

 そして、その隙にパンツをポケットへ入れこんだイブキ。


「お兄ちゃんいつまでいるの?私、着替えるから部屋でてよ」

「ああ、すまん」

 イブキは夜宵の部屋を出ていき自室へと戻る。

「助かったのか?けどアイツ着替えって言ったよな・・・ヤバイ気がする」


 予感的中。イブキの部屋の扉がノックされ開けると恥ずかしそうに顔を赤くした夜宵が立っていた。

「お兄ちゃん・・・私の下着見たでしょ。ケースの中ぐちゃぐちゃだったよ」

「いや~その・・・スマン!ちょいと見えたから興味本位で中を見た」

「もう兄妹なんだよ~。どうして妹の下着に興味もつかな~」

「スマン!男の本能だ」

「お兄ちゃんの変態!それと・・・」

 夜宵は手の平を上にして両手を俺の前に差し出した。顔が真っ赤だ。

「何だそれは?」

「もう!下着。持ってるでしょ。だして」

「あースマン!お前が来てあわててポケットに入れてた」

 そう言うとイブキはポケットから夜宵のパンツを取り出して渡した。


「お兄ちゃん・・・なんでココ濡れてるの・・・かな?」

 パンツの大事な部分が匂いを嗅いだ時に垂らしたヨダレで濡れていた。

「いや~暑いだろ。汗拭いたんだよ」

 俺って冴えてるな!とことん嘘ついて誤魔化すぞ!

「ふ~ん汗なんだ~。て言うと思うの変態お兄ちゃん。ココだけ濡れてるなんておかしいじゃない。何したの?正直に言って!」

 妹の怒鳴り声で終末の鐘の音を聞いたイブキはポツリとつぶやいた。

「匂いを嗅いだ・・・」

 それを聞いた夜宵は真っ赤になり。しばし二人の間に沈黙が訪れる。


 沈黙を破り先に口を開いたのは夜宵だった。

「今回だけだからね・・・」

 ビンタぐらい覚悟していたイブキは予想だにしない夜宵の言葉に驚いた。

 変態ってわかってるから許してくれたのか?でも一言謝っておくか。

「ああ。もうしないスマン・・・」

 夜宵は兄の言葉を聞くと理由を問い詰めてきた。

 それに対して覚悟を決めた俺は夜宵にエッチな事は省略して少女の事を話した。


「私も会ってみたい」

 そう言うかも知れないとは思っていたイブキ。合わせないと納得しないだろうと承諾した。夜宵は自分の部屋からドレスを持ってきてイブキのベッドに座る。

 夜宵のドレスは以前、俺のドレスを欲しがったので別に買ってあげた物だ。カスタマイズは俺と同じようにしてある。


「お兄ちゃんと直結するの初めてだよね?ドキドキしてきた」

「兄ちゃんが初体験で悪いな。ちょっと待ってろよ。直結コード探すから」

 イブキはテレビの前に置いてある本やゲーム箱の辺りを探す。

「確かこの辺に置いてたはずだが・・・あった!」

 テレビの片隅からコードを拾い上げると夜宵が座っているベッドの隣にイブキは座った。

「それじゃ繋ぐぞ。準備はいいか」

「いつでもいいよ」

 夜宵のドレスと俺のドレスを直結コードで繋いだ。


 ベッドに並んで横たわる二人。イブキはつぶやいた。

『リンク・スタート』

 ロアが待つ仮想空間にイブキと夜宵はダイブした。


「あれ?まただ!なんで景色が違うんだ?」

「どうしたの?お兄ちゃん」

 イブキがダイブした先は以前きた時の森の景色ではない。そこは見渡す限りの砂。砂漠だった。

 不思議そうに俺を見つめる夜宵に以前の事を説明した。

「そう言う夢じゃないの?」

「いや違うんだ。ロアは森で待つと言った。設定されている夢なら森に居なくてはおかしい。それに始めの数ヶ月は草原だった」

「そうなんだ・・・なんかおかしいね。それにしてもココ暑いよ。お兄ちゃん」


 照りつける太陽。時折、吹く熱風。何も無い砂漠。確かに暑い。

「少し涼しい服装に着替えるか」

 俺はコンソールを開いて素材から半袖半ズボンの服装を選択、着脱と転送ボタンを押して着替えた。

「あっ、お兄ちゃんだけずるい!わたしも」

 そう言うと夜宵は素材から何かを選択している。そして俺と同じ様に着脱と転送を押して着替えた。

「お前な~」

「な~に?お兄ちゃん。どうスクール水着だけど暑いからいいよね」

 そう言った夜宵だけど俺が言いたいのはスクール水着ではない!『着脱だ!』

 ロアの時は見ないようにしたけど、夜宵は俺の目の前で着脱した。

 水色のブラとパンツが丸見え状態だ。夜宵は暑さが気になって着脱で下着姿になるのを忘れているのだろう。

 まあ、それはそれで俺としては構わないけど、成長具合みれたしな。


「帽子もかぶっておけよ。頭やられるぞ」

 俺も夜宵も素材から帽子を装着した。さて、これからどうするか。ココにロアがいるとは思うけど砂漠だ。どちらへ行けばよいやら。これが設定上の夢空間ならエリアは広くは無いだろう。適当に歩いてみるか。

