第8話 南蛮巡り

さて、南蛮の地で関所破りを続けている姫さん一行だが、考え無しに行動している訳じゃあない。


「えーと、関所破りを続けてるのは、旦那ですからね?それに、御姫おひいさまや友成ともなりさまは、アチコチと連絡して今後をお考えになってますよ?」


横で、小うるさい事を言っているのは、守安もりやすの副隊長だった男で、名を小十郎こじゅうろうと言う。


「なんだ、うるさいな小十郎。小姑こじゅうとみたいだぞ?」

「な!?」


小十郎は、固まっていたが隣で大爆笑したのが、守安だ。


「うわははは!そう!小十郎は小姑のように煩いのでござるよ!殿!」

「若!?成る程、若もそうお思いでいなさったんですかい……」

「あっ!いやいや、小十郎、これは話しのアヤであってな……」


今度は守安がへどもどしている。


「まあ、お前らの関係はだいたい察しがついたが、なんでおれが殿なんだ?守安?」


守安と小十郎が代わり番こに説明してくれたが、南大門の守備に失敗した守安はその責任を問われた。が、彼の一族も有力な貴族。南大門の再建を引き受けることで、本来なら死罪に価する守安の罰を放逐ほうちくへと減刑したそうだ。


門とは言っているが、一種の城塞だ。その建造をさせる事で「護門ごもん」と呼ばれる彼の一族の力を削ぐつもりらしい。


「ま、そう言って、罰を受けたフリをするんでさ。そんな大工事の差配なんて、利権だらけですから。確かに金は減りますが、コネは貯まる一方でさ」


成る程、都のお大尽さんは抜け目がないらしい。


「西の王様はウチの力を削いだつもりかもしれませんが。代々、都の守護を勤めてりゃ、それなりの蓄えも溜まりますからね」


守安の家は、一種の税関みたいな役目を代々受け継いで来たらしい。流通の利権を押さえている訳で、毎年の付け届けも大量になるんだと。

南大門の一つぐらいなら、大したダメージにはならないそうだ。


「もちろん、表向きには大打撃を受けたフリをしますよ?そうすれば今まで以上の付け届けをいただけますからな」


これが、焼け太りってヤツか。さすが古都の貴族、汚ない!


「話を戻すと、放逐された若は行く宛もないですし、生涯で初めて若を打ち破った御遣いの旦那にお仕えしたいって訳でさ」

「訳でさっていわれてもなぁ」

「お願いでごさる!お願いでごさる!」


そう言われても、俺は家来をやしなえないと言うと、扶持は実家から送って来るそうで、むしろ、俺の面倒も見るかそうだ。


小十郎からも、若の迷惑料として受けって欲しいなどと言われる始末。とりあえず、南翼の王都まではそう言うフリとして正式な主従になるかはその後で考える事にした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る