第12話 朝の別れ

「これから盤園の世界は荒れる。皇国だけじゃなく、周りの国を巻き込んでの争乱が起きる。これは俺でも防げない」

「そんな……」

「だが、少しでも早く終わらす。そう動く。それは、俺だけじゃないぞ」


俺の声にうつむいていた皆の顔が上がる。


「先ずは、守安。とっとと姫さんを南翼に届けて戻って来い!」

「と、殿!」

「家を追われたのは、俺のせいらしいからな。とりあえず、身が立つまで面倒を見てやる」

「うぉおお!小十郎!早速出立の準備を致すぞ!」


守安は小十郎を引っ付かんで、走り去ってしまった。


「やれやれ、あいつはどこに向かうつもりなんだ?」


苦笑いしながら今度は友成に話しかける。


「友成なら、わかっていると思うが、姫さんを南翼に届けた後は、南翼の王家がこの先、重要になる」

「は、至尊の血筋ですな」


南翼の王家は男系継承なのだが、皇国から降嫁が多い。先先代も先代も皇国から皇族の姫が嫁いでいる。血筋から言えば、南翼の王家はシン皇国の分家と言ってもよい。北にも同じように血が近い王家があったのだが、何世代も前に滅びてしまっていた。


「言うまでもないが、皇子達が全て共倒れになれば、南翼の血が必要となる。南翼の王ならば大丈夫だと思うが、配下が軽挙に及ぶかもしれない」

「承知致しました。南の地は泰然と中央に備えるように充分に手を尽くします」

「うむ。友成なら大丈夫。たっぷりと経験を積んで来ればいい。お前の出番は大乱の後だぞ」

「はい!心得てございます」


頭をさげる友成に頷いてから、姫さんに顔を向ける。


「姫さんも、友成を助けてやってくれよな」

「ええ、これでも皇家の娘です。それなりに教えを受けているのですよ」


にっこりと笑うが、ほっそりとしているのに心強い。


「ああ、頼む。なんとか、うまく日を消せればいいんだがな」

「そう簡単に収まるものならば、御遣い様が遣わされる事もないでしょう」

「まあ、そうなんだが」

「とうに覚悟は出来ております。今の皇家が倒れても、南翼がある限り何度でも新しい皇家を立てるまで。ご安心くださいませ」


心強いを通り越して、ちょっと怖くないか?いざとなったら女の方が強いっていうしなぁ。


ま、これだけ言えるなら、大丈夫だろう。安心して暴れるぞ!


「後始末もございますから、ほどほどにお願い致しますね?」


はーい!

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