V for Vanishing
We shall go on to the end 1
ジェーンがレインメーカーを連れ去った後、生き残ったPMMCたちが私たちを助けに来た。エッジが状況を整理して説明。その後、私たちを連れて下のキャンプまで戻っていった。
キャンプに戻ると、PMMCに呼び止められた。
「アナスタシアという者は、いるか?」
「私だけど?」
「俺たちのクライアントから、お前宛てに荷物が届いている。それと、部屋に機材を備えて提供するように、とのことだ。全部整えたから、この先の部屋に行ってくれ」
そう言われて、私たち四人はその部屋に入った。
「なにこれ…… こんなすごいもの、どうして……」
部屋には、私たちが目にするようなデスクトップのコンピュータよりはるかに大きな何かがあった。それに何に使うのか、私には良く分からないものも多くある。
「手紙があるぞ。差出人は、ブラッディ・サン」
中身は、こう。
追加料金をお支払いする。
今、必要と思うものを揃えた。
好きに使ってくれ。
木箱の中身は慎重に使うように。
ブラッディ・サン
「木箱って、それか?」
ジャクリーンが部屋の隅にあった木箱を開ける。
「なんだこれ? 金塊か?」
かなり大きなものが幾つか入っていた。相当な金額になるだろう。
「どう考えても、怪しいな。だが、今は目の前の事を追うしかない」
私がそう言うと、三人は賛同してくれた。
アーニャは部屋にあるコンピュータなどを調べて、起動させた。
どうやら、アーニャが使いやすいようにセットアップされているようだ。本人が言うには、あまりにも私のやり方である、と。
「ところで、アーニャ。レインメーカーから何か渡されなかったか? それが、ジェーンを止める手掛かりのことなんじゃないのか?」
「うん。きっと、そうだよ」
「渡されたのはこれ」
メモ用紙に書かれた文字と、最後に何やら妙なものが書かれている。
「『Vを見つけろ』と、何だ最後のは? そもそもVって何なんだ?」
「私も分からない。でも、ちょっと待ってね」
アーニャは、巨大なコンピュータと機材を操作して、メモ用紙をスキャナーのようなものにセットした。
「この最後に書かれているものは、私とレインメーカーが作った、秘密の通信手段なんだ。QRコードにちょっと手を加えたもので、インクの濃淡で三次元の情報を組み込めるようにしたんだ。それ以外にもいろいろ組み込んであるんだけど、この部分だけで相当な情報量が入っているんだ」
アーニャは読み込みを開始した。機材が動き、ソフトウェアが読み込みを終えると、パスワードの入力を要求する画面が表示された。
「パスワード…… それも、聞いて――」
アーニャは手のひらで私に黙るように合図した。良く分からないまま口を閉じる。
数秒の静寂の後、アーニャが言った。
「Vを見つけろ」
アーニャの言葉で画面に、承認された旨のメッセージが表示され、様々なものが画面内で動き始めた。何だったんだ? 今のは。
「これも、二人で考えたんだ。人間の意外性を突いたセキュリティ。時間を稼ぐ程度だけどね。キーボードからの入力画面を表示させておいて、実はマイクでの音声入力っていうもの」
私は、心底感心した。
アーニャは情報の処理に集中している。私とジャクリーンはしばらく黙って、体を休めることにした。
「わかったよ。大体の事は」
「教えてくれ」
アーニャの説明はこんな感じだった。
あのメモ用紙に書いてあったもので、厳重なセキュリティで守られた、レインメーカーの外部ストレージにアクセスすることが出来た。
そこには、彼女の様々な研究成果、途中のものや、アーニャと共同で開発しているものもあったという。
その中に、Vというものに関するものがあった。
Vというのは人の名前のようだ。
そいつは、世界各地を転々としている。だが、いくつか拠点となる場所があるようで、その拠点の大まかな位置が記録されていた。そして、拠点間の移動にはパターンとなるものが巧妙に隠されている。その解読方法もあり、今、Vがいるであろう場所を絞り込むことが出来た。そこへたどり着くための手続きも書かれている。
今、Vがいるのは、海を越えた先の大陸。急いで移動したいが、手段が無い。どうにか、目立たないように飛行機に乗るほかないが……
その時、ドアがノックされた。入ってきたのはエッジ。
「今、上から指令が来た。お前たちを乗せる輸送機が麓の空港に泊まっている。そこまで、お前たちとこの部屋にあるものを運ぶように言われた。輸送機のパイロットがその後の事を引き継ぐそうだ」
なんとまあ、至れり尽くせりなことか。ブラッディ・サンは何を企んでる?
どこで見ている? 何を見ている? 何を知っているんだ……
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