The Rising Walker

 私とジャクリーンは、内部へ突入した。走っていると四方から敵が迫ってきた。やはり中にも相当多くの兵士を配置している。私は反転して後方からくる兵士たちに銃を撃つ。

 三発撃って、三発とも命中。急所を狙ったつもりだが、全員生きている。倒れた敵が銃を持つ手で私を狙う。もう一発撃ってとどめを刺した。

「エメリア、走れ!」

「ああ!」

 前の敵はジャクリーンが薙ぎ払っていた。右手にナイフ、左手にアンフィスバエナの刀を持って戦っている。喰らった蛇の力を手に入れたガルーダか。でも、ジャクリーンはそんなことを望んじゃいないだろうな……


 左前方から、サブマシンガンを撃ちながら敵が迫ってくる。ジャクリーンはナイフを投げ、敵に命中させる。一気に距離を詰め、ナイフを抜くき、刀で胴を薙ぐ。振り向くと同時に真後ろの敵に向かってナイフを投げ、敵の胸に突き刺す。私が、銃でとどめを刺し、ナイフを抜いてジャクリーンに投げる。ジャクリーンはジャンプしてから空中でナイフを掴み、そのまま、正面の敵に投げ、刀を両手で持って真上から斬りつける。着地したジャクリーンに迫る敵を私が撃つ。

「弾は、足りてるか!?」

「ああ、大丈夫だ!」

 実は大丈夫じゃない。私が使っているグロック17は、私のヴェノムとハイドローグを織り交ぜた特別仕様で、弾も特別製だ。弾倉は今装填したもので最後。あと17発。

 危険極まりないが、これも狙いなんだ。あいつと戦うためのな。


 敵を倒しながら、どうにか進むと前方に階段が見えた。そして上から光が差している。

「あの先か!?」

「そうだ、あそこまで行く!」

「分かった!」

 ジャクリーンは両手の刃物に加え、蹴りを放つ時に、両足に仕込んだナイフを攻撃とほぼ同時に飛び出させる。よろめいた相手を両手の刀とナイフで斬る。今までにない勢いで階段までの敵を薙ぎ払って行った。

「今だ! 行け!」

「ああ! 悪かったな、奥の手を使わせて!」

 そう言って、私は階段へと飛び込んだ。この先にあいつがいる。


―――――


 奥の手は、これじゃない。隠したナイフは他にもあるが、とっておきは別だ。できれば使いたくないんだが。

「そうも言っていられないよな」

 敵が私に迫る。銃で刃物で拳で、襲ってくる。

 そうだ。私に向かって来い。この先には行かせない。

「ぐっ!」

 銃弾が体に撃ち込まれる。刃が体に刺さる。近接戦闘で来た奴らを刀とナイフで斬りまくる。それでも、敵は多い。倒せたのはわずかだ。

 ドドドドドッ! と銃撃。敵は近接での戦闘は避けて銃撃してくる戦法に変えた。

「がはっ!」

 体に銃弾が突き刺さる。そうだ、これを待っていた。


 体の表面に熱を集める。そして、揺らし続け、振動へと変える。そして、速く、とても速く、もっと速く……

 空気が揺れている。そして、来た。

 その瞬間、私は何も聞こえず、何も感じなかった。どうにか視界はあったが、それでも状況を掴むのは簡単じゃ無かった。

 私は、体の表面のハイドローグを爆発させて、体に突き刺さったすべてを周りの敵に向かって吹き飛ばした。敵は倒れ、悶え苦しんでいる。

 そして、私にも来た。

「があぁぁあぁぁ!!」

 すごく痛い。この前の時は、背中の一部分だけでやったから、どうにか立っていられたが、あれとは比べ物にならないくらい痛い。

「ぬぅうおぉぉぁ!」

 涙を出しながら、床を転がる。痛みは止まないが、徐々にハイドローグが体の表面を再生させていく。レインメーカーと作ったハイドローグの変化と生成の技。エネルギー源は私が食べたものから作られる。

「これが、私の奥の手だ。使えるのは後数回か…… それまで、意識が持つか…… いや持つさ」

 私は、どうにか立ち上がった。床に落ちていた刀とナイフを拾い、まだ立っている敵に向かい合う。


 アーニャは原点へ潜り、大切なものを見つけていくだろう。私は、原点から歩き、大切なものを創っていく。未来を創ることと、過去を語り伝えることは同じだ。

 誰かが自分の後を辿ってくれるかもしれない。そんな希望を持って、上へ向かって歩いていく。

 私は、"The Rising Walker" だ。

「さあ、来い! この先へは行かせない!」


―――――


 階段を上っている。もう、足を動かすことしか考えない。後ろは振り向かない。ただ、前へ進む。

 この先にあいつがいる。私を待っている。

 私の罪と罰は、私が向かい合わなきゃいけないんだ。

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