「夜宵、こちらに歩いてロア探すぞ」

「え~この暑い中、歩くの~」

 と言いながら俺の後を渋々ついて来る夜宵。すぐにロアに会えればいいけど。と思った俺の考えは甘かった。全く誰も見つからない。


「お兄ちゃんもうだめ~。暑いし疲れたよ~」

「ああ、俺も疲れたな。そこの岩陰で少し休むか」

 丁度、近くに休めそうな岩があるので岩陰に入り休憩することにした。

 俺はこの砂漠空間はリアルの時の様に暑さを感じさせると思った。

 暑いと感じるのは錯覚だ。実際は暑くはなく脳がそう思わせてるだけだと自分に言い聞かせるイブキ。だがその考えも揺らぐほどの暑さ。

 ここリアルじゃないのか?そう思いたくなる。


「ねえ、お兄ちゃんあそこ見て。誰か居るよ」

 イブキはロアかも知れないと夜宵が言う方向を見た。砂丘の上の方に人影が見える。まだ距離があるせいかロアとは確認できない。

「夜宵あそこまでいくぞ」

 イブキと夜宵は人影のある方向へ歩き出した。砂丘を越えた先にテントが見えた。近くにはラクダが繋いである。テントまで来たけど人影はない。

「中にいるのかな?」

 そう思い中を覗いて声をかける。

「あの~すみません。だれかいますか?」

「キャッ!・・・誰ですか?」

 と言った女性にこっちが驚いた。ロアでは無い。年の頃は俺と同じくらいだろうか、白いターバンを頭に巻き、インドの踊り子さんをイメージするような露出が多い服装。褐色の肌をした女性がコチラの素性をたずねている。


「怪しい者じゃありません。いきなりスミマセンでした。人を探しているんです。それで確認の為にテントの中を見ました」

 そう言ってはみたけど女性はいかにも怪しいと見ている。

 その原因が後ろにいた!

「お兄ちゃん、この人がロアちゃん?」

 後ろからスク水で顔を出す夜宵。砂漠のド真ん中でコイツの格好が怪しいんだ!

「いや違う。別の人だ。多分NPCだろう」

 イブキの言葉を聞いた女性は驚くことを言った。

「あの~NPCてなんですか?」

「えっ?」


 まただ!ロアの時と同じだ。NPCがNPCてなんですか?などいうはずがない!どうなってるんだ?こうなったらNPC、もとい設定上の人物か確かめてやる!

 イブキは女性ににじり寄った。

「な、なにするんですか!こちらに来ないでください!」

 女性は嫌がっているけど俺はお構いなしに行動に出た。

「プニュ・プニュ」

 女性の胸をもみ続けるイブキ。いきなりの行動で放心し、もまれ続ける女性。


 夜宵の一言で女性は我に返る。

「お兄ちゃんなにしてるの!」

「キャ、キャーーー!バシッ・・・な、何するんですか!」

 女性に思いっきり頬を打たれたイブキ。

「痛~。あれ、やはりNPCじゃない」

「だからNPCてなんですか!いきなり胸を触るなんて失礼ですよ!」

「す、スミマセンでしたーーー!」

 イブキは地面に顔つけスーパー土下座をした。横で呆れてみている夜宵。

「もういいいですよ。許してあげます。それでNPCとは何ですか?」

 説明しても無理だろうなと俺の行為を正当化する手段をとった。


「それはですね『姉ちゃん、パットが、超多い』病と言いまして貧乳ペッタンコになる超怖い新種の病気です!胸を揉むと予防できます!」

「それは怖いですね。大丈夫かしら?まだ触ります?」

 俺の嘘を信じた女性は胸を俺の前に差し出してきた。夜宵に一喝される。

「お兄ちゃん変なこと言ったらダメだよ」

「これも円滑えんかつに進ませるためだ。多分NPCを説明してもわかんないだろう」

 と夜宵の耳元で話すイブキ。しょうがないな~と夜宵はあきらめた。

「胸はもう大丈夫です。それで人を探しているんですが、この辺りで白い服を着た長い黒髪の女の子見ませんでしたか?」


 イブキの問にしばし考えた女性は思い出したように話す。

「たぶん。あの子かしら?オアシスの辺りでそれらしい人見ましたけど」

「そのオアシスはどっちですか?」

「ココから西の方角です」

「西か~。方位磁石もないし方向がわからないな」

 俺は夜宵に聞いた。


「夜宵。西って、お日様が昇る方か?」

「それバカボン!お日様は南からだよ~。沈むのは西」

「お前もバカボンだろ!お日様、直角じゃねえか」

 そんな会話を聞いていた女性は親切にも案内を申し出てくれた。













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