二振り目

ミャーミャー


『ジプシー?』


どこ行くの?

置いてかないで!

まって!行かないで・・・・・・・・・・・


「・・・起きたみたい」


「わたし・・・」


私、何で寝てたんだっけ・・・頭がクラクラする。


「目が覚めましたか?」


目が覚めるとそこには美少女が立っていて額には冷たいタオル。

そうか私気絶してたのか。いつも鎬さんから察しが悪いと言われている私だけど流石にこれは気付く。


「いやーすいませんね、こちらがドアを開けたタイミングでぶつかってしまったみたいで」


このタイミングで謝罪しとけばミコちゃんがわざとぶつけにいった事をうやむやに・・・。


「すいません、入り口の前でうっとうしかったのでつい・・・・・・」


「え?」


なんでこの子はいらん事を言おうとするかな、お父さんが何とかなかったことにしようとしてるってのに、自分からげろするとかマジ意味わかんない!


「いやいや!何でも、で、今日はもちろんウチに御用で」


「あ!はい。知り合いに教えてもらって、それで」


知り合い?ウチそんな口コミの紹介の仕事あったかな?


「そうですか。ようこそ探偵ギルド鍛師〈かなち〉へ、私がここのギルドマスター大原安綱おおはらやすつな。でこっちが看板娘兼受付の大原命おおはらみこと、私の自慢の娘です。私の事は気軽に安綱と呼んでください」


ミコちゃんがこっちを睨んできている、娘アピールがそんなに嫌だったのか、ここまで来るとツンデレとかの次元じゃない、反抗期、反抗期ですか!

あーもう帰りたい。


「で、そちらのお名前を聞いても?」


全力でドアにぶち当てたあと気絶させてしまった相手に冷静に聞ける大人な俺。


「申し遅れました。和綱珪わこうけいです。今は大学生で知り合いにココのことを紹介してもらってその・・・」


とっさにウソをついてしまった。職業柄警察が民間のそれもえたいの知れない探偵事務所にきている事がばれるのは避けたいと考えてしまった。

しかしとっさのウソとは言え、珪としても大学生は言い過ぎたかもしれないここから帰るまでバレないように努力しなければ。


「大学生・・・今の大学生は御信用に拳銃持つもんなのミコちゃん?」


なんで!!上着ははだけてないし、まさか服の膨らみで、でもホルダーを着けても違和感ない服は着てる、どうして?!


「そうだよ、私は持ってないけど、これは持ってる」


バチバチ!!電気警棒!なんで持ってるの護身用だよね信じて良いんだよね。ヤバいこっち見て素振りしてるしかも目がマジだ。ここは無視しようさわらぬミコちゃんタタリなし。


「えっと一応言っとくと左脇の膨らみ、右利きで左側にホルダーがあるってことでしょ。

あと胸が大きいから必要以上にホルダーを締め付けられない。」


「セクハラ……」


娘からの辛辣な意見、面と向かって言われると傷つくな~


「ど、観察力が身についていれば簡単にわかる事だよ。和綱さんだっけあんた刑事かな?それとももっとヤバイ方の人かな?」


何だか安綱さんがひどくテンパってるみたいだけど、人を呪わば穴二つ?いや墓穴を掘るが正しいかまさかこんなに早くウソがばれるなんて私自身後ろめたい気持ちがなかったわけじゃないでもここまでだ。ホントのことを話そう。


「あの実は・・・」


『マスターデータヲ確認送信イタシ〼』


「ありがと、さすがに何時も速いなバトラー」


誰、この部屋には私を含めて安綱さん命さんの3人しかいないのに。

その答えは思わぬところから帰ってきた。


「ハジメマシテ、ミス和綱ワタシは、コノギルドデ情報管理ヲシテイル、バトラーとモウシ〼」


多々良たたら署勤務ノ捜査官ノ一人、和綱珪わこうけい刑事二ナッテ3年マダシンマイペイペイだと判断デキ〼」


情報管理プログラム、正体がわかってしまえば驚きもしない音声を出すプログラムなどもう珍しくもない、珪が驚く理由は別にある、個人情報をしかも警察の個人情報をどうやって得たのか、警察のプロテクトはかなり厳重のはずハッキングなどできるはずがない、

