第4話


 以上が、わたしが噂を調べに来ることになった理由の顛末だ。

 言葉にしてしまうとくだらない。予感めいたなどと言うと、余計に胡散臭いような理由だ。


「でも、悔しいけど」


 わたしは自分を過小評価していたということなのだろう。わたしの勘というのもまだまだ捨てたものではないらしい。

 しかし、となると真相を究明しないわけにはいかない。

 考えられる原因はいくつかある。

 何かの理由でもう一つの満天水族館が復活した――その場合、わたしたちが満天水族館を訪れていない、つまり一からやり直すことになるのだろうか。

 復活ではなく、ここで別の事件が起きたことによりもう一つの満天水族館が生まれた――これは、真里の魂が新しい怨念の世界に引かれて来たということだろうか。

 これまでのわたしの経験が全て、幻想だった――夢オチってヤツになるのだろう。それは考えたくない。わたしはあいつらと出会っていないことになるだろうし、事態は何も解決していない。それどころかどこからが現実かなんて判断がつくはずはない。

 どれも考えたくないが少なくとも、三つ目を考え始めるとキリがないので除外しよう。

 代わりに三つ目にするのは『それ以外』と設定した。すぐには思いつかないから、順次立てた仮説を当てはめていくことにする。


「そうなると、どちらにせよ」


 ここを一旦出て、本格的な調査は後日ということになるだろう。満天水族館と怨念の世界が繋がるのは『満月の日』と決まっている。

 そうなると今日は満月ではないので、真里の声が聞こえたのは何か歪みのようなものに過ぎず、予兆のようなものに違いない。

 仮説一、二のどちらであっても、満月の日である必要はあるだろう。月の引力が関係しているかもしれないとあいつも言っていた。もっともそれに関してわたしは半信半疑だが。するとそもそも魂というものの存在を信じるのかという議論になるが、あいにくわたしは信じている側の人間だった。おかげでパパに言いたいことが言えたのだから。

 しんみりしても仕方がない。わたしは去年とは違うのだ。今回はあいつらにも話して対策を考えておく必要がある。あらかじめ準備ができれば安全に――と言ってもまだマシというレベルかもしれないが――調査もできることだろう。

 真里が再び満天水族館に囚われているとしたら、真弓はどんな表情を浮かべるだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る