第2話

 少し強引だと思ったのだけれど、コウは嫌な顔一つせず私について来てくれた。なんだかんだ言って、彼は面倒見がとてもいいのだ。その面倒見の良さは、私だけに対してではなく彼の友人全員に言える事だけど。

 私が思いついた事、それはコウともう一度旅をするというもの。私たちの関係は旅と同時に始まり、旅の終わりといっしょに次のステップへと移っていた。ならば次のステップに進むのに必要なのは旅ではないのだろうか。そう考えた私は、無理やりにでも彼を城から連れ出したかったのだ。案の定、彼はぶつくさ小言を言いながらも幌馬車と馬を用意してくれた。


「それで、行き先は?」


 幌馬車の荷台から、コウが不服そうに言った。


「うーん。やっぱり近くからかしら」


 私は馬の手綱を振るう。

 二人旅の、表向きの目的は暫く集まっていなかった昔の仲間……共に魔王討伐を成し遂げた仲間たちの元を訪れる。そして音信不通の仲間の連絡先を聞きつつ、招待状を渡して周る。期限は三月みつき、これはコウに向けての執行猶予であり、賭けだ。旅の最中に彼の返事、または私と結婚する意志を読み取れたら領地に戻り次第結婚式を挙げる。もし、万が一、彼にその意志が無い場合は――今は考えないことにしよう。

 シンプルながらもコウに考える時間を十分に与える事ができるいい案であると我ながら無い胸を張れる思いだ。


「アールの所?」


 コウは少し考えた後、あからさまに厭な顔をしながら1人の名前を言う。


「何か問題でも?」

「いや……俺、アイツの事苦手だからさ」

「へえ、初耳」

「アイツの考えていることが全く読めないから、苦手なんだ」


 コウはバツが悪そうに頬を掻く。彼のこんな表情を見るのは久しぶりだ。


「アールと同じこと言うのね」

「同じ?」

「彼も、『コウは何を考えているのか分からないから苦手』って言ってたもの」


 私は途端に嬉しくなって口元を綻ばせた。

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