Zero Diver
効果は計りようがない。でも、ヘリへの攻撃は止んだ。
「突入しよう。攻撃開始!」
私は、特製OSを起動させて、味方兵士達への支援を開始する。
敵はまだ、最新の装備とシステムを備えている。まともにぶつかり合ってはつぶされてしまう。味方の力を発揮させ、敵の力を削ぐ。
この時のために、私の決断はあったのかもしれない。
管理されたシステムを打ち壊すのは、人間が持つ意外性。設計者が予期せぬ面白さを見つけるプレイヤーが、可能性を示す。
正面から突撃、移動。遠距離からの攻撃、支援。罠を仕掛け誘導、発動。罠を仕掛けず誘導、攻撃。グレネードを投げ、敵が避ける位置を予測し攻撃。グレネードを投げ、敵が避ける。それは爆発しないフェイク。空いた場所へ突撃、攻撃。
「道が開けた! 今だよ!」
「オーケー!」
エメリアとジャクリーンがヘリから降りる。二人でフォーメーションを組んで進んでいく。私は味方部隊に二人を守り、進むルートを確保できるように指示を与えていく。そしてエッジは私の護衛。
ジャクリーンが敵を切り裂きながら進み、エメリアは銃で援護しながら進む。二人はヨルムンガンドの入口まで到達した。そして、エメリアが私の方を見た。
「アーニャ! 後ろは頼むぞ!」
「任せて!」
私は叫んで、頬を叩く。気合は十分。とことんやるのみ。
エメリアたちが突入した後、私たちはヨルムンガンドの入口に陣取り、味方部隊と共に盾となって塞いだ。ここを死守する。中央を突破された敵たちが私たちを包囲して攻撃してくる。狙い通りだ。私は真上に球体を投げ、エッジに人差し指を突き立てる。ここで、落とす!
周囲に爆発が起こる。爆音の後、耳が聞こえなくなった。視界がぐらつく中、エッジが私の傍で銃を構えている。合図で防御フィールドを展開してもらったのだ。
さっきのヘリでの突入の際、周辺の空に爆弾を仕掛けた。ジャクリーンから貰ったウォルンクァの力を出来る限り私のシステムに組み込んだ。そして、その力で空中にマイナス電荷を充満させた雲を作り、着地と同時に地面にプラスの電荷を与え続ける。球体に詰めた火薬を爆散させると共に、地面と雲の電位をそれぞれ急上昇させる。そして周囲の空間の湿度を増やし雷を落とした。
エッジがシールドを解除する。解除と言っても、もうボロボロで使えない。今の攻撃は一回限りのもの。後は、私たちの力次第。
周りの敵は倒れたけど、全体の十分の一も減っていない。まだまだ向かってくる。
エッジが隣で銃を撃ち、私は仲間へ指示を出しつつ援護射撃。味方部隊は進退を繰り返しつつ私たちの領域を維持してくれている。
「これだけの短期間でシステムを組み上げるなんて、大したもんだよ!」
「既存のシステムから逃げる為にいろいろやってきたからね。難しかったけど、続けているとやり方もわかってきたんだ!」
「それにしても、いきなりシステムから切り離されて、ほとんど生身だってのに、すごい適応力だな。さすがだ!」
「私は、ずっと前から生身だったんだ!」
「!? だって、お前は……」
「私の体にサークレットは無いんだ!」
「どういうことだ!?」
「レインメーカーと一緒に開発した技術で、それが可能だって分かった! そして、エメリアが呪いを引き受けてくれたんだ! 何も聞かずに!」
「じゃあ、お前…… 今までの戦闘や電子戦なんかを、全部生身で、それもアナログでやってたってのか!? じゃあ今、仲間たちへの指示は!?」
「私は、みんなが考えて行動しやすいようにしているだけだよ! 出している指示は、攻撃、防御、回避、移動の四つだけ。後はみんなの力で戦ってくれているんだ!」
「……なら、俺もとことんやらないとな!」
「私たちも、だよ!」
この世界はもう、電子防諜でも追いつかない。
人々は己を安全を確保するため、何らかの方法で分離 "Isolation" をしていく。
それでも人は、お互いのことを想う。
大きな何か『原点の "Zero"』 と、
人にとっての大切な何か『空 の "Cipher"』は同じなんだ。
私は自分のための原点と未来を探り、紡いでいく。
私は、Zero Diver だ。
私は、もう蛇じゃない。
行く先はきっと、無限の夢のかなた "Beyond The Infinite Dreams"
スターチャイルドは、まだ嫌かな……
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