第11話 盤園世界

さて、久方ぶりにゆっくりと休む事が出来た。それなりに警戒もしていたが、特に夜襲やしゅうも侵入者も無く、無事に朝を迎える事が出来た。


皆の顔色も、以前とは比べ物にならないぐらい明るい。


天幕をたたんだり、朝餉あさげの準備をしたり、朝早くから出発の準備で騒がしい。


俺も軽く周りを巡回したあと、姫さん、友成、守安など主だったものと一緒に朝餉をとった。栄養を取らなくても大丈夫な身体になったとはいえ、皆と一緒に食事するのも楽しいしな。


食後の一服が済んだところで、皆の注意を引いた。


「昨日の朝までは、食後に一服できるなんて思ってもいなかったな」

「なんと申しましても、御遣い様の……」


すかさず俺をたたえ出す友成を手で制して、話し出す。


「ここまで来れば、姫さんの身も安全だろう」


何を言い出すのかと、皆がこちらを注視する。


「ここからは、友成と守安が一行を差配して行け。500騎の軍勢に突っかかってくる奴もそういないだろう」

「そ、それはどう言う事でござるか!殿!某では殿のお供に不足でござろうか?」


守安が泣きそうな顔で詰め寄ってくる。いや、怖いってば。


「友成はわかっているようだな。俺は、何も姫さんを助けに遣わされた訳じゃない」

「やはり……」

「ああ、お前ら、皇国の貴族なら言い聞かされているだろう?至尊の血筋は絶やしてはならない。俺はそのために遣わされたんだ」


このクレーター内の世界、「盤園平原ばんえんへいげん」はこの宇宙の魔力を調整するための巨大な魔法陣となっている。その魔法陣の制御をつかさどっているのが代々のすめらぎなのだ。


他の王家はいざ知らず、シン皇国の皇家だけは、正統なる血筋を必要とされる。魔法陣の制御が許されるのは、この血統と、制御法の知識が必要で、どちらが欠けても制御が出来ない。生体認証付きのコントローラーみたいなものなのだ。この魔法陣が制御を失えば、魔力が暴走し、この銀河に大被害をもたらす事になる。


リスク管理が出来ていないんじゃないかと思うが、そう言うシステムなんだからしょうがない。魔法の理不尽さの一つとして諦めて欲しい。


今、問題なのは、病身の皇が西戎の王が支配する宮廷に残され、皇子達は各地方に分散しているという事だ。


姫さんの婚姻を姫さん自身に聞いたが、本人には覚えが無いらしい。何日も朦朧もうろうとした日々を続けていたと思ったら、祭壇の前にいたと言う。


盾となっていた姫さんがいなくなった今、どんなちょくが出るか分からない。さらに不味いのは、皇太子がいない事だ。


「立太子を餌に、皇子達が踊らされるだろうな」


朝廷の中にいたからこそ、分かるのだろう。反駁の声は上がらなかった。









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