プロローグ 世界がゲームになった日2

学級委員は机の下で窮屈そうに身を潜めながらそういった。

俺はそう言われるがままにおとなしく身を屈めて机の下へと入る。

小、中学校までは身体全体がすんなりと机の下に入れたものの、高校生になって身体が成長したため頭を横にして胴体を入れるだけで精一杯になっていた。

避難訓練をした事がなければこんな適切な行動を子供だけではできないだろう。

頭を横に向けると隣の席の地味子と呼ばれる眼鏡をかけた女子が目に入った。

その眼鏡をかけた女子の名前は姫路ひめじゆう。

この子の事は小学校から知っていたが特に合う趣味も無かったため、そこまで会話はしたことがなかった。

しいて会話をしたというのなら、「シャーペン貸してください」といったことぐらいだろうか。

地味子……いや、姫路は体操座りをしながら机の脚を両手で強く掴み下を向いている。

体操座りをしているゆうの足は小刻みに揺れている。

姫路が怖がっているのを少しでも軽減させようと俺は声をどもらせながら言った。

「姫路、大丈夫か?」

顔を上げ、すぐに演技とわかるような微笑みを浮かべながら俺を見つめる。

「うん。大丈夫だよ」

ゆうの机の脚を握る手、体操座りをした足は両方とも震えている。

この子にグラウンドから出てきた意味のわからない塔の事を話して良いのだろうか。

いや、そんな事を話してしまえば余計にゆうが怯えてしまうに違いない。

「大丈夫だから心配するなよ」

俺がそう言うと姫路の表情に少し余裕が見えた。

そして揺れは何もなかったかのように少しずつ収まっていった。

ピーンポーンパーンポーン。

この避難訓練などで鳴る音に続き、校内放送が始まる。

「校内から出て安全な所に行ってください!!繰り返します!校内から出て安全な所に行ってください!」

いつもならまったりとして落ち着いた声で話してくれる放送委員だが今日は早口であった。

放送は切れておらず放送室内の会話がスピーカーから聞こえる。

「早く逃げるぞ!放送なんか良いから来い!」

これは一体どういうことなんだ。

塔が出現しなかったら普通の震災ということになる。

だがここが揺れたのは塔が出現したのとほとんど同じ時間だ。

この揺れは塔のなんらかと関係があるはず。

その前にこれはどうすればいい?

窮屈な態勢から楽の態勢になるべくこの机の下から出る。

この訳のわからない状況に歓喜の声を上げる者。

涙をぽろぽろとこぼして地球の終わりが来たような顔をする女子。

冷静に携帯で今の置かれている状況を調べ始める者。

この出来事に対しての対応は人それぞれであった。

大半の女子が腰を抜かしているのか机の下から出れていない様子だった。

隣の席の姫路も机の下で身を潜めている。

俺は右手を姫路に向かって差し出す。

姫路は俺の右手を両手でしっかり握った。

力尽くで両手を引っ張り、姫路を立たせる。

「あ……ありがとう。隼くんは優しいんだね」

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