プロローグ 世界がゲームになった日5

「わ……わかった!」

クラスの奴らは半透明なメニューバーを開いて、画面をタッチしようとする。

おそらくNoを押そうとしているのだろう。

隣にいる姫路もそうしようとしているのだから。

「待て待て…。本当にイエスを押さなくていいのか?」

不気味な男はクラスのみんなを動揺させたいのか、そう言った。

何で普通に会話をしているのに化け物は襲わないんだ。

俺は中腰になって恐る恐る化け物を見る。

化け物はさっきと同じ様子である。

何かがおかしい。

もしこれがゲームの世界なら相手はAI?

俺たちをまだ敵だと認識していないから攻撃を仕掛けてこないのか。

これでYESを押した瞬間からゲームがスタートをする。

もしそうならNOを押せばいい。

これはどっちを選べばいいんだ。

心の中で葛藤が起こる。

俺は深く深呼吸をし始めた。

その後勇気を振り絞り机を強くボンと叩いて立ち上がる。

音に敏感になっているみんなは俺の方へと目をやる。

「みんな、聞いてくれ!今化け物には俺たちが見えていないと思うんだ!イエスを押したら、俺たちを敵プレイヤーとみなして攻撃してくるに違いない!」

「じゃあノーを押せばいいのか?」

「だからなんだっていうのよ!」

みんなの俺に非難する声が聞こえてくる。

「みんな、落ち着くんだ。原田君、それで何が言いたいんだ?」

学級委員の一声で文句を言っているクラスメイトたちは一気に静まり返る。

「だから……。」

「おいおい……こんな状況で責め合ってる場合じゃないだろ!隼はみんなを落ち着かせるために言おうとしたんだろうがよ」

誠は先生のように教卓の前に立ち怒った喧騒で話す。

「何でそうやって、すべて他人に任せるんだよ!自分の事は自分で決めろよ!」

学級委員も正論を押し付けられたようで何も言えないでいる。

普段は温厚な誠もこういうときばかりは人格が変わるようだ。

「誠……ありがとう」

誠は何も言わずに左右に首を振る。

脳内に直接、感情の入っていないような声が聞こえる。

「カウントダウンが始まります。10」

何のカウントダウンだ?

慌てながらメニューバーを出現させる。


Are you ready for the game?


YES or NO?


ゲームオーバーまで10秒


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