第8話 シューゾーのいない夏
スラリと伸びた足。
ぺろぺろしたいと一部の男性に大好評の太腿。
そしてその先……誰もが待ち望んだシャラ皇女の秘密の花園。
シャラ皇女の深遠が、ついにそのベールを脱いだ(というか、めくられた)!
多くの地球人男性が待ちに待った瞬間である。
が、
「おい、一体どういうことだ?」
「話が違うじゃないか!?」
「なんで!?」
「どうして!?」
会場に湧き上がるのは歓声ではなく、戸惑いの声。
そして次の瞬間、観客が一斉に叫んだ。
「どうしてぱんつを穿いているんだーっ!?」
腰の左右を紐で止める、いわゆる紐ぱん。
シャラ皇女の白い肌にも決して引けを取らない純白の紐パンが、その大切な部分を見事に隠しおおせていた。
「ど、どういうことなのですか!? 私、ぱんつなんて穿いてなかったのに」
この状況にシャラ皇女もまた驚きを隠せない。
ぱんつなんて力を解放したその日から穿いていなかった。勿論今日だって穿かない状態でリングに上った。当たり前だ。スカートをめくり、深遠を覗き込むことのできる王子様を探す為に戦っているのだから。
なのに今、ぱんつを穿いている……冷静に考えれば、この状態を作り出せるのは、皇女自身を除けば一人しかいない。
「……そういうことでしたか、ジュンイチロー」
そしてシャラ皇女は何もかも理解した。
倒したはずのジュンイチローが何故立ち上がることが出来たのか?
全てはそう、ぱんつが原因だったのだ。
考えにくいことだが、ジュンイチローは戦いの中で皇女にぱんつを穿かせ、力を弱めたのだろう。おそらく紐ぱんという形状から、最初は左の腰の紐を結び、それから右の紐を結んで装着させたに違いない。そんな機会があったのは、深く踏み込んできたジュンイチローに左のカウンターを食らわせた時と、右膝を食らわせた時のわずかに二回だけ。どちらの攻撃でもジュンイチローを倒せなかったのは、つまりは彼が攻撃を喰らう前に仕事を完了させていたことを意味していた。
「スゴい。私の完敗です、ジュンイチロー。でも、教えてください。何故そこまでの力を持っていながら、私にぱんつなんて穿かせたのです? こんなぱんつなんか穿かせなくても、貴方なら私のスカートをめくることなんて造作もなかったはずです」
なのにこんな辱めを与えるなんてと、シャラ皇女はスカートをかすかに持ち上げて、ジュンイチローに穿かされた紐ぱんを見せる。
もっともその光景をジュンイチローが見ることはなかった。
ただ、皇女に背を向け、静かに話しかける。
「そのぱんつは、とある老舗メーカーが密かに開発した最新作だ」
会場の証明がまぶしいのか、眼を細めるジュンイチロー。
「まだ発売されてないから正式な商品名ではないが、開発コードネームは『キミを守りたい』という」
「守る、ですか?」
「そうだ」
ジュンイチローが深く頷く。
「あんたたち他の星の人間には、ぱんつは単なるリミッターに過ぎないのかもしれない。が、地球では違う。ぱんつには様々な想いがこめられているんだ」
それは自分の秘密を隠すものであり。
それは相手を喜ばすものであり。
それは様々な妄想を膨らませるものであり。
つまりは大いなる謎と夢と希望に満ち溢れたものである、と。
「そして男のエゴかもしれないが、守ってやりたいって気持ちも、あの布切れには託されているのさ」
「守りたい……それは」
力を抑制され、か弱い存在として生きる女性を守りたいって意味でしょうか? とシャラ皇女は言いたかったのだろう。
が、ジュンイチローは敢えて遮り、こう言い放った。
「夏と言えどもシューゾーのいない地球でノーパンはあまりに寒すぎる。大切な体を冷やしちゃダメだぜ、シャラ皇女様」
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