第2話 この少女。無垢で危険。

 数ヶ月の間、少女がスカートめくりの事を覚えていたのには驚いた。

 結構、根に持つタイプなのか?と思うイブキ。

 でも言葉を覚えたし、これで意思疎通いしそつうができると思うけど・・・。

 俺は改めて少女に話しかけた。

「自分の名前はわかる?」

 少女はジーとしばらく俺の目を見つめ一言だけ言った。


「イブキ」

「それ俺の名前!君の名前を聞いてるの」

 少女はキョトンとして首をかしげる。何かを考えているようだ。

 そして草原にバサッと仰向あおむけで横たわり空を見つめる。

「自分の名前わからないの?それじゃ、どこからきたの?」

 俺の問に少女はまたも考えてる様子だ。そしてポツリとつぶやく。

『失われた世界』


「どこだそれは!」

 聞いた事も無い世界にイブキは叫んだ。そして考えた。

 ここ以外の世界があるのか?この子はどこからか俺のドレスへアクセスしてきてるのか?でもどうやって?外部接続は切ってあるけどな~。

 う~ん。名前が無いのも困るな。何か呼び名をつけてあげようにも・・・。


 失われた世界か~。ロスト・ワールド・・・ロワ。う~んロアでいいか。安直だが、俺はそう決めて少女に話しかける。

「ロア。君はこれからロアだ。本当の名前を思い出すまでロアと名乗るといい」

 長い黒髪に白いワンピース姿の少女を俺はそう呼ぶことにした。


 草原に寝転び空を見上げていた少女はゆっくりと起き上がる。そしてイブキの手をにぎるとニコリと微笑み喜んだ。

「ロア。ロア。名前嬉しい。イブキ」

 俺は名前を気に入ってくれて良かったと思った。これがギャルとかならダセーとか言われそうだし・・・。いや~スレて無い(純真な)女の子はいいな~。

 これは自分好みに調教。いや教育すればスッゴイ可愛い子になるかも。一度ログアウトしてドレスに睡眠教材セットするか。と言っても勉強嫌いな俺は変態ソフト以外、まともなソフトは無いけど。

 少し不純に思いながらイブキはロアに話しかける。

「ロアすぐ戻って来るから待ってて」

「うん」

 そう言うとイブキはログアウトしてリアルに帰る。


「う~ん。どこ置いたっけな。もしかして捨てたかも知れないな」

 部屋中探すけど教材のメモリーカードが見つからない。

「外部へ繋げれば勉強はできるけどハッキングやらあるから怖いしな」

 探し出せないイブキは一枚のカードを見つめる。

「こんな物しかないか」

 ドレスの差込口へカードを入れる。ドレスには睡眠学習、アート用素材、ゲームなど多用途に使えるようにカード差し込みスロットがいくつもある。書き換えの際も素材を入れたりして合成できるので便利だ。

「リンク・スタート」


 イブキは再びダイブし少女のいる仮想空間へ戻ってきた。はずだが景色が変わっている。以前の草原ではなく森のなかだ。そこにロアの姿は見当たらない。

「なんだここは!ソフトは入れ替えていないぞ?」

 ロアに言葉を教えている期間はずっと草原のままだった。そのせいか俺は草原しか無いと思っていた。なんとも奇妙だ。

 辺りを見渡すイブキ。小鳥のさえずる声は聞こえるが少女の姿はどこにも見当たらない。

「ロアはどこだ?」


 イブキは道なき森を歩きロアを探し始めた。道は無いけど雑草が生え、落ち葉が落ちているくらいだ。比較的に歩きやすい。

ザッザッ。パキッ。落ち葉の上を歩き時折、聞こえる枯れ木を踏む音。


 しばらく歩くと木々の間からキラキラときらめく水面みなもが見えてくる。どうやら泉のようだ。そして少女の楽しげな笑い声が微かに聞こえる。

「アハハ・・・ウフフ・・・」

 イブキが開けた泉の場所へでるとロアが視界に入った。泉の浅瀬で湖面をバシャバシャと音を立てながら楽しげに走り回っているロア。

イブキは初めて見るロアの楽しげな姿に見惚れて、言葉をかけずにしばらく見つめていた。


「あっ!イブキ~」

 ロアは俺に気が付くと走って来て抱きついてきた。

「待たせて悪いロア。水遊びは楽しかったか?」

「うん。ロアずーと。ずーとイブキ待ってたんだよ」

「ずっと?」

 ロアのその言葉に違和感を感じたイブキ。


 おかしいな?1時間も立っていないぞ。どういうことだ?景色が変わったことも変だ。ロアに異常は見当たらないし・・・。まあ、ロアは無事に見つかった事だし後で考えよう。さて教育を始めるか。

 コンソールパネルを開くイブキ。外部素材を選択。すると小さな可愛い女の子が姿を現した。

「ロアいいか、この女の子がお前の教育係だ。同じように真似するんだぞ」

「うん。わかった」

 そう言うとロアは女の子をジーと見つめる。教育係の女の子が話しだす。

「お兄ちゃんだーいすき!」

 それを見ていたロアは真似て口ずさむ。

「お兄ちゃんだーいすき」

「お~ロア上手に出来たな。それを俺の方を向いて言ってくれ」

 ロアはイブキの方へ向くと『お兄ちゃんだーいすき』と言った。

「感激だ!大好きなんて言葉は何年も聞いてないぞ」

 小さい時は妹も言ってたんだけどね~。これは調教、いや教育しがいがある!

 さあ次はどう来る!そう思ったイブキは少女の行動に期待する。


 教育係の女の子は話しだす。

「お兄ちゃん。お医者さんごっこしよ~」

 ロアも真似る。

「お兄ちゃん。お医者さんごっこしよ~」

 ウオーこれは甘美な響きだ!声に出せないイブキ歓喜の雄叫び。

 う~ん少し罪悪感もあるけど、これは誰もが夢見るシチュエーションだ。

 こんなのリアル妹に言えといったら打たれるし変態だからな。


 教育係の女の子は尚も続けて話しだす。

「あのね。お兄ちゃん、お腹が痛いのてくれるかな」

 そう言うと妹キャラの女の子はお腹を見せる。それを真似るロア。

「あのね。お兄ちゃん、お腹が痛いの診てくれるかな」

「ブー。こ、これは刺激が・・・」

 イブキの予想をくつがえした行動をしたロア。









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