三振り目
「それで話を聞いた結果、自分自身を探してほしいって事なったと、そいつはまた面倒な話だね~」
俺はコーヒーを飲みながら思い出していた。
記憶を失くして自分の過去の痕跡や経歴、人間関係なんかを調べてほしい、なんて依頼は過去にも何度かあった。結局うちみたいな所に依頼しに来るって段階で調べりゃロクでもない奴だったってのがほとんどのオチ。
自分自身を探して欲しいなんて話は今まで一度もなかったから新鮮ではあるが・・・
よくよく話を聞いてもまるで影法師。自分の影を探す。
はっきり言って無理だ。
「何だかピーターパンみたいだな、クローゼットの中にでも要るんじゃないのか」
「それなら針と糸を用意しないと・・・」
そんなファンタジーで話が解決するなら苦労しないんだよな。
依頼してきた内容はあらかたミコトから聞いた。確かにうちのギルドではこのテの話は俺むきだ。
「で、オヤジが断りたい理由は鎬のおっさんからの依頼だからってことだな?」
「直接って訳じゃない。ただあの人が絡んでるってとこなの」
確かにね。鎬のおっさん絡みならオヤジが断りたいのもわかる。
あの人の持ってくる話はほとんど中身と内容が合ってない割の合わない話ばかり。
だいぶ昔、警察に捜査協力したときもかなりヤバかった。ヘタすりゃ大ケガじゃあすまない事が数回、藪を突いたらアナコンダなんてざらにあるらしい。
まぁオレの場合は鎬さん依頼なんて滅多にやらないし回ってこないからそこら辺は我関せずで良いんだけど、警察との合同調査や依託の依頼で動いてるうちのギルドの実働部隊は堪ったもんじゃない。
そりゃ和泉のねーさんも頭抱えることだ。
と、噂をすればなんとやら。
「おばよ~」
古井戸の底から這いずり出してきたみたいな何とも朝から見たくない聴きたくない、有名ホラー映画の幽霊みたいにやって来たのは、警察関係の依頼をメインでやってる、ウチのギルドメンバー『チーム
ちょっと動くだけでもプルんプルん。スタイル抜群ルックスもかなり良い、黒髪ロングを一束に纏めたポニーテール、パンツスーツが似合う美人。
の、筈なんだが今は。
「ミゴド~ちょ~濃い~コウフィ~~」
生きる屍。
「姐さん、おひさ、3日ぶり」
オレは自分の指定席から姐さんに声をかける。
「まーちゃんおはよ朝から居るなんて珍しいわね」
「姐さんが最近戻ってこないからでしょ、オレはいつも朝から居るって」
「え~そうだっけなぁ??」
確かに仕事があるときはもっぱら夕方から夜にかけてしかギルドには居ないことの方が多いけどそれでも基本朝には顔を出すようにしている。
「姐さんは、依頼の方は完了?」
「もち、完了しましたともさ」
「お疲れ様です」
「と思うなら少しは手伝ってよまーちゃん」
無理です。なんてあんなに腐りきってボロボロに為ってる姐さんを目の前にして言えるわけない。
「依頼が被ってなければ何時でも手伝いますよ。姐さん達の依頼って今回は人探しだったよね確か?」
姐さん達が今回こなした依頼は確か行方不明になったどこぞの某さんを見つけるって依頼だったはずだか?どうも裏があったみたいだな。
「そうだよ、人探しは人探しだったんだけどさ。ありがと、ミコト」
ミコトから濃い~コーヒーを受け取って一口あおる。
「いゃぁ~やっと落ち着いたって感じ」
姐さん達の依頼の内容はこうだ、今時珍しい大手企業の社長令嬢が家出まがいの事をして家に帰ってこなくなった。だから警察に捜索願を出したが公に出来ないとのことで、ウチに鎬のおっさんから依頼が来た。
「本当、その女の子探すだけならすぐ終わったんだけど、それが二転三転しておかしな方向にいっちゃってね」
今回も藪を突っ突いたらアナコンダ級だったみたい。
そこら辺の話はまた別の機会に詳しくするとしよう。
「でぇ~?朝からいるまーちゃんはどしたの」
「鎬のおっさん絡みの厄介事でちょっとね」
「あらま。御愁傷様」
合掌。拝まれてしまった。
「遂にまーちゃんも鎬さんの被害者か」
「被害者とはまた随分な言われようだな」
! ! ! ?
「どうせお前らの事だから悪口でも言ってんだろうと思ったら案の定か」
俺たち3人に全く気付かれず何時もやってくる。俺は兎も角オヤジや姐さんにも気付かれないってこの人ホントにただの刑事か?
「みんなひどいなミコト、おじさん泣いちゃうよ」
「……ヨシヨシ」
なんだあれ?毎度こんな感じなのか。
「今日はなんのご用で、おっさん」
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