驚きのあまり珪はちょっとだけバカにされた事にも気付いていない。


「あのなん・・・」


「今回オキテイル連続放火事件、現場チカクノ監視カメラの映像に和綱サマに似た人物ガ確認サレタタメ捜査カラ除外、鎬サマノイラヌお節介でココに来たヨウデス」


何の話だ、自分の知らない事が多すぎて頭がついていかない、私が事件に関係している・・・

何の事を言ってるんだ、私が現場に?何を言ってるんだ。わからないわからない。


「俺の所にデータ送ってきた意味ないだろ、お前が全部喋っちゃバトラー」


「申し訳アリマセンマスター」


「てことでお帰り下さい」


「いやあの私話が見えなくて、それに私まだなにもお話ししてないのにここで帰るわけには」


何て事言われてもこっちが困る、よりにもよってこの和綱とか言う女刑事をココに送り込んで来た人間が問題中の問題だ。鎬のおっさんの紹介だってのが面倒くさい。


「どうぞ、粗茶です」


「あ、ありがとうございます」


「ミコちゃんお茶なんて出さなくていいから。帰ってもらってそして塩撒いて塩」


ミコちゃんは和綱さんにお茶を出すと自分の場所に戻ってしまった。なんで‼あのおっさんの頼み事何てろくな事ないんだからちょっと断るのを協力してくれてもバチは当たらないと思います。ね~神さま❤


「お願いです。話だけでも」


「だけでも?そのだけでもがいやなの。あのおっさんからの話なんて金にならないの」


「でもこの事務所なら、鎬さんが教えてくれたんだからこそ何とかなるんじゃないかと・・・」


この和綱さんの反応今のバトラーからの情報はまったく知らなかったみたいだ。

確かに今彼女を無下に帰してしまうのは忍びないでもそれは彼女が一般人だった場合だ。

警察と俺たち探偵との協力、必ずしもないわけではない。ただそんな事が頻繁にあっては警察の面子がたたない、だからナアナアで折り合いをつけてきた。


「確かにウチの売りは信用第一安全二の次でやってるけど、割に合わない事はしない主義なの」


「・・・でも今月ピンチ」


ウ―――――――ン。なんで今それを?わざわざ断れないフラグ立てなくてもいんでないかい?


「でっでも今金がないって状況であのおっさんの紹介でしかも同じ刑事、やっぱり断るべきでしょ?」


このまま何とかうやむやにしてお帰り願えればどうにか・・・・・・


「そんなの関係ない…ちゃんと許可もされてる依頼があれば捜査協力も可能……」


なに言ってくれちゃってるかな!


「確かに警察が民間のそれも探偵に協力のお願いをするのはおかしな話だと思います。

なら私個人の依頼としてならお話聞いてもらえますか」


「は?」


この子は人の話を聞いてなかったのか、そうゆう話ではないんだが。


「ちゃんとした報酬をお支払いします。それなら・・・依頼人としてならお話を聞いてもらえますか‼」


そう来たか和綱珪、そこまでバカではないようだ。まあある程度機転がきかなきゃ

あのおっさんがココを教えるわけがない、が少し爪が甘い。


「依頼人ねぇ~でも一応ランクが有るんだよねこの仕事、下の方とかは持ち込みとかはオッケーで料金も安いんだけど和綱さんの場合は結構上の方のランクだから料金の方は高めになっちゃうんだよね」


公務員のそれも駆け出しのペイペイなら金のことを話題に出せば必ず引く。

これでこの話は完全に無かった事に・・・・


「お客さまのご依頼がこちらへ完全にお任せして頂く場合。そうなりますとその都度必要経費を頂きます。もう一つはお客さまがこちらの所員と共に捜査を行う場合。

そちらの方は協力して捜査いたしますので必要経費は掛かりません」


「こちらとしては前者をオススメしますが、和綱さんの場合なら後者の方がよろしいかもしれませんね」


「ミ、ミコちゃん?なにを・・・」


「如何なさいますか?」


やっぱりだこの子俺を無視して話を進めようとしてる!やめてそれ以上は話を進めないでください。


「えっとそれはお話聞いてもらえるんですね!」


ここで折れちゃダメだ。折れちゃダメだ折れちゃダメだ。

負けるなオレ!


「いや、あのミコちゃん何で勝手に話進めちゃうのかな。お父さんがやんわり断ろうとしてるのに、ミコちゃんが話進めちゃったらダメでしょ」


俺がどれだけあのおっさんの事苦手か知ってるでしょ。


「最近まともなご飯食べてない・・・」


「はぁ⁉何言ってんの。そんな事ないでしょ楽じゃないかもしれないけど不自由はさせていないつもりだよお父さん」


和綱さんがなんか気まずそうにこっち見てるけど今はそんなの関係ない関係ないんだ。

これは親子の避けられない戦いそう聖戦なのだから。


「うっ立ち眩みが・・・」


「大丈夫ミコちゃん」


何、ホントに具合悪いのやだ大丈夫。

「吐く・・・父さんが!」


やっちまった。不用意に近づきすぎた、捻りをいれた左のボディでもまだ防げる。


「おそい」


「がにゃぶほ」


あまかっ・・・た・・・



ホントに甘かった俺のガードよりも早くしかも的確に鳩尾に当ててくるなんて。


「ではお話の続きを」


ここのトップである俺を黙らせてからの交渉見事。

いや見事じゃねえし。


「それでは本格的に話の続きを」


「いいんですか?」


「お構いなくこちらのことなので」


「は、はぁ」


俺を気絶させた後ミコちゃんがトントン拍子に話を進めて持ち込みの依頼として話をつけた。

全くもって見事な手腕だまさに腕がいい。ってこれただの力技でしょ。


どこでこんな方法覚えたんだか、まあ今回みたいな件を担当できる人間がすぐに用意が出来ないのと、やらしい話前金で三万じゃあ進められる話も限られるって事で、この件はいったん保留に意識が戻った俺が無理やりそこまでとオチをつけた。


■■■■■


「まったくもって困ったもんだよ。この件保留は保留だけど俺はいまだに反対なんだからネ♪❤」


「キモイ」


ワァオ。辛辣、でもここまで嫌がるのにはちゃんと訳がある。

あのおっさんはこれまで数多くの厄介事を持ち込んでは報酬を踏み倒す。依頼を完遂前にかっさわれる、もはや嫌がらせとしか思えない事の数々。だから嫌なんだよあのおっさんの頼み事聞くのは、徳がないマイナスだけ。

あ~やだやだホント愚痴しかでないよ。


「なんであのおっさんの頼み事聞いちゃうの?」


「鎬のおじさんご飯連れてってくれるし・・・」


もはや餌付けされてたのね、どうりで・・・まあ食べ物の力は強いよね。偉大だよねー


「はぁ~でこの件誰にまわすつもりなの?」


「そんなの決まってる・・・」


だろうね、このテの話はアイツに任せるのが一番手っ取り早い。


「で、アイツはいつ来るの?」


「もう来てるけど・・・」


「おはよ命」


「おはよう村正・・・いつもの?」


「ん。ありがと」


何時もの事ながらミコちゃんはこいつに甘い、なんか毎回負けた気になるんだよ。

父として他の男を優先されるのはやっぱ腹が立つ。とゆうか・・・・・・


「やだ!」


「何がだよ!」


「毎度他のメンバーにはやさしくしてお父さんは蔑ろその優しさを半分でもいいから、娘からの愛情が欲しい。そう半分!バ○リンですら半分は優しさなのに、にっ憎いそんなお前が憎い・・・」


憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い肉喰い肉喰い肉喰い・・・・・・・・・・・・

あ!なんかヨダレが出てきたぞ。


「オヤジ確実に今別の事考えてたろ毎度毎度朝っぱらからうるせぇなあがったりさがったり疲れないか。お、ありがと命」


「どういたしまして」


「もうやだ引籠る。で呪いの人形作る」


「極端だし怖えよ」


マジで何なんだよこの人は。娘のことになるとホント面倒くさい。これが無ければまだマシなんだけどな・・・。

朝からゆっくりコーヒーも飲めん。


「賑やかなのも良いけどいい加減、ほどほどにしてくれよ。それと、ほい、命この前の報告書。今回は自信ある」


オヤジがダークサイドから帰って来るまでに終わらせられる話は終わらせてしまおう。


「で、どうよ今回は一発OKしょ」


命は報告書に厳しい、と言うかまともに受け取ってくれない。毎度毎度ちゃんと書いてるのにいつもボツにされると何だか完成原稿を編集に出す作家の気分だ。


「やり直し・・・」


「なんでだよ!今回は自信あったのに、命に言われたとおり注意されたところは直ってるだろ」


「では今回の何がいけなかったのか一つ一つ直していきましょうか・・・」


スチャ


メガネ?


「まず字が汚いそれに内容が全く入ってきません何度言ったらわかるんです?・・・・

それと・・・

で・・・

ここを直して・・・

だから読み手に・・・・・・・・

そんなだから・・・・

わかりましたか?」


「はい・・・」


いや、はいじゃねぇし!まんま編集と作家じゃねーか。なんだこのコント。これ以上ノッたら終わりがない。


「わかった、それはまた今度直す。それで前に話してた鎬のおっさんの頼みってのは・・・」


「そう・・・わかった」


何でちょっと残念そうなんだよコイツはまだ続けるきだったんかい。

まさに不毛だ。

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