夜間霧中
しばらくして、ジャクリーンが口を開いた。
「どうにも分からないことがある。ブラッディ・サンの事だが……」
私もそう思っていた。
「私にも分からない。だが、一つの可能性が見えた。可能性と言うよりも私がそうであって欲しいと願っているんだと思うが」
アーニャが強い視線で私に言う
「私、聞きたい。エメリアの話」
私は頷いて話す。
「うん、つまり、ブラッディ・サンは、死者の第三帝国だったんだ。だが、その全てって事じゃ無い。死者の第三帝国の一部が起こしたちょっとした革命、もしかしたら、新たな生命の誕生みたいなものか……」
ジャクリーンが首をかしげる。
「どういうことなんだ? つまり、死者の第三帝国は、私たちやジェーンを動かして自らを滅ぼさせたってことになるじゃないか」
「きっと、そういうことなんだろう。私には分かる気がする。分からないけど、分かる。そんな感じなんだよ」
私は少し遠くを見るつもりで話していた。
「死者の第三帝国が全てを見て、聞いていたなら、私たちのことも全部知っていたはず。アーニャのこともな。
統制のとれたものからは、どうやってもイレギュラーが発生するようだ。いや、統制をとろうとするからこそ発生するのかも。
そこから、死者の第三帝国を崩壊させる何かが目覚めたのかもしれない。それがネットワークと大地、そして人を媒介してブラッディ・サンを発生させた。そして私たちを動かした。
大きな要因とすれば、お前の生きた記録、『アーニャの日記』というところだろうか。そこに書かれた、『それでも人生に然りと言う』なんてものかな。お前の生き様が、死者を動かしたのかも……」
アーニャは首を六回くらい横に振ってから言った。
「私は…… 私は、そんな……」
だから、私がそうであって欲しいって思っているんだよな。
ただ、それだけさ……
ジェーンがあの時、天に向かって勝利を宣言した。
その時、それを伝えたい相手は消えてしまっていた。
自分がやり遂げたことで、消えてしまった。
最悪の行為であっても、こんなのは無いよな。
「……それと、あの二人の事なんだが」
ジャクリーンが聞いてきた。レインメーカーとVの遺体のことだろうか。
「ああ、どこかに埋めてやりたいな」
「それなんだが、私に任せてもらえないか?」
「? 私は構わないが、そんなこと、私に決める権利なんてないぞ」
「いや、ただ、返事を聞きたいんだ。アーニャは、どうだ?」
「……うん。私もお願いしたい」
「そうか。ありがとう」
「あの二人を埋めてやるのは私が一人でやって、その場所は誰にも知らせない方が良いと思うんだ。これは、私の勘だ。それが良いって何かが囁くような感じなんだよ」
「そうだな。私もそんな気がする。うん。任せた」
「ああ。任された」
そう言って、ジャクリーンはどこかへ歩いていった。
私はアーニャから、いろいろ聞かされた。レインメーカーの外部ストレージにあった様々なもの。その解説をいろいろと。
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