第9話 休息と書いて「チャージ」と読む!

大聖堂から逃げだして約半月、夜も休まず動き続けてきたが、やっと隊列を休ませる事になった。


ここは南蛮でもソコソコ大きな国で、姫さんや友成ともなりとも顔見知りの領地らしい。反西戎の王の家臣で皇国への使者もよく務める外交官とのこと。


政治的な問題で領主は顔を見せないが、安全は確保できているのだそうだ。


俺たちも、南大門から都を出た時は十数騎だったが、今では500近い軍勢になっている。ここで一息入れられるのは正直ありがたい。俺は非破壊オブジェクトの恩恵か、体力的には疲れないし、飯を食わなくても飢えないのだが、精神的には疲れるし、飯も食いたくなる。

そんな俺でさえ、休みたくなるのだから、他のヤツはもっときつかっただろう。


姫さんやその身の回りを世話する女官なども合流しているし、友成と一緒にあれこれ書簡を作っている文官もいる。

一度、書簡を見せて貰ったが、馬車の中で書いたとは思えないほど綺麗な文字だった。内容は全く分からなかったがな!


ここに来るまでに各地の有力者からの支援があり、馬車も何台もあって足弱な者や、疲労が限界になった者などは馬車に乗せていたが、それでも身体を休めるには不十分だったろう。


用意されていた天幕は、あっという間に埋まってしまい、中から寝息が聞こえてきている。


「やっと、落ち着いて、お礼が言えますね」


姫さんのための天幕に呼ばれ、入って行くと、そう声をかけられた。天幕の中は豪奢とは行かないまでも数々の献上品で飾られていた。脇には友成が控えている。


今までは、道を打開するのが俺で、姫さんの警護は友成や守安に任せていたせいで、なかなか顔を合わせる事が出来ず、落ち着いて話ができなかったんだ。


姫さんも、逃亡の連続で疲れの色を隠せないが、大聖堂で救い出した時と比べたら、ずいぶんとマシな顔色になっているな。


「お礼するなら、友成にしてやってくれ。俺は、道を塞ぐヤツをぶん殴っていただけだからな」

「いえ、それがしの働きなど。それにそれがしが動けるのも、御遣い様が姫さまを保護してくれたお陰でございます」

「まあ、ここでお互いを褒めあっても仕方がない。せっかく時間が取れたのだから、これからの事を話そう」


ここ迄の逃亡の最中も書簡をやりとりしていたのだ。今後の展望が全くない訳じゃ無いだろう。


「まず先に言っておこう。お前らも分かっている通り、俺は天上の存在から遣わされた。取り敢えず、姫さんを南翼の王都に連れて行くのが指名だ。だが、俺の身を強化する以外の魔法は使えないし、策を練ったり、兵を率いたりする事もできん。せいぜいが目の前のヤツをぶん殴るぐらいだ。たた、頑丈さだけならこの世界一だ。それは、俺を送り出した存在に確かめているからな」


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