Science Energy
ジェーンの基地の近くまで来た。
私は、PMMCに先行して基地に潜り込み、状況を伝えることを提案し、了承された。エッジを介して伝える。周囲に敵がいるだろうが、さっきの戦闘で統制が乱れているだろうから、大部隊への攻撃はしてこないと、私たちは予測している。だが、彼等の知らない力がある。私たちのような、特殊能力とでも言うべき力を持つ存在。エリナのウォルンクァの力は、理解できるかもしれないが、あの装甲車なんかを破壊した力は直接見ないと分からないだろう。エッジに私の所見を伝えておくことにした。
アンフィスバエナの力は、地面を掘り進むこと。そして、その影響が及ぶ大地を操ることが出来る。大型の車両などが通る道を陥没させて、そこを襲撃したのだろう。そして、破壊の方法は刀による斬撃。セシリアは、近接戦闘が得意だった。自分の名前にある力を強くしていったのだろう。大地の力を感じつつそれを剣術へ載せていく。腕で振るう刀、それを生み出すのは足の力。足の下にある大地の力。大地と一体となり、その中にまで潜り込む。その果ての斬撃だ。今、私たちの脅威と見るべきは、こいつだろう。
ここからだと、あのラボと思しき建物が潜入しやすい。レインメーカーもあそこに居るなら、好都合だ。アーニャと一緒にラボに潜り込むことにした。敵の本拠地だと言うのに、警備が手薄に感じる。静かすぎるように思うが、今は先へ進むことにする。
建物の中に入った。ここもまるで人がいない。
「アーニャ、レインメーカーの手掛かりみたいなものは無いか?」
「探してみる。でも、何だかわかる。このラボの雰囲気、彼女のものだよ。きっと」
そう言って、アーニャは棚を漁ったり、コンピュータを起動したりして行く。私も建物の部屋を回ることにする。隣の部屋に行こうとした時だ。私は何かを感じて身構えた。次の瞬間、壁が破壊され、そこから何かが私に向かって飛んできた。そして、ナイフを突き出した。
「ぐぬ……!」
私は、そいつの右手を押さえて踏みとどまる。だが、ものすごい力だ。すぐに押し切られてしまうだろう。そう思った時、そいつは、右の脇腹にあるナイフを抜き、左手で、斬りつけてきた。私は、手を離し、相手から押される力で後ろに飛んで逃げた。
「エメリア!」
アーニャが叫ぶ。
「アーニャ! どこかへ隠れろ!」
アーニャは身を伏せた。私は、襲撃者を見る。両手にナイフ、よく見るとまだ体に装備されているものがある。右手、左手、右足、左足、それぞれにナイフが鞘に納められたまま装着されている。両脇腹のものは、両手に握られている。ナイフが六本か。少し考え、私は銃を抜いて撃った。そいつは、こっちに踏み出しながら、弾を避け、私に向かってナイフで斬りつける。私は、右手でナイフを抜き、突き出されたナイフを払う。だが、相手の力の方が強く、つばぜり合いのまま押される。左手の銃で撃とうとすると、もう一本のナイフで払われ、弾は別の方向へ飛んでいく。
「レインメーカーは、どこだ……」
そいつが喋った。声が高い。女か?
私は、右腕の力を緩めるとともに、体を回転させ、相手を投げ飛ばした。こいつは次に何をしてくる。そう思い、目に力を込めてにらみつける。そして私は動き出す。
相手は着地と同時に、右手のナイフを私に向けて投げ、左足のナイフを抜いて私に向かってくる。私は銃を撃ち、ナイフを弾く。それが上に弾かれるように。私は銃を納め、ジャンプして、左手でそれを掴み、両手にナイフを持って相手に向かい合う。四本の刃が一点で火花を散らした。
「……エメリアか?」
「何?」
私の名前を呼ばれて反応してしまった。そしてその女は私から距離を取った。私は、顔を覗き込む。
「……ジャクリーンか?」
その女は頷いて答えた
「そうだ。私だよ」
私はナイフを納め、彼女もナイフを納めた。
「どうしてここに? それに何だか雰囲気が変わったな」
「私は、レインメーカーを取り戻しに来たんだ。彼女を守るのが私の役目だと思っていたのに、ジェーンたちに攫われた。だからここまで来た」
「よく一人で、それも、ナイフだけで来れたな…… その体、ハイドローグか?」
「ああ、全身だ」
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