第二章

第7話 通行証はこの拳

南蛮なんばんの地に入ったと言っても、南蛮と言う国があるわけじゃない。

細かい国が乱立している地なのだ。目指す国はまだまだ先。

南蛮の盟主、南翼なんよくって国が目指す地だ。


進む先に国が多いとどうなるか?


「ああ!また、ぶっ飛ばしたよ!」

「関所破りだー!」

「ええい!皆の者!駆け抜けろ!」


面倒くさい事が増えるよね!


国境には、関所が設けられ、関所を通るための書類がいる。国を出奔してきた俺たちに、そんなものがある訳ない。

じつは、いくつかの領主が手を差し伸べてくれた。だが、皇国にその事がバレたら、それだけで侵略の口実に成りかねない。それは本意では無いので、表立った援助は全て断ったのだ。


結果、関所破りの記録更新を続けております。今ので八ヶ所目ね。


ここまで派手にやると、ウワサがあちこちに広まるらしい。南蛮に入ってからは、比較的のんびりと進んでいるのもあって、関所破りの見物人も増えて来ている。


関所の役人も情報を集めているようで、だんだん、ものものしい態勢で待ち受けている様になって来た。


関所を破るたびに、友成ともなりが使者を出してフォローしているので、そちらから裏の情報も流れているようすだ。


関所では派手に立ち塞がるが、破られた後は特に追っ手を出す訳でもなく、静観している。皇国へのポーズなんだろうな。


「皇国へのポーズとはいえ、現場の担当者には申し訳ないかな?」


俺が、ふと漏らしたのを聞いたらしい。

友成が御遣みつかい様の慈悲はまことに広大だとかなんとか、感激していた。


若干、引いていると隣にならんだ守安もりやすが、声を掛けてくる。


「いやいや、殿とのの御相手が出来るだけでも武門の誉れでござる。あの者たちも、終生語り継ぐでしょうな」


この鎧男、いつの間にか追い付いて、ちゃっかり隊列に紛れ込んでいた。

まあ、あの副隊長がいろいろ手配したんだろうな。副隊長の彼も守安の後、しばらくしてから、この姫さん一行に合流している。